感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『Twelfth Night』

2020/04/24
Youtube
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(画像は全て公式Twitter@NTLiveより)




『One Man, Two Guvnors』でスタンリー役の
オリバー・クリスさんがオーシーノ公爵役
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ということで楽しみにしてました。
名前調べた時に、どっかで聞いたことあるな...
って思って、メモを漁ったら、
『Young Marx』のエンゲルス役の人か!
ってビックリしました。マジか。
結構前に、既に観てましたね。
ちょっとスタンリーのインパクトが強すぎてね...。
当分の間、思い出し笑いできます。

今回もまさかオーシーノ公爵の役に
スタンリーにもあった
ちょっと愛すべき阿呆というか馬鹿というか
そういう要素盛り込んできたのは驚きました。

前に、学生演劇で観た『十二夜』では
オーシーノ公爵はいかにも紳士!って感じで
なんかお前ハムレットじゃね?ぐらいに
鬱々としていたので...。
というかその時の『十二夜』は
女の恋心について言い返す時の
ヴァイオラも号泣してたしね...。
多分そういうトーンでやろうって
演出だったんだと思います。

でも個人的には、今回の『十二夜』での、
このぐらい恋愛バカ丸出しの方が(失礼)
お祭り騒ぎのこの劇にはあっている気がします。
普通にやるとただの嫌な奴か高慢ちきな奴に
なっちゃうので、どっちにしろいけ好かない

キャラ設定と、演出が変わると
セリフの意味合いまで大分変化するのも
面白かったです。
あとは戯曲にはないちょっとした相槌とか、
"What!?"の一言だけで爆笑させちゃうのも良い。
行間までが戯曲なんだなあ、と思います。
って言ってもシェイクスピアの英語は
まだまだ厳しいですけど...笑。

最初っからコメディアクセル全開で
オリヴィアに言いよるオーシーノ公爵の
(そもそも車で来て、テディベア片手の段階で
爆笑しました。)

"It had a dying fall."
(絶え入るようなor消え入るような調べだった)

のところで、サックスが
ベターってした薄い音出してたのが最高です。
「絶え入るような、消え入るような」というより
「つまづきそうな」響きです。
出鼻をくじかれた感がある。頑張れ公爵笑。
日本語の戯曲で読んだだけだと、
なんか"うっとりするような静かな調べ"みたいに
読めたので、まさかdyingをそのままdyingで
解釈しちゃうとは...笑。最高です。

十二夜』は賢い道化フェステが
出てくる劇だからか、かなり言葉遊びが多いので
英語がまだまだなのが本当に悔やまれます。
分かるときっと五倍増しで面白のに...。
分かんなくても楽しいのは楽しいですが...。
...勉強頑張...れば...いけるのかな...(´TωT`)

まあ私の英語力は脇に置いておくとして、
全体的な印象としては
B級アメリカ恋愛映画って感じでした。
ディカプリオのロミジュリとか思い出します。NTLiveのシェイクスピアの現代化には
いつもびっくりの連続です。
どうすればこういう雰囲気を思いつくんだ...。
...『Antony and Cleopatra』も凄いですよ...。
(配信してくれるのはすっごい嬉しいんですが
お金払って観た身としては複雑です笑。)

なんでわざわざ場面転換の仕切りにするにしても
階段風のセットなんだろう?って思ったら
後半でわかりましたね。
マルヴォーリオのためか笑笑笑。
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どうすればシェイクスピア作品から
こんなレビューというか、バーレスクというか
そんな演出を思いつくの?
それまでのマルヴォーリオの手紙読むシーンの
CUT(女性器のスラング)とP(peeと同音、
つまり口語で、"おしっこをする"笑)
のところの観客とのやり取りと演出も最高ですが
ここは限界突破して素敵すぎます。最高of最高。

回転舞台を階段の仕切りで
十字?みたいに区切っているので
回ることで場面が絵本みいにパラパラ変わるのも
おとぎ話みたいで可愛い感じでした。

あと演出で大きく言及する点があるとすれば
この執事マルヴォーリオ役ですかね。
タムシン・グレイグさんが演じられてます。
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わざわざ戯曲のセリフをheからherとかに
変更してまでの徹底ぶり...。
Gender-swapped roleって言うらしいです。
マルヴォーリオを女性にしたことで
より対立的な構造がハッキリしていました。

オリヴィアのサイドがほとんど女性だけ。
そしてオーシーノ公爵サイドがほぼ男性のみ。
そしてその両家を行き来する、
男装したヴァイオラ(=シザーリオ)。

ヴァイオラは他のシェイクスピアに出てくる
異性装の女性たち...
『お気に召すまま』のロザリンドとか
ヴェニスの商人』のポーシャみたいに、
女性であるよりも、権利を得て、積極的に、
自由に動けるように男装するヒロインとは
ちょっと意味合いが違います。
どっちかと言うと男装することで、
自分の女性らしさを改めて認識させられ
その事によって葛藤へともつれ込む感じです。
だからヴァイオラが男性と女性の
それぞれの派閥を行き来する様子は、
そのまま彼女の、アイデンティティ
ジェンダーに関する混乱と葛藤を
分かりやすく表現したように思われます。
スッキリしてて見やすくて好きです。
あと単純に女性サイドがカッコイイ笑。
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ヴァイオラの道化フェステも女性です。
めっちゃスタイル抜群過ぎ。
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ヴァイオラサイドに含めていいのかどうか、が
ちょっと怪しいサー・トービーと、
サー・アンドルーの二人は男性のままでしたね。
いい感じの酔っぱらいと馬鹿のバカ騒ぎ。
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そういえばこのおふざけ画像見て
思い出したんですが、
アントーニオとセバスチャンのキス。
日本であの演出だったら面食らいますが、
あれに関しては、英国の文化について
そこまで詳しくないんですが...、
まあキスの文化があるなら
当たり前かなってぐらい、
アントーニオのセバスチャンに対する
敬愛と親愛の情が凄いので
取り立ててビビる演出ではないかな。多分。
(海外の人に聞いてみたいです)
あと確か、なんですが
男性同士のキスって一時期英国で流行った...
らしい的なことを聞いたことがあるので、
(多分若者の間での悪ノリの延長だと...)
まあ、19世紀ぐらいには親友同士とかなら
腕組んで仲良く歩いてた紳士の国なので、
今更キスぐらいでガタガタ言うんじゃねーよ、
ってとこですかね。(言い方)

でも性別関係なくキスシーンは、
やっぱり日本人としては目につきます。
文化の違いって、例え理解と知識があっても
単純な感覚とか感情レベルでは、
払拭できないぐらい刷り込まれてて
面白いなあと思います。

あとはもう、ハムレット弄りが酷いというか笑。
どこにいっても観ますね、ハムレット
演劇5本観れば1本には潜んでそう。
でもまさか彼もバーで流れる曲調の
歌にされるとは思わなかったでしょう!

まあこの最高に面白いバー・ハムレット
は置いておくとしても、
全体的にこの劇の道化フェステが歌う歌って
歌詞の内容も暗いし、曲調も暗いです。

一応『十二夜』は喜劇として分類されます。
ただ、その分類は『ヴェニスの商人』初め
『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』
などなど"暗い喜劇"になりますね。

双子物としては同じ構造の
『間違いの喜劇』なんかとは
ちょっとジャンルが違います。
全員が全員ハッピーエンドになる訳じゃない。

シェイクスピアの喜劇は概ね結婚という形で
幕を閉じますが(これはマジ)
十二夜』にはそこまでに至った
2組のカップルのハッピーエンドの輪から、
ヴェニスの商人』でのシャイロックと同様に、
追い出された人々がいます。
マルヴォーリオを筆頭に、
金を巻き上げられ母国に帰るサー・アンドルー、
(最後の最後らへんで、サー・トービーに
"いつものように"罵られて、
いつも以上に相当ショック受けてました。
お客さんがどよめくぐらい。可哀想。
軽く流すパターンもあるんですが
今回はこっちでした。)
あとはアントーニオと賢い道化フェステかな...
少なくとも今回の演出では4人はいますね。
最後のフェステ自身の歌に合わせて
"お祭り騒ぎの喜劇のその後"を
描いていたのが良かったです。

十二夜』ってクリスマスのお祝いの最後の日
のことなので、この「十二夜」が終わると...、
まあ日本でいうと、"三が日終わって
明日から仕事かよマジ辛い_:(´-`」 ∠):_"の
状態の日なので、ちょっと
ほろ苦い雰囲気のハッピーエンドなのは納得。

あとはシェイクスピアの作品年代見ると
この『十二夜』の前に、おそらく
ハムレット』書き上げてるし、
その後には『オセロー』『リア王
マクベス』と四大悲劇を書き上げてるので
この時のシェイクスピアが多分、
純粋なロマンティック・コメディの気分じゃ
なかったんですかね。憂鬱期的な。
(まあ今は多分世界中が憂鬱期ですね...。)

だからマルヴォーリオが、
復讐を誓った時にカツラを取るのは
「もう、喜劇(を演じるの)はやめた」
っていう意味合いがあるからだと思います。
そもそも結婚から始まる物語は
『オセロー』しかりで悲劇ですし。
映像だとマスカラが涙で落ちたあとまで
くっきり見えるのでいっそう悲惨でした。
(まあ、そこからのオーシーノによる
喜劇への矢印だけの方向転換も笑えました。
お前はこの後に及んで、
まだヴァイオラとセバスチャンを間違えるか笑。
熱烈なキスへのお客さんの反応も
海外ならではで素敵でした。良いなあ)

また、最後のフェステの歌の部分での
マルヴォーリオが雨に打たれるシーンは

"But that's all one, our play is done."
(どうでもいいけど、芝居は終わり)

という歌詞に合わせられているので
やっぱり喜劇が終わった感じがしました。
そしてなんか、復讐の、悲劇が
始まりそうな、予感が、しなくもない...?

この"But that's all one"って表現は
ちらちら色んなところに形を変えて出てきます。
この『Twelfth Night』の副題が
『What You Will(お好きなように)』なので
そことも通じているみたいですが、
恋は気まぐれってのが真意だと思います。
ほんとに気まぐれで
この後悲劇が起きなきゃいいけど...。
マルヴォーリオの復讐ならまだしも浮気とか...。

でもまあ、そんなことは"どうでもよくて"
この劇最高に面白かったです。
シェイクスピア難しそうとか、古典とか
思われているそこのお方!(誰)
まじで爆笑出来ますよ!ほんとに。

日本でもやる時に、このぐらい現代化しちゃえば
とも思うんですが、これは母語だからこそ
出来る芸当のようにも感じます...。
日本でこういう風にやるなら、
多分翻訳から始めないとだめかなあ...。
語尾一つだけで印象が変わる日本語は
面白いけど、だからこそ翻訳問題がデカくなる。
あの"To be or not to be..."だけで
えげつないぐらい翻訳パターンあるし...。

ちなみにいちばん古いのは
『ザ・ジャパン・パンチ』っていう雑誌の訳。

「アリマス アリマセン、アレハナンデスカ
モシ モット ダイジョブ アタマ ナカ
イタイ アリマス...」

...いや、観てみたいですけどね!?
全編こういう『ハムレット』!?!
てかハムレットだけがこういう『ハムレット』!
そりゃあ皆"アイツやべえ"ってなるよね!??
てか『天保十二年のシェイクスピア』で
ちょっと観たしね?!!?

...話があらぬ方向に飛んできたので、
そろそろ終わろうかと思います笑。
早く『ハンニバル』の感想も纏めないと。
それにミュージカルもオペラも待ってる...。
新国立劇場の戯曲もあるし...。
歌舞伎はちょっと諦めてます。ごめん。
歌舞伎座開いたらちゃんと幕見で行くので...。
(一体全体"ちゃんと"とは)

COVID-19のせいで
NTLiveがタダで観られて
嬉しいやら悲しいやらの毎日です。
『Frankenstein』も5000円(学割)払って
両バージョン観たけど、楽しみにしてるよ(泣)
天才をやらせたら、それこそ"天才"の
ベネディクト・カンバーバッチですが
怪物役の理解不能の恐怖も凄いです。
ジョニー・リー・ミラー
野性味溢れるカッコイイ怪物も
マッドサイエンティスト感満載の博士も最高。

でも前にも書いたけど(『Jane Eyre』の感想)
えのき型シャンデリアが1番いい。
ここは譲らない。もうえのきとしか見えない。
ドカーンってピカピカ光るの早く観たいです。