感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

今年度中に感想書きりたい!第1弾:『彼女を笑う人がいても』

2021/12/05

世田谷パブリックシアター   13:00

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去年観た演劇の感想を年度末までにまとめよう企画、あらため、

 

今年度観たやつは今年度中に感想書ききろう!

 

企画第1弾です。予定では第8弾までのはずです。

第3弾まで☟

monsa-sm.hatenablog.com

 

あと、観てから軽く1~2ヶ月経ってるやつがほとんどです。

だから、なんとなくでしか覚えていないんですけど、一応書いてしまわないと個人的にモヤモヤしっぱなしなので、ちまちま書いていきます。

 

 

公式

youtu.be

 

setagaya-pt.jp

 

そういえば今度テレビ放送されるそうです。

 

あと戯曲は2022年1月号の悲劇喜劇に載ってますが、この間の岸田國士戯曲賞の際に、期間限定で無料公開されていたので、きっとこんなブログを読むような方なら全部読まれたことでしょう!!(よりによって山本卓卓『バナナの花は食べられる』を読み逃す大失態を犯した私とは違って……)

 

ポジティブ寄りの感想

照明、舞台美術

トレーラーの映像からも分かると思うんですけど、相変わらず照明が綺麗でした。栗山さん演出だと毎回「照明綺麗だなあ」と思っているので、たぶん照明の使い方が私のツボなんだと思います。

 

かなりどシリアスな話で、セリフがメインな劇だったんですけど、照明が控えめかつ効果的に支えている感じがして素敵でした。

 

舞台美術自体も、部分的な映像の使用とラストに大移動(海岸に出るため、それまで使っていたセットがほとんど舞台上からなくなる。舞台奥に向かって綺麗に上昇する形が崩れて不規則に凸凹するので、海岸感がすごかった!)する以外はかなりシンプルで、言葉だけで立ち上げていくぜ!感がすごかったです。

開演前から妙な緊張感があった……。

 

あと、映像と字幕の使用が、全体的に質感がザラザラして当時の報道!って感じで雰囲気が好きだったんですけど、それよりも「彼女」の死因として扼死の可能性を挙げる時に、舞台後方のスクリーンに赤い線が1本スッっと横に入るのはめちゃくちゃドキッとしました。

舞台全体が茶系とか濃い緑、黒、薄い青系とかの寒色メインで統一されてたから、ギャップで余計に……。

 

1人2役

キャストがだいたい1人2役でした。

 

特に1960年/2021年の切り替えの軸になるのが吾郎/伊知哉なので、主演の瀬戸康史さんが冗談抜きに出ずっぱりでびっくりしました。ヤバくない……?

 

ちょっと似ているようで似ていない祖父と孫の演じ分け・切り替えがすごかったです。衣裳を変えている訳でもない(そんな暇はない)のに普通に別人に見えました。

照明が時代ごとに結構パチッと切り替わるのも大きかったとは思うんですけど、にしてもすごい。

 

同じ俳優さんが同じ衣裳で演じるので、祖父と孫の細かな印象の違いが、それぞれの背後にある時代の空気感としても伝わってきて、「これはとてもよい1人2役……!」と興奮してました。

年齢自体もどっちも30代前半ぐらいで、吾郎も伊知哉も変わらないんですが、吾郎の方がタフそうで気概があるというか、熱い感じの人だったのが、月並みなんですけど「時代かなあ…」という印象。

 

でも主演の1人2役が、色々な方面からあまりにも意味がハッキリしすぎていたので、そのほかの1人2役に対しても何かしらの意味を勘繰ってしまう部分がありました。

少なくとも私は意味を見つけることができなかったので、単に人数の問題かな、と思考放棄しました。

全員レベル高かったけど!木下晴香さん、台詞劇は初めてってほんとですかマジでやべえ……!!

 

でも渡邊圭祐さんが演じていた、松木(1960)と矢船(2021)は、姿勢という点では共通点があったような気も…。

「どうせがんばったって無駄なのになんでそんな頑張るんすか?」みたいな空気感というか。そんな感じ。わかりみしかないね…!まじそれな…!?

 

あと、年老いた松木が「そういえばあの事件の後しばらくして、吾郎さんに会った時に、吾郎さん、喧嘩してる人たちを見て『喧嘩できるだけいいなあ』って言ってたなあ」というようなことを喋っていたのが結構しんどかったです。

というか、大学に行くことも、友達と集まることもできない現役大学生からすると、1960年代の学生運動の熱はちょっといいな、とぶっちゃけ思います。

 

真剣になってもしょうがないのは分かっているんだけど、でも真剣になれることとか見つけて取り組んでいる人や時代は羨ましい、みたいなその感じめちゃくちゃ分かる…。

年老いた松木を演じていたのは吉見一豊さんで、そこに伊知哉(吾郎と1人2役)と矢船(渡邊さん。1960年の松木を演じてた)が会いに行くという状況になっていた!と記憶しているので、謎の空気がありました。正直この場面、観てて1番混乱した気がする。

でも若い時の松木を演じた人と、今年老いた松木が観客の目の前に出てくるのはかなり効果はあったような気もします。単純に、若い時の松木を演じた人が老いた松木が語るのをじっと聞いている構図になるので、時代の流れや老いることによって松木の内面がどういう風に影響を受けたのか、とかについて、観ていた時に結構ぐるぐる思いを巡らせた気がします。

あと劇中で「俺たちは知っちゃてるじゃないですか、負けちゃうって」って矢船のセリフがあったけど、ほんとそれなという感じ。

渡邊さん、初めて舞台で観たんですけど、醒めてて容量よさそうな感じが最高にハマってました。

 

ネガティブ寄りの感想

2021年ならマスクをつけよう(せめて外では!!)

コロナ、とか、オリンピック、とかいう単語が頻出する割には、登場人物がマスクをしている描写がなかったので、「まさかパラレルワールドの2021年日本なんだろうか……?」と最初の方で、謎に思ってしまいました。そんなことはなかった。

 

なんかちょっとナイーブすぎない……?

なんとなくの印象ではあるんですけど……。

吾郎と新聞記者主筆(上司だと思う)の辰巳大介(大鷹明良さん。迫力がやばい)が、共同宣言について口論するシーンが、割とこの戯曲のハイライトになっていて、えげつない迫力で展開していくんですが、まあどっかで聞いたようなことをお互いに言い合っているな……と思ってしまったというか……。

 

「マスコミは権力を監視する立場にあるべき」で、もしそうでないなら「この国の言論は死にます」、そしてやがては言葉が「暴力の道具になる」って吾郎は言うし、対する辰巳は「銀座の街から昨日、人は消えてたか」って、国会周辺に集まった学生たちだけが声を持っている訳じゃないことを指摘したり、そもそも「言葉」にはそこまでの力はないから「暴力」や武力行使で世界中の革命は成功してきた、けれど今の学生には革命を起こす「気概」もない、というようなことを言ったり、とにかく相いれない双方の主張を(特に吾郎の方が)どストレートに戦わせていて……。

 

正直どっちも一理あるとは思うんですけど、それよりも、どっちも本質的に言葉=暴力とは思っていないようだったのが、個人的な感覚としてズレてしまっていて、「一体この人たちは何について言い争っているんだろう…?というかお互いが現在進行形で相手に対して言葉で暴力ふるっていることに気が付いていないのか……???」ときょとんとしてしまったというのが正確な感じかもしれないです。

何かを書くとか何かを言うとか、とにかく言葉で何かを表現することは、同時にそれ以外のものを全部切り捨てる行為、取捨選択する行為なのでそもそもめちゃくちゃ暴力というか……。震災復興関係でそういう指摘(復興が進んでいるところもある、という「事実の一部」しか報道は伝えていない、的な)、劇中にもあったとは思う……。

あとこの場面にある「銀座の街から昨日、人は消えていたか」っていう辰巳のセリフはそういう(吾郎がその時取材対象とせず、切り捨てた人々にだって考えや生活や主張がある)ことだとは思うんだけど……。でも劇全体としては「当事者の声を伝える」ことがテーマにあがっている訳で、当事者以外を持ち出す点で辰巳の主張はどう考えたら……??というかどこからどこまでが当事者なんだ……??混乱……。

 

てか「言葉には力がないから~」的なことを喋っていた辰巳がGOサインを出したらしい「暴力を排し、議会主義を守れ」という「共同宣言」という言葉によって、学生側に事件の全責任を押し付けることに成功しちゃっているので、「いやめっちゃ力じゃん??」と突っ込んでしまったり…。

 

そういうことに気付かせるためのシーンだったんだろうか………。だとしたら大成功だけど、さすがに報道に関わる大人だったらその程度のことは自覚はしているのが普通なんじゃないか……?

 

とりあえずタイトルにある「彼女を笑う人」の代表格としての上司でした。あの迫力に立ち向かった吾郎、やばい。

 

「彼女」の扱い方が個人的にこわいと思った(上手い表現が見つからない)

「彼女」は舞台上には登場しません。あと一貫して「彼女」で、樺美智子という名前も(たしか)出てきません。

 

なんか、舞台でそういう風に抽象的に扱われると、大体の場合、存在感が反比例的に増大していくので、「彼女」が1つ大きな要素になっている劇としては、この表現、最高じゃん!と思いました。

 

でも現実にあるモノとしての実体を伴わない言葉(「スイバク、ハンタイ」のシュプレヒコールが「ただの音」になっていく、と誠子が劇中で喋ってたけど、まさにそんな感じの話)の力の話をしている面から見ると、劇中で使用される「彼女」という抽象的な言葉が強烈な存在感を増していくにつれて、舞台外のどこかにはいたはずの生身の「彼女(樺美智子)」からはどんどん乖離してしまっていってるのではないか、とめちゃくちゃに怖かったです。

別役実もどっか(たぶんベケットといじめ』)で、「これはリンゴではないかもしれない」ってリンゴをもった役者が舞台上で言うと、めちゃくちゃリンゴの存在感(言葉だけでは表現しきれない謎の存在感)が増す、的な事を言ってたような……。

たぶんそういう関連の舞台上の表現のあれこれだと思うんだけど……。

 

最後、モヤる

舞台美術と相まって、綺麗だったんですけど、舞台奥上方中央で「濡れてみたいんです」って言うセリフが、余りにも楽観的に軽くて、モヤモヤしてしまいました。そもそもあれを綺麗と思うのこそ、それこそ違う気がする……。

未来への自分へ。ちょっと現時点では上手く言えないので、図書館行って戯曲読んでください。2022年1月号の悲劇喜劇です。たぶんバックナンバーになって雑誌コーナーの奥にあると思うよ。1時間もあれば読み終わるからよろしくね。

 

衛星劇場観られる方は観てぜひ(一緒に)モヤってください

そしてなんか素敵な感想書いてください。

そしてできれば私のモヤモヤを取り払ってください……!!(他力本願)

 

というわけで1つ消化。12月初めに観た劇の感想を今書くって不思議な気持ちです……。自業自得だけど……。

歌が上手すぎて「ラップやってる場合かよシラノ……!」と思ってしまった『シラノ・ド・ベルジュラック』

2022/02/15

東京芸術劇場 プレイハウス 13:00 ※珍しく1階席で!

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【追記:2022/02/17】

すみません誤字脱字はいつもの事なんですけど古川雄大さんの漢字を最初「古川雄太」って書いてましたほんとすみません......(´-` )

 

クリスチャンの代わりにロクサーヌへ即興で詩を読む最後の辺りで、シラノが何フレーズか歌っているんですけど、ラップと桁違いの上手さで「なあシラノ、たぶんその美声をロクサーヌの前で披露すれば、割と良い雰囲気になるんじゃないかと思うんだ……」と、脱力してしまった、という話です。

よく大きな劇場でやっている、日本語へ翻訳された海外のミュージカルとかをあまり観に行かないので、ミュージカル俳優さんの歌唱力舐めてました。こんなに一気に色々(「表現として歌っているだけで、シラノが劇中世界で本当に歌っているわけではない」という可能性とか)持って行ってしまうとは思わなかったです……。

あと古川雄大さん、ずっと名前を「こがわゆうだい」だと勘違いしてました……。検索してみて初めて知った……。「ふるかわゆうた」って読むんですね……。『恋です!』も毎週楽しく観てたのに……。

 

一番気になっていた演出も、「谷賢一さんだからなんかしら面白いだろう……」と思って観に行ったのが的中で、小型カメラとか字幕投影とか、観てて「うおおお!」ってテンション上がる部分が多くて良かったです。

 

全体的に、普通に面白くて、3時間弱だから1万超えているチケット代に対しての絶望的なまでの不満感とかも少なかったんですけど、やっぱりNTLiveで観たジェイミー・ロイド演出、ジェームズ・マカヴォイ主演(調べてみたら再演してるみたいです)の方が私は好き!!という感想に落ち着きました。

youtu.be

このブログでも感想書いてるんですけど、今よりももっとひどい書き方しているので自分で読んで死にました。きつい……。

 

 

公式とダイジェストと舞台写真

youtu.be

www.cyrano.jp

www.geigeki.jp

enterstage.jp

 

「言葉の演劇」で起きた皮肉すぎる「パンフレットに翻訳者の確認も取らずに、かつ勝手にいじったセリフを載せる(しかも超長文)」事件については、公式サイトに詳しく書いてあると思います。

たぶん公演終了後しばらくしたら公式サイトも消えると思うので、修正を急がないと……。

実際にパンフレット買って、チラッとだけ(パンフは感想書き終わってからじっくり読む派)見たら、びっくりするぐらいの文量でセリフが載っていたので驚きました。

よりによってなんでこの劇で起こしちゃったんだよこんな事件……。

 

日本語だと厳しいのかもしれない

というか、日本語上演を観て、「私はジェイミー・ロイド版のやつを観たときに英語の音の面白さに惹かれたんだなあ」ということがよく分かった、という感じでした。

マカヴォイ兄さんの発音と発声が単にツボという個人的な理由もあるので余計に……。

 

ラップ監修も益田トッシュさんという方が入っているみたいだし、私ラップ全然詳しくないんで「全員普通にラップ出来てるなあ~すごいな~。あとよく英語の韻を日本語に翻訳したな~やべえ~」という感じなんですけど、原文の歯切れの良さ(英語の方が子音が多いので当たり前だけど)とかノリの良さ(英語だと日本語みたいに全部に母音つかないし)に惚れてしまってた身としては「なんか全体的にもっちゃりしてる……」と感じてしまいました。

 

日本語には日本語の良さがあるっていうのを、能楽とか歌舞伎とか、あと上手い翻訳によるセリフとか、(音楽はあんまり詳しくないけど)桑田佳祐さんの歌とか聞くと思うんですけど……、今回はなんかそこまでじゃなかったというか……。

あ、でもなんとなくシラノの友達のル・ブレ(章平)はラップ上手、というか言葉のリズムが上手かった気がします……。

 

あと、そもそも私がラップに慣れてないというのが大きいかもしれないです。たぶんだけど、観客席のテンション見る限り、そういう方多かったんじゃないかなあ……。

ロイド版だと、お客さん結構吹き出す時があったんですけど、たぶん向うの観客は演劇にラップが入ってるのに慣れてるのかもしれない……知らんけど……。

 

そもそもラップに慣れてない

そういう「慣れていない」層向けに補うためなのか、ラップの部分で何回か字幕(舞台の横幅いっぱいに、大教室の黒板みたいに上下に移動する、かなりでかい細長い板が2枚あって、そこに投影されてた。英語上演とかでよくある舞台脇とかに表示されるよりずっと読みやすかった)がコンサート風に映し出されたり、音楽入ったりするんですけど、音楽だけ入ってくる時は音楽にかき消されて聞き取りづらい、という。

ロクサーヌのラップの時は横書きの手書きフォントで、文学専攻の学生だということを思い出すような字幕で面白かったです。

 

極めつけは、部分的にシラノが歌う……、という……。

せっかく上手なミュージカル俳優起用しているから歌わせたくなる気持ちと、あと観客として歌聞いてみたい気持ちはあるにはあるんですけど、最初にも書いたように、歌とラップのレベルの差があまりにもありすぎて、「たのむシラノ1回ちょっと私の言うこと信じてロクサーヌの前で歌ってみてくんない……??絶対好感度あがるし、なんなら意識してもらえるかもしんないよ……??」と謎に混乱しました。

 

あと、どうしても、ギリギリまでそぎ落としてそぎ落として(たしかアンプかなにかの作動音とかが聞こえるぐらい静かだったと思う)、言葉の意味と音だけが前面に立ち上がってくるロイド版の方にものすごく感動した、というのがあってどうしても色々つけ足している(特に聴覚的な方面で)のが、個人的に「うーん……?」となってしまいました。

 

ロイド版に倣ったのか、階段や椅子を用いて人物間の距離を物理的に離したり、登場人物同士は大体客席に向かって話していて、登場人物同士が向き合って話したりすることが極端に少なく、全体を通して、意思疎通が寒々しいというか、人間関係において孤独な印象がある感じだっんですけど、妙にロマンチックなピアノの音楽とか、あと歌とかが入ってきてしまって、微妙にちぐはぐな印象を受けてしまったというのもあります。

せっかく、舞台美術は極限まで減らして、がらんと広いプレイハウスを使っているのでもっと孤独感を強調することもできたんじゃないかとも思うんですが……。

あとやっぱり歌とか音楽って、そもそも巻き込んだり共感を誘ったりするものだったりするから、孤独感とかとは相性が悪いんじゃないかと思ったりするんですが、どうなんでしょう……。

ラップに関しては、散文の時代がきて詩が死んだかのように思われたけれど、実は詩が現代まで息づいていることを表すためにマストだから別にして……。

 

小型のカメラを使った演出はすごい面白かった

たまに上からぶらーんってマイクがぶら下がってくるんですけど(ダイジェスト映像にもある)、どうもそれにカメラがついているみたいで、その映像がリアルタイムで、さっき書いた黒板みたいな板に映し出されるのが面白かったです。

 

登場人物同士が、物語上はかなり近くにいる設定でも、舞台上では1階部分と2階部分にいるレベルで離れていたりするので、カメラでドアップの顔面の映像が映されると、なんだか同時に、物語上での物理的距離と、舞台上で示される登場人物の心理的距離を観ているみたいで、すごく面白かったです。

ド・ギッシュがロクサーヌに「戦争行ってくる」と告げるシーンなんかまさにそんな感じでした。

1階部分にドギッシュがいて(だからで撮影されるのはド・ギッシュの方)、2階部分にロクサーヌがいる。最後にド・ギッシュがロクサーヌにキスするんだけど、カメラにキスをする(映像にはたぶんロクサーヌの視点に近いものが映し出されることになる)。そのあとロクサーヌは2階部分でキスされたと思しき部分を拭う、みたいな感じになってた。あとここでド・ギッシュがロクサーヌに渡した数々の自画像が投影されるのも吹いた。堀部さんノリノリじゃん(笑)。

 

あと単純に、リアルタイムの映像が挟まれると、なんだかドキュメンタリーを観ている気分になって、舞台上で起きることに没入しやすいというのも個人的にあります。

なんにせよオペラグラス持って行かなかったので、顔面がドアップで観やすかったのは素直に嬉しかったです。

 

シラノ……こじらせてない……!!

今まで見たシラノが、吉田鋼太郎さんとマカヴォイ兄さんだった、というのがデカいと思うんですが、こんな外国のストリートとかにいたヒップホップ青年がそのままお仲間引き連れて軍人になっちゃった、みたいなシラノ初めて見ました。

 

なんか勝手に、シラノって、そこそこ年齢重ねて男らしくて強くて、ある程度力も自信もあるように見えて、実は内面ではコンプレックスとか劣等感をこじらせまくってる、みたいな、めんどくさいけどかなり可哀そうな中年のおっさん、みたいなイメージがあったんですけど、今回のシラノはいい意味でも悪い意味でもまだ若くてピュアな感じがしました。ちょっとナイーブな若者というか。

でも、若干その印象がクリスチャンの方と被っているような気がしないでもない……。そのせいかどうもロイド版に比べてクリスチャンの印象が観た後に残らない......。あと古川さんの顔面がなんかもう「クリスチャン!!」って感じじゃん……(支離滅裂)。

 

こういうシラノもありだな~というのが発見でした。でも今度なんかミュージカルでも観に行こうかな……。

 

ド・ギッシュ伯爵(堀部さん)、ボイパできるんですか!?

マジでびっくりした。しかも上手いし。ええええ。

あまりの上手さに笑っちゃいました。

 

あと伯爵が出てきたときの、舞台がしまる感じなんなんでしょうあれ。すごい。

 

個人的にゾッとしたのは、兵士たちがノリノリで「シラノ!シラノ!シラノドベルジュラーック!」って応援団みたいなフリ付きで盛り上がってたところに、伯爵がぬるっとまぎれ込んできて、その場面の最後に「楽しいとこ邪魔したねえ」ぐらいのテンションで退場していく部分です。

伯爵が下手に退場して行く際に、シラノたちに向かってあざけるように小声で「シラノ!シラノ!シラノドベルジュラーック!」って言うんですけど、Kの音を口の中ではじくように鋭く言った時に首の部分に手を持っていくので、「なんだ逆らったら首飛ぶぞってか権力者こえええええ!!」と思いました。それでいて笑いも取っていくんだから余計に怖い……。

 

書き忘れたこと

ロクサーヌの恰好が!おしゃれで!!かっこよくて!!!かわいい!!!!

あと超似合ってる!!!!!

全体的にヒップホップな感じの雰囲気でおしゃれな衣裳ではあったけど、ロクサーヌの恰好まじで好き……。真似したいけど華奢な人じゃないとあそこまでは似合わない気がする……。

【追記:2022/02/17】Twitterの方で聞かれたので、一応こっちにも貼っておきます。

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シラノから言葉を奪ってしまいたかったという可能性も無くはないかもです。あるいはシラノの口から出る言葉を自分の口から出るようにしたかったとか......。かなり無理があるけど......。


あとそういえば、幕間とか冒頭とかに「登場人物名+生没年」みたいな字幕が投影されていて「みんな死んでる」系の演劇だったんですけど、これは多分演出の谷賢一さんの演劇観な気がします。

 

観て損はなかったです

全体的に面白くはあったので。谷賢一演出、というだけで観ることを決めたようなもんだけど間違いではなくて良かったです。

 

にしても観終わってスマホの電源入れたらラビット・ホールの払い戻しのメールが来てて泣きました……。

ミュージカル方面で有名な俳優さん2人(古川雄大さん、田代万里生さん。生の舞台は今まで観たことない)を、ミュージカルじゃないほうで初めて観る、というとんでもウィークだと1人でテンションが変な方向であがってたので、とりあえずニコール・キッドマンが出てるラビット・ホール観て気を紛らそうかと思います。

 

あと明日は久しぶりの夜公演を観劇するので頑張ろう……。

観てて素直に楽しかった『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』

2022/02/13

KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオ 13:00 ※アフタートーク

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横浜中華街とコラボした春節オブジェランタン。
元町・中華街駅の改札付近にもありました。

 

 

KAATにあけおめしに行ってきました。今年も面白い公演を勝手に期待しています。

 

あいにくの雨だったんですけど、観ていて素直に「楽しい!!」と思える作品に、すごく久しぶりに出会った気がします。

チケット代も破格の値段(U24で半額の2,400円、高校生以下だともっと安い1,000円)。

 

雰囲気としては、学芸会とか、学祭で先生たちが本気出して出し物考えた、みたいなノリで、客席でもかなり気楽にくつろいだ状態で観ることができました。

でもやっていることのレベルが全然学芸会とか学祭レベルのクオリティではないという。

こんな風に、プロが全力で遊んでる作品をもっと観たいなあ、もっと気楽に観られる機会が増えればいいなあ(そしたら演劇人口もどんどん増えるのに……)と思いました。

 

あと成河さんがいつものように無双してました。前口上も合わせればたぶん11役ぐらいやってました。当日もらえるパンフレットの役名の下に延々「成河成河成河……」と続いているので「ああ、ついにクローンを生み出してしまったのか……」と思いました。楽器演奏もしてて(ギターは知ってたけどパーカッションも謎に上手い)「もうこの人ができないことって、一日じっと黙って何もせずにゆっくり過ごすことぐらいなんじゃないか……?」と思いました。

もし『フリー・コミティッド』の再再演があるなら観に行こうかな……一人芝居で38役……。どういうこと……?

 

 

公式と舞台写真

www.kaat.jp

okepi.net

 

あらすじ(あまりに楽しく観たので間違っているかも)+α

天竺国大雪音寺に向かっていたのに、どういうわけか現在の神奈川県に三蔵法師柄本時生)一行が迷い込む、という話です。

 

愉快な前口上に続く形で、孫悟空菅原永二)、猪八戒(インスタグラムの自撮りのみの登場。写真は舞台上の白布に投影される)、沙悟浄長塚圭史)、白馬の玉龍(佐々木春香)全員と散り散りになってしまった三蔵法師が、空腹のため野れ死にしかけているところから物語部分は始まってました。

開演時間的に昼飯食べられずに観に行っていたので、三蔵法師に超共感してたら、30分もしないうちに精進料理にありついていたので早々に裏切りを感じました。仲間だと信じてたのに……。

【追記】テーマソングみたいなのがあるんですけど、「ちょは〜かーいはいなーいけぇどぉー(猪八戒はいないけど)♪」の部分がやたらクリアな発声(成河さん)で妙に耳に残ります。近所の歌上手い兄ちゃんが歌ってるノリで、ミュージカル......にはギリギリなってない感じ......。良いとこ攻めてる......。

 

そこにたまたま(?)ジャック&ベティっていう横浜の映画館から映画を観終わって出てきた口笛の男(成河。道祖神らしい。アラン・ドロン冒険者たち』のテーマソング吹きながらレティシアについて話してるけど、革ジャンにグラサンはアラン・ドロンのイメージなんだろうか……)に連れられて、お腹ぺこぺこのまま三蔵法師は何故か人喰い大蛇退治に加わることになってました。三蔵法師と電車の組み合わせがシュールすぎる。行った先で出会ったアミメニシキヘビ捕獲で有名な白輪園長(菅原永二)と共に大蛇を捕えると、なんと玉龍でびっくり。人をほんのちょっと食べちゃったみたいで(「ほんのちょっとですよ〜」って佐々木さんの言い方がかわいい)食べられちゃった人の遺品の(?)スマホもゲットだぜ!な展開。

 

猪八戒はどうもめちゃくちゃ神奈川県各所を食べ歩きしているらしくて、インスタグラムも使いこなしてるみたいです。

「豚カツとか食べてる写真上げたら絵面的にバズる(猪八戒は公演ポスターまんまの見た目)」とか言われてたけど、ラストには何故か養豚に興味持ち出す始末で腹筋崩壊した。

【追記】というわけでめちゃくちゃ美味しそうなご飯の写真がてんこ盛りです。飯テロ演劇という新ジャンル。

 

そのあと三蔵法師は、精進料理になんとかありついたり、最初は三蔵法師に会えて恐悦至極みたいだったのに後半やたらチャラめな木彫りの空海像(成河)に「観音経、1回一緒にどうッスか?」みたいな一杯ひっかけるノリで誘われてお経を読むはめになったりしてて、その流れで沙悟浄は精進料理のデリバリー(たぶんウーバー)で生計立ててることを知って、とりあえず猪八戒を白輪園長に捕獲してもらってました。でかい括りだと沙悟浄も爬虫類だから捕獲できるらしい。園長すごい。

そういえば空海像に会ったのは海に移動したからなんだけど、三蔵法師、「海に行こう!(その場でジャンプ)(移動が終わった体で)わ~まぶしい~」って感じだったので、なんのバラエティ番組だと笑いました。

あとアフタートークで喋ってたけど、このセリフ地味に言いづらいそうです。シェイクスピアじゃないけど、Act on lineというか、気持ち作ってからセリフというよりセリフ言いながら気持ちも同時に作らなきゃ間に合わない表現なので、確かに難しそうではある……。

 

沙悟浄はサユリさん(佐々木春香。実は人間に化けた河童に化けた狐)とその連れ子(成河。人間に化けた、目久尻川で目をくじられた河童)と暮らしてたみたいなんですけど(【追記】「洗濯機が外にあるタイプのアパート」という表現の破壊力)、三蔵法師達が乗り込んで行ったら、正体表してみんなびっくり。でも目が見えないので白輪園長あっさり捕獲。やっぱり園長最強。

あと河童だと正体明かす時の成河さんの声と身体が、どんどん妖怪っぽく(義経の時みたいにキンっとした声と、あと謎の身体能力で動きがぬるぬるしていく)なっていくし、謎のクオリティ。サユリさん(佐々木さん)も最後キレた沙悟浄から逃げるとき、華麗に舞台後方の紙を破って飛び出ていくので、とにかく謎のクオリティ。

 

怒りのあまりサユリさんを殺そうとした沙悟浄に「むやみな殺生ダメ!」っていう三蔵法師はさすがお坊さん慈悲深いです。でも「ぶっ殺して皮剥いで……首にまいてやる」って沙悟浄が返すと「……愛してたんですね……」としんみり展開。沙悟浄、だいぶバイオレンスな愛情表現で笑いました。

 

行方知れずの孫悟空はスカジャンの刺繍のバイトをしてたみたいです。バイト仲間の山下くん(成河)とテレビ観てたらプレデターみたいな見た目の沙悟浄が映ってて、お得意の雲での超高速移動で再会。やったね!

 

そのあといろいろあって(省略)、影取池に三蔵法師が影を取られちゃいます。影を取られると早々に死んじゃうらしくて、玉龍沙悟浄孫悟空、これはやべえと3人で頑張って蘇生を試みる。

 

びんざさらの後光をたたえた(成河さんが毘沙門天の後ろに立って、光輪みたいになるように頭の後ろで掲げてた。毘沙門天の力が働くときの効果音込で「経済的な演出だ(笑)」と1人でツボってました)毘沙門天(佐々木春香)に、「二宮金次郎像(成河)ならなんか知ってるかもよ」と言われて、ほとんど優等生をカツアゲしてるヤカラ2人みたいな絵面で金次郎から情報を得た沙悟浄孫悟空は、なんとか影を奪いかえすけど、どうもうまく三蔵法師が蘇生しないめんどくさい事態になってました。

【追記】あとちょいちょい思ってたけど、三蔵法師はヤカラを抱えつつ教育しつつ旅してた苦労人ということがよく分かった(曲解)。

 

もう1回金次郎とかから情報集めて、最終手段のレッツ神頼みで大山に。三蔵法師の遺体(仮)は玉龍のしょってる桶の中です(たぶん紙とか布製。生き返る時に柄本さんぐしゃっと潰して遺体(仮)と入れ替わってた)。

金次郎がヤカラ感あふれる2人に、「今ぐらいは本から目ェ離せよ」的なことを何回も言われて「出来ないんですよッ!銅像だから!!」って言うのとか「本当は僕二宮尊徳になってからがすごいんですッ!!目線をあげてからがすごいんですッッ!!」って謎に悲痛な叫びをあげてたのがかなりツボりました。もしかしたら本人からすれば黒歴史な部分が銅像にされてしまったのかもしれない......。とにかく「ふっ」って声出して笑っちゃった。優等生が突然キレて(なんで俳優さんってキレる演技する時ほんとに顔赤くなったり文字通り青筋立てたりできるの??)ビビる不良2人的な絵面もあいまってヤバかった(笑)。あと話途中で飛び出していく2人に対して「子供かよ……」って呆れてる二宮金次郎像に、「お前よく飾られてるの小学校だろうが……」とまたツボって、もうとにかくこのシーンは腹筋が死にます。

 

その後、観音開きの奥から荘厳に登場した大山祇神(成河)のおかげでめでたく復活~。いえーい。

 

これでみんな帰れるね!めでたし!

 

でもその前に玉龍はカミサマパワーで居場所判明した猪八戒とっ捕まえてきてね、沙悟浄はサユリさんにアデューしに行くね(サユリ……魔性……)、孫悟空はスカジャンに刺繍途中だった虎が出てきちゃったって山下くんから「助けて!」の電話があったからそれどうにかしてきてね、とそれぞれ用事があるみたいなので、その間に三蔵法師大山祇神は温泉に入ってゆっくり待ってよっか~とのんびり終わってました。

 

前口上その他

前口上が、「今日雨降ってるのに来てくれてありがとうございます、今からこんな劇やります、今まで色んな役やってきたけど神奈川県役ってまじやったことなくてびっくりだよね、そういえば三蔵法師の三蔵って名前じゃない(世界史とかで聞くけど、経典の経蔵、戒律書の律蔵、注釈書の論蔵の3つに精通したお坊さんのことを三蔵法師っていう。名前は別にあってそれが玄奘)んだよ知ってました?(問いかけられたお客さん知ってて)あ知ってたんですか教養高ええ!!すごいっすね……じゃあ今日誰が誰を演じるか紹介しますね~」みたいな、かなり緩めのノリで始まって、ストーリーも、仲間集めからの、仲間で力を合わせて仲間を救う、みたいな分かりやすい筋で「観劇初心者に優しい劇だな」と思いました。

もちろん子供にも。ヒーローものとか冒険もので王道の筋。

おもちゃ箱というか、飛び出す絵本超立体版!みたいな観音開きの木箱をあけると、みんな「○○を演じる△▽です~」ってとにかくアットホームなノリ。

それにしても誰だ一体神奈川県をしょって前口上しよう!って考え付いた最高にクレイジー人。大好き。

 

間の取り方とか完璧でかなり笑える前口上で、物語が始まる前から「これは楽しく、ゆるく観ていいやつ……!」とテンション上がりました。

 

あと最後、温泉でも入りましょうか~!って大山祇神(成河)に誘われて、木箱の中に戻っていくんですが、その時に大山祇神が、三蔵法師に続いて木箱に入って、蓋を中から閉めながら客席に向かってウインクしそうな勢いで茶目っ気ふりまいて引っ込んでいくので「ディズニーとかで良く見るやつ……!」と思いました。そんなにディズニー観ないけど。

子供向けのアニメとかショーとかだと終わる前に登場人物が「ばいばーい!まったね~」するじゃん。なんかあの感覚。終わった後もほっこりするやつ。

 

前口上と同じ人がやってるカミサマ(でも表情とか仕草的に、客席に顔向けた時に大山祇神役だったかは謎)なので、「もしやお前全部いたずらとして仕組んだな……?なんなら天竺から一行連れてきたのお前じゃねえよね……?」と個人的にニヤッとも出来ました。パック味がある......。

木箱に始まり木箱におわる扉の開け閉めを、同じ俳優さんにやってもらったのは、ちゃんとした納め口上、エピローグはないけど、それがあるように感じて、「うあ~終わっちゃうのか~もっと観たいなあ~」と、なんだか久しぶりにそんなこと思いました。

かわいい終わり方だったなと思います。

 

生演奏ヤバい

角銅真美さんの歌声すごい好き…。あと本当に色々な楽器を使っていて(ぶんぶん振り回すと音出るアレとか)聴覚的にも視覚的にも演奏が面白かったです。効果音の部分でも声で表現したりしててマジで楽しい。

 

でも河童関連の部分で、角銅さんが上手に座ってる時、河童の像に見立てられていたので笑いました。かわいい。

 

あと成河さんのパーカッション(あれ太鼓……?)がかなりハイレベルでビビりました。なんでそんなになんでもできるの??天才なの??

 

二宮金次郎の時にその太鼓を薪代わりにしょってるんですけど、そのあとすぐ箱根駅伝(というか三蔵法師が冥土から頑張って帰る道中)で応援する沿道の人に戻らなきゃいけなくて、急いで太鼓の上からベンチコートみたいなの急いでひっかぶってて笑いました。ニット帽も急ぎ過ぎで上手くかぶれてない(笑)。

早着替え関連でギリギリセーフ?アウト?みたいなことして笑いとるのって定番なんだろうなきっと。

 

そういえば何役も演じるから早着替えの利便性のために上が白Tなのは納得だけど、下はなんで地下足袋にボンタンみたいなとび職じみた格好してんだろう……と疑問だったんですけど、最後大山祇神を演じる時にみずらみたいな髪型で、なんかもう「大国主命とかこんな格好してたよね」的な恰好になるので、その時に違和感ないようにあれだったのか…とびっくりしました。

あと沙悟浄の色々はっつけたみたいな衣裳のチープな感じがツボです。というか沙悟浄のサユリさんへの愛が深くてツボです(熱弁)。

 

影絵の演出面白かった

お供の妖怪、とはいっても人間が演じてるので、せんとくんばりに人感あふれてるんですけど、長距離移動する体の時とか、白布の後ろで影絵としてリアルな妖怪フォルムのやつがぴょこぴょこ動くので「ちゃんと妖怪だった......!」となりました。

 

あと私を裏切った(根に持つ)三蔵法師が精進料理をかっこむ時、玉龍も一緒に食べてるんですけど、影絵なので大きさを調節してて、玉龍の方の影が三蔵法師に比べてめちゃくちゃ大きく映ってたので、やっぱり「妖怪だ......!」となりました。

 

何回か影絵を使った演出って観たことあったんですけど、だいたい畏ろしい感じとかホラーな感じで使われてることが多かったので、ここまで笑えてキュートなやつは初めてで、楽しかったです。

あれでも妖怪の表現だからホラーといえばホラー......?

 

道祖神(警察)意外とスレスレのこと言ってる

道祖神、たしか全部成河さんが演じてて、三蔵法師たちを色んなとこに導いて言って話をどんどん進めてくれる便利な存在でした(たぶん狂言回し的な役割に近いからこの11役はできれば兼ねるのがベストなんだろうと思う)。

出番ごとの最後らへんに「どうも〜この辺の道祖神です」ってボンタン風ズボンのポッケからちっちゃいお地蔵様的なものを取りだしてたので、「証明書かよ......!」とツボってました。ズボンに紐付きでくっついてるのもやばい。たぶん落としたら警察手帳みたいにペナルティでもあるんですかね。

 

あと結構最初の方に、警察官に見えた道祖神が、白輪園長に向かって「いや〜これはあなたの思い込みを利用してっていうか......(要はあなたが私のことを警官だと思ってるから警官に見える)」って喋ってて、「スレスレのネタバレしてんじゃん」、とまたニヤッとしてしまいました。

手作り感あふれる舞台美術で、シンプルで、観客の想像力に頼る部分もめちゃくちゃある舞台で、警官に見える人が「いやでもそういう風に色々見えるのって実は思い込みで〜」ってとんだメタ発言ꉂ(ˊᗜˋ*)。

 

他にも劇中の人物なのに、劇外からツッコミ入れるみたいなセリフがちらほらあったので(ブレヒトとか喜びそう)、意外と細かく見ていくとさまざまなレベルのセリフがありそうで、ちょっと戯曲読んでみたいと思いました。

沙悟浄とサユリさんのアパート(木箱の中)で起こる出来事について、その木箱の枠の外(なんかプロセニアムアーチの外みたいにも見える)に腰掛けてる園長がつまんなそうに聞いて茶々入れてたりとか。ここ好きだった。

 

売ったりしないかな?買うけど全然???(圧)

 

こんなの最初に観られたらきっと演劇やってみたくなるし大好きになりそう

そしてたぶんそれが狙いな気もします。たぶん大成功だよ!!頼むから地元にも来てくれ!!(青森)

 

なんていうかPLAY(演劇)らしくPLAY(遊び、あそび=余裕)の雰囲気満載なのが、とにかく久しぶりに観た感じがして最高です。

今回は内容も明るくて軽くて楽しい感じだったけど、こういうのを超ド級のシリアスな内容の時とかでも要所要所に挟んでくれるといいのに......。なぜかシリアス路線だと全編映画っぽくなるという摩訶不思議現象が起きたりする......。

 

KAATでの公演期間は短いけど、ツアー企画でいろんな劇場めぐるらしいので、観に行ける方は観に行って〜そして楽しんで〜!(と勧めやすい値段なのもとても良き)って感じです。

 

あと、「アフタートークもあって得した気分だしとにかく楽しかった〜」ってるんるんでKAATの出口に向かったら三蔵法師のお父さんが普通に立っててマジでビビりました。マスク無かったらきっとアホみたいに口開けてて醜態晒してたのでマスクありがとう......。

 

ところで、今日は例のシラノ・ド・ベルジュラックをプレイハウスに観に行ってきます。あのパンフレット騒動があったやつ。

ダイジェスト映像観る限りだいぶジェームズ・マカヴォイのやつに感覚似てそうだけど、はたして日本語のラップを聞き取ることが私に出来るのか......!!乞うご期待(!?)