感想日記

演劇多めの日々の記録的なあれ。基本的にふざけてるしネタバレしまくり。気まぐれで映画、ドラマも。誤字脱字、タグ付けは頑張れたらやる...。あと英語に関しては信用しないでください(目下ゆっくり勉強中)。

『天保十二年のシェイクスピア』

2020/02/15
日生劇場
17:30から 2FK列12番
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昨日深夜テンションで
『ヘンリー八世』の感想の最後に
ノリで色々書きましたが、無視してください。
お願いします..._:( _ ́ω`):_
テンションあがっていると
人って何やらかすか分かりませんね。
気をつけます。

さて『天保十二年のシェイクスピア』ですが
井上ひさしの長編戯曲ですね。
「ことば・ことば・ことば」の「どく」で
世界中を未だに引っ掻き回して虜にしてる
シェイクスピアとその作品に対する
愛ある皮肉と弄りたっぷりの作品です。
フルで上演すると4時間超えます。多分。
道元の冒険』よりはマシなのかな...。
どちらにせよ超長いです。おしりに注意。
戯曲作品一覧とか
wiki先生で見ていただけると分かるんですが
歴史に名前が出てくるような人の
一代記っぽいものが多いです。
太宰治とか宮沢賢治樋口一葉などなどなど
文学関係が多い気もします。
しかも内容も充実している。
博識だから出来るスゴ技です。
ちなみに、彼の作品が上演される場合
出来るだけ戯曲を読んでから行くようにしてます。
なんでかというと
それこそト書きの少なさで
シェイクスピアが有名なら
井上ひさしはどんだけ書くんだってぐらい
指示が細かいからです。
まあもっと多い人もいるので
一概には言えないんですが
それだけ細かく描写してあるので
正直読むだけでも面白い、うえに
読まずに行くと
どこまでが戯曲の指示で
どこからが演出家の意図なのか
分からないんですよね。さっぱり。
アメリカ人並みに肩すくめて
両手を広げたくなります。
面白い演出だなあと思ったら
戯曲に全部書いてあったりして
(指一本の動作に至るまで)
ホントすごいです。

ところで流石、博覧強記の井上ひさし大先生
この『天保十二年のシェイクスピア』も
シェイクスピア全作品の要素が
みっちり盛り込まれている。らしいです。
私、まだシェイクスピアに関しては
どうも歴史物...ヘンリーとかリチャードとか
そういう王様の名前を冠した戯曲とか
あと晩年の戯曲とかは
まだ全然手をつけられてなくて
半分ぐらいしか制覇してないので
全部は指摘できないんですが
とりあえず
・『リア王
・『マクベス
・『ハムレット
・『オセロー』
・『ロミオとジュリエット
・『間違いの喜劇』
・『ジュリアス・シーザー
・『リチャード二世』
・『リチャード三世』
・『ヘンリー五世』
(百姓隊長というストーリーテラーがいる所が
『ヘンリー五世』...だと思う...多分?)
あたりを抑えておけば7~8割方OKですね。
正直、四大悲劇と『ロミジュリ』だけでも
充分なぐらいです。
でも『リチャード三世』は大事です。
なんてったって高橋一生さん演じる
佐渡の"三世"次(みよじ)の元ネタですから。
ラストにも関係してくるので
『リチャード二世』『リチャード三世』は
wiki先生とかGoogle教授に
有名なセリフとかをお尋ねしておけばバッチリ。
そういえばリチャード三世の遺骨が
確かこの間(といっても結構前)発見されて
まじで傴僂(せむし)みたいな形状だったことが
分かったそうです。
ただ当時の分厚い衣服のことを考えると
単なる姿勢の悪い人止まりに見えただけだと
個人的には思います。
リチャード三世は謎に包まれてますね。
だから魅力的なのかも知れません。
シェイクスピアの戯曲だと
極悪人みたいな描かれ方してますが
実際はそうではなかったとかなんとか...
まあこの辺は政治のいざこざが
めちゃくちゃ関係があるので面倒臭いですね。

余裕があれば
・『ベニスの商人
・『シンベリン』
・『夏の夜の夢』
・『空騒ぎ』
・『お気に召すまま』
・『十二夜
・『じゃじゃ馬ならし
あたりを触れておけばもう充分だと思います。
更にゲーテと『ファウスト』の名台詞
「時よとまれ、君は美しい!」とか
更に更にハイナー・ミュラー
ハムレットマシーン』も触れておくと
ハムレット王亡霊役に「プロンプ」する
三世次がとっても笑えます。最高。
ハムレットマシーン』の
「台詞を忘れたのかい。ママ。
プロンプしてあげよう」のとことダブって面白い。
ただ、戯曲出したのはミュラーの方が後なので
偶然って感じです、これは。
いつかシェイクスピア全部網羅したら
もう一回比較してみたいですね。できるかな。
......なんかちょっと無理そうですね。
河合祥一郎先生とかにお任せます。その辺は。

まあでも舞台観た感じだと
知らなくても普通に楽しめると思います。
上演時間を縮めるためなのか
それともエンターテインメントとして
シェイクスピア全く知らなくても
楽しんでもらうためなのか
そのどっちもだとは思いますが
木場勝己さん演じられる
百姓隊長兼説明役の
シェイクスピア関連の解説セリフが
結構バッサリ気前よくカットされてました。
ここまでカットされるとむしろ
シェイクスピアなんて知らない方が楽しめそう。
私みたいに中途半端に知っている方が
ちょっと拍子抜けするかもしれないです。
はり扇が抜けちゃった講談みたいな。
ツッコミ不在って感じですね。
だから最初は戯曲に比べて
なんだか間延びしたような印象を受けたんですが
音楽パートが入ってくると
全然気にならなくなりました。
文字からは、音は聞けないし
踊りもみれませんしね。
ただ、「ぼろづくし雑巾口上」が
カットされていたのは個人的にショック。
衣裳に引っ掛けた駄洒落満載の前口上です。
『ヘンリー八世』の感想でも触れたけど
シェイクスピアの中には衣服とかけた
比喩とか結構出てくるし
当時、舞台セットはなかったけれど
衣裳に関しては貴族のお下がりを貰っていたので
衣裳だけは立派だったこととか思うと
めちゃくちゃ最高の前口上なんです!(熱弁)
その上井上ひさしの言葉遊びが匠で巧み。
シェイクスピアなんて
5割オヤジギャグですからね!(言い過ぎ)
でも多分若い人のことを考えると
(てか私も充分若いとは思うんですが)
「あっちを絣(かすり)、こっちを掻取り」
とか
「弱きを襷(たすき)、強気を扱帯(しごき)」
なんて言ってもピンと来ないからかもしれません。
まあ父とした侠客講談が『天保水滸伝』なので
他の部分にも時代劇とかでしか聞かないような
そういう単語があったんですが
言い直したしカットしたり
視覚効果で伝えたりと
四苦八苦して分かりやすくなっていました。
エンターテインメントとして
最高で最良の判断だと思います!
本当はちょっと観たかったけど
ラストの「今回はどんでん返しはありません」の
演出がなかったりとか
戯曲が書かれたあたり(1973年)の
時事ネタ(立教大学助教授大場啓仁の事件)とか
そういうのは全カットしたり
「To be or not to be ...」の翻訳問題の部分に
河合祥一郎先生や松岡和子さんの訳を
突っ込んでみたりとか
色々現代に合わせてたのも良かったです。
観客は今の人ですから。
時事ネタといえば
"なんだしなんだしAGC♪"
を演出に使ってくるとは思いませんでした(笑)。
隠亡百姓第一の噂ばなし」のとこですね。
"ハムレット王の亡霊役を
三世次(高橋一生さん)に頼まれたんだけど..."
って百姓が語るところです。
演者弄りが酷い(笑)。
もちろん面白かったです。
ただ一瞬脳内検索するのに時間がかかりました。
でも劇場のほとんどのお客さんが
すぐ反応してたので
シェイクスピア弄りの部分より
レスポンスの速度も量も上でした)
高橋さんのファンの方が
たくさん来ることを見越して
年齢層も考えて色々合わせて
こういうふうに演出したのは素敵だと思います。
ファンに関連して、そういえば、なんですが
シェイクスピアって、下ネタのオンパレードで
特に『ロミジュリ』なんか酷くて
ほとんど放送禁止用語じゃん!
レベルだったりするんですけど
それを意識したのか
天保水滸伝』のせいなのか
それとも書いてあるように作者の趣味なのか
この『天保十二年のシェイクスピア』も
結構下ネタ濡れ場のオンパレードなんです。
あれってそれぞれのファンの方の感情としては
どうなんだろう?
特に三世次、結構どぎつい言動する役なので。
まあリチャード二世で三世でイアーゴーで
マーク・アントニーでエトセトラなので
当たり前っちゃ当たり前なんですが。
(前の記事にも書いたけど是非『オセロー』で
イアーゴー役をやって頂きたい。
ハマり役になりそう。
今のところ日本人のイアーゴーでなにこれ最高!
ってなったのは高橋洋さんですが...
あれ、予期せず高橋つながりですね...)
「きゃ〜!カッコイイ!イメケン!」とか
「可愛すぎてしんどい」
って言う楽しみ方されたい方は
もしかしたらちょっとえっ...(引)ってなったり
するんですかね。
まあ三世次なんかはそもそも片輪者で
イケメン役ではないんですが。
そういう所ってやっぱりちょっと思うところが
ファンの方々はあったりするのかな、
なんて思いました。

そういえば知らなかったんですが
高橋一生さん、歌すごい上手ですね。
大体役者さんとか、あとお笑い芸人さんとか
人前で話される方って
歌がお上手なこと多いですし
そもそもこれ音楽劇なので
まあそこそこに歌えるから
このキャスティングなんだろうなあ
ぐらいに思ってたんですけど
予想を遥かに上回るいい声。
しかもちゃんと
日本人の日本人による日本人のための
日本語の日本語による日本語ための音楽劇
って感じの発声でした。流石。
ただ、更に若手の方になると
どうしてもミュージカル調になったり
まあそもそも演出の方が
ミュージカルなどを手がけられる方らしいので
しょうがないのかもしれないですが
井上ひさしの音楽劇は
源流はブロードウェイ・ミュージカルに
あるのはあるのでしょうが
(「音楽気のあるアメリカ映画を主食に育った」
なんて『ブロードウェイ仕事日記』で
ご本人が言っちゃってます)
"ブロードウェイのようなものは
日本人の俳優の肉体じゃ無理だから
日本人の俳優の肉体でしか表現できないことを
やってやるぜ"
みたいな心意気で創られているので
あんまりミュージカル調にやられると
ちょっとええええっ...てなっちゃいます。
まあ、でも今の日本人の俳優さんって
もうほとんど海外の方と身体的に遜色ない方
かなり多いので
こう言う井上ひさし音楽劇も
ありかなとは思います。

あと、演出で良かったのはセットですね。
妙にチープな地獄門とかパロディ感あって良い。
あとは、こんな感じの。
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東宝演劇部さんの公式Twitterから
引っ張ってきました)
旅籠とか長屋を2つに切っちゃった感じの
左右対称なセットですね。
リア王』(財産分与で揉める)から
『ロミジュリ』(両家の争い)に
続くことを考えるとパカーンって割れるの
分かりやすくていいし
その後の進行も
すっごく見やすくて面白かったです。
ラストの『リチャード二世』の鏡に引っ掛けた
演出のところでは長屋みたいにくっつけて
でっかい鏡みたいにして観客に向けてたのも
なんだか蜷川幸雄さんを彷彿とさせますね。
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(見えづらいけど見えますかね。
これも東宝演劇部さんの画像です。)
まあ蜷川さんもこの作品演出されているので
そういうのもあるのかもしれないです。
あるいは、加害者然とした悪人三世次を
見つめる観客を鏡にうつして
観客自身に見つめさせることによって
『リチャード二世』にあるように
この劇世界で観客のために、
観客に観られるために
悪役を演じなければならなかった、
そしてそのために死んでゆく
加害者であり同時に犠牲者でもある
そういう三世次の姿を立ち上がらせたかった
の、かも、しれないです。
観客の役割は、社会に置き換えてもいいかも。
そうするともっと痛烈ですね。
また最後の『リチャード三世』の
"A horse, a horse, my kingdom for a horse!"
(馬だ!馬を寄越せ!引き換えに私の国をやる!)
にかけたところ
「馬だ!馬を持ってこい!
ここから、いや、この世から抜け出すには馬が、
それも羽の生えた馬が要るんだ!
持ってきてくれた者にはなにもかもやるぜ。
馬だ!天馬だ!」
の部分が
割と静かめに演出されてたのは
そういう不条理というか理不尽な運命とかを
滲ませたかったの、かも、しれないです。

さっきから、かもかも強調しているのは
ここまで広告にあるように「祝祭音楽劇」として
エネルギッシュにド派手に面白おかしく
やってきたので、ラストも
歌舞伎の色悪とかなんかかっこいい悪役みたいに
高笑いしながら満足気に格好よくド派手に
死んでも良かったとは思うんですよね。
でもこの演出はこの演出で良かったとは
もちろん思います。
あとわざわざ長々としたセリフを引用したのは
単純にこの
「馬が、それも羽の生えた馬が要るんだ!」
っていうセリフが好きだからです。
かっこいいセリフですよね。
元々の英文は英文で弱強五歩格
(アイアンビック・ペンタミターっていいます)
しかも強で終わる男性終止
(マスキュリン・エンディング
詳しくは河合祥一郎小林章夫
シェイクスピア・ハンドブック』にて)
なので決然と響いているのにも関わらず
没落してて、惨めさも滲んでますが
(なんてったって馬と王国が等価ですから)
こっちは天馬と何もかもが等価なので
やっぱり三世次のほうがかっこいいですね。
天馬で空をかけられるのなら
確かに何もかもやっちゃっても
いいかもしれないです。
ちょっとそう思います。
それをこの世から逃げ出した(現実逃避した)
舞台の上で言われるので
何とも意味深長な印象を受けます。
あ、あと広告に関して
たまに舞台だと、広告チラシイメージ詐欺
というのがありまして(勝手に命名
チラシの印象と舞台の印象が
全くもってこれっぽっちもぜーんぜん180度
違う時があるんですが
今回はほとんどそのまんま。
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(ありがとうございます東宝演劇部さん)
で、チラシが上にもあげたパネルのようにf:id:monsa_sm:20200216141121j:plain
こんな感じなので
凄いですね。ビジュアルまんまです。
レインマン』にも見習って欲しかった。
(ありとあらゆる意味で裏切られた作品ですね。
新国立劇場中劇場。2018/08/03観劇。
藤原竜也椎名桔平主演。
チラシでは黒スーツだったのに
舞台では全身蛍光じみたオレンジスーツでした。
どうしたマジでほんとに。
似合ってたのが衝撃です。すごい。)

なんだかんだ色々書きましたが
つまるところ最っ高にエンターテインメントで
超楽しかったです!
長時間のコンサート見てきたみたいな。
で最後になんかマツケンサンバをみんなで
歌って一本締めしてきたみたいな
謎の爽快感がありますね。
井上ひさしも、役者さんたちも、
演出も音楽も全部良かったです。
しかも劇場の傾斜が急なので
いっちばん安い2階最後列でも
オペラグラスなしで結構表情まで見えます。
これはラッキー。
あ、でも高橋一生さんのファンの方は
1階前の中央上手側通路寄りに
席取られるべきですね、オペラグラス持参で。
運が良ければ、三世次がそのオペラグラス
借りに来ます。
しばらくそこでその観客の方と
一緒に舞台覗いてましたね。ウケる。
あと下手側の観客席のほうでは
座って舞台しばらく観ていたような...
ちょっとよく見えなかったんですが
元々席が空けてあるのか
まさかとは思うんですが
男性の観客の方の膝の上に座っていたのか...
(もし座ってたんだとしたら男性だと思いますね。
女性は、今は色々まずい気がします。
たとえイケメンだろうと)
そこはさすがに見切れたんで不明ですが
なかなか攻めてました。爆笑ですね。

追記:後で聞いた話なんですが日によって
様々らしいです。パンフレットを眺めた
ような日もあったらしい。
どっちにしろ爆笑です。

でも!やっぱり「ぼろづくし雑巾口上」は
観たかったあ...っていう
なんか個人的な愚痴になりました。すみません。
木場勝己さんの語り口で聞きたい。
絶対素敵...。

とりあえず、地元に帰省する前に観る
生舞台はこれが最後です。
あとはNTLiveの『リーマン・トリロジー
行ってから帰ろうと思います。
これは今回と、うってかわって頭使いそう。
まあ大体イギリスの舞台は頭使うんですが。
...頑張ります。
リーマンショックについて
ちょっとググッてから行きます。
天保十二年のシェイクスピア
これから行かれる方も
シェイクスピアについて軽くでもググる
より楽しめること間違いなしですね。
Google教授に感謝しかない。

あと、蛇足ですが、これ観に行った日
狙ってた舞台のU25チケットをもぎ取れました。
なんと一般の半額!
色々ひっくるめて最高な日でした。(現金)
また井上ひさし作品、観にいきたいです。