感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『ふきげんな過去』

2020/04/13
家のTV
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まさかタイトルの「過去」が
主人公(二階堂ふみさん)の名前だとは。
ビックリです。まあ、もしかすると
カコとか夏子とか漢字は違うのかもですが、
wikiで調べたら"果子"でした。)
カコの産みの親(小泉今日子さん)の名前が
未来子なのでこれはかなりおとぎ話ちっくです。

おとぎ話ちっくというより、
ファンタジー小説にブラックコメディ混ぜて、
更にちょっとベケット的な不条理感を
日常生活の会話の中に見出して、
話の大筋としてはハートフル系にした感じ...
ですかね。観たことない感じで私は好きです。
演劇映画とかに慣れてる人なら多分好き。
ただ結構人を選ぶかなあとは思います。
私はかなり笑えました。
舞台とかでもやれそうだなと思ったんですが
これは映画特有のスンッ( ˙꒳​˙ )ってした
あの静かな感じが面白さを増長しているので
下手にしない方が良いな、と
観終わってから考え直しました笑。

全体を通して、多分
未来子のセリフが1番印象的ですかね。

「あんたの未来ね、それ、ただの過去よ。
見えるものなんて見てもしょうがないでしょ。」

カコはずっと"自分は未来がみえる"から
この世は全てが自分の想像の範囲内進むもので
だから全部全部「つまんない」と
思っていたのですが、
死んだと思っていたおばさん(実は母親)の
未来子が、突然戻ってきてから
少しずつ変化していきます。

未来子から教わり、爆弾を作って、
それを自分で爆発させてからのシーンは
特に良いですね。
日常生活から一瞬完全に離れたことに対する
喜びみたいなものが現れます。
カコの表情が一気に変わるの凄いです。
本当にうっすらと口角を数ミリだけ
かすかに動かすレベルなのに
表情が全然違います。
表情筋よりも上のレベルで変化するのがわかる。
前から好きな俳優さんですが
二階堂ふみさんあらためて凄いです。

いや、まあカコ含めてすべての俳優さんが
今回は全員が全員ナイスキャスティング!
って感じでした。
最初、幼いころに誘拐された過去を持つ
康則役の高良健吾さんが
イマイチしっくりきてないな...?と
不思議に思っていたんですが、
あれはそういう役だったみたい笑笑。
観続けると納得します。あれは良い。
"運命が数奇なだけで中身が空っぽ"
だかなんだかカコに罵倒されてましたが
正しくそんな胡散臭い感じ(失礼)
爆笑しちゃいました。

あと、最後のシーンで、カコがずっと探していた
近くの海辺にいるはずのワニが、
死んだ状態で発見されますが、
そのワニが突然動き出して、
それを見てカコがニッコリして終わるのも
超超好きです。最高。

未来子とのちょっと日常から離れた生活と、
(その意味で"冒険"なんだと思います。
しかし日常生活の延長の"冒険"なので
"たかが"なんだと思います。)
あの印象的なセリフを通して、
今まで見えていたと思っていた未来も、
知らないうちに追い求めていた
本当の母親である未来子の影も、
全てが過去であったことがわかったからです。
自分の周りには過去には縛られない
ワクワクするような未来が待っている
"かもしれない"。

そしてそれを証明したのがワニ。
死んでしまった(と思われた)ワニに対して
これからもずっと死んでいるという未来を
カコは勝手に頭の中で描いて
いつものように"つまんない"と思っていたら
なんとワニが動き出す!

自分が見えていると思っていた未来は
本当に過去の出来事から引っ張ってきただけで
未来は色々なことが、予測不能のことが
起きうることに、多分カコは
心から喜んだんだと思います。だから、
もうつまらなくないから不機嫌にはならない。
未来は今までよりは少し面白いかもしれない。
そういう笑顔だと思いました。
出だしからは想像できないくらい
ハッピーな終わり方です。

あ、でも、冒頭すごく好きです。
冒頭のカコが鳴らす傘の音が
ずうっと頭に残っています。
最初のカコ、突っ立っている時も歩いている時も
傘で、ざりざり地面をこすってるんですが
その音が全部が全部"つまんない"って
ささくれだってるカコの気持ちを
端的に表現している気がしました。

それにしても最初しばらくの間
顔だけのアップショットと
少し内容に???ってなるようなセリフだけで
謎に引き付けてしまう二階堂ふみさんの存在感。
最高です。居るだけで説得力。
あとそれを見越してそういう撮り方した監督!
最高です!(2回目)

久しぶりに良い邦画観ました。
明日はオペラでも観ようかと思います。