感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『美少年』と『御披楽喜』

2020/04/29
Youtube
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名前だけ聞いたことあったんですけど
柿喰う客の公演、初めて観ました。
しかも初めてがオンラインになるとは...。
なんか『天邪鬼』と『露出狂』も
期間限定(5/6まで?)で配信してるらしいので
気力と体力があったら観ます...。
いや、ほんとにね『Frankenstein』2本に、
グローブ座のやつに、stratfestでしょ...。
新国立劇場の戯曲に、バレエに...
下手すりゃまたアンドリュー・ロイド・ウェバー
のミュージカルが週末限定で配信かな?
しかもまだ明後日までのオペラ1本観てない。
正直死にそう。でも頑張る。

で、なんで二個纏めての感想かというと、
(断じて怠けている訳では無いと思いたい)
話が繋がっているみたいです。この二作品。
でも先に『御披楽喜』観ちゃって、
そしたらその中で『美少年』の宣伝されて笑。
正直、どういう演出!?って思いました笑。

二つ揃って、話の内容そのものに
目を見張るような独自性があると言うよりは
上演形態そのもののほうに、
どちらかというと面白さがあったと思います。
内容に関しては二作品とも、
美と芸術とそれらの永遠性に関して悩む、
という内容を、短いエピソードの連続で
一つの主筋に纏めあげてました。

ただどちらも神話ベースになっていたのは、
興味深かったです。しかも西洋の神話。
こんなに現代ゴリ押しの演劇!なのに、
未だに骨格は神話からでもつくられるって、
いや、あらためて神話すげえってなりました。
具体的に指摘すると、13という数字への拘りと
あからさまなギリシア神話からの引用です。
(ゼウスとガニュメデスとかとか)

それにしても本当に、
ものすごいスピードで話しますね!滑舌ヤバい。
とても日本語とは思えないです。
英語みたいなスピードです。
しかと、それに合わせてものすごい勢いで
場面が展開していくし、
役も入れ替わっていきます。
衣装も髪も変えていないのに
全然違う人に見える瞬間は、
どんな舞台を何回観ても驚きます。
(ここは『美少年』の方がわかりやすい)

そのスパークするようなエネルギーだけで、
舞台を埋めている感じがしました。だからか、
多分セットも邪魔なんでしょうね。ほぼ無し。
あまりにもチカチカするような速さなので
神経回路を回るぐっちゃぐちゃの混乱した思考が
そのまま舞台上にある感じがするような、
そんな瞬間がありました。
妙な論理とか言語フィルターを通っていない
電気信号ともおもえるような思考の断片。
でも、その印象が、言葉漬けと比喩漬けと、
あと『御披楽喜』に関しては
美術の知識漬けのセリフから生まれているのが
とてと矛盾していて面白かったです。
(美術関連のセリフ何とか全部わかったのは
多分世界史のおかげ。ありがとう高校世界史)

あと、セットがない分、割と照明が凝ってるな
と思いました。特に『御披楽喜』の方。
毒々しい色合いの照明が、次々と切り替わるのは
ちょっと禍々しい感じもしました。
照明の切り替わりが起きることで、
漫画のコマみたいに場面が分かれる印象もあり
色合いとスピード感と相まって、
昭和とかの劇画タッチ風の漫画を実写化すると
こんな感じかなあ、と思いました。
最終的には、ゼミ生のうちの一人が書いた
漫画の話の中に世界観が流れ込むので、
話の内容ともあっている気がしました。

時々入るメタシアター的なセリフには
唐十郎とかを彷彿とさせるものが
ありましたが、どちらかというとそれよりも
もっと観客から"ハッ!"ていうような
冷ややかな笑いを誘う感じがしました。
多分、明らかにメソッド法とか言われる
スタニスラフスキー考案の演技の正統とかから
意図的に足を踏み外したような演技技法に
原因があると思います。
あんなに虚構じみた発声だと、
恐らく、観客が心底登場人物に同情することは
まず無いといってもいいと思います。
だから、結構、倫理や道徳ボーダーギリギリの
ブラックな話をしていても滑稽さが残る。
これは道徳批判、社会批判を
かなりしやすい形だなと思いました。
アングラの発展系というか。
何を言っても、全てが
コメディエンタメの中に飲み込まれていく感じ。
あんまり観たことない感じで嫌いじゃないです。
その意味では講談とか落語とかにも近いかも。

ただやっぱりこの独特のハイスピードに
ついて行くには、観客にも慣れが必要ですね。
言葉のリズムも面白くて
斉唱になるとほんとに日本語?ってなるぐらい
音符としてしか聞き取れないです。
『美少年』の方は少人数なので
なんとか普通に観ることが出来たんですが、
『御披楽喜』は13人?ぐらいで一気に増えるので
なかなか"言葉の意味"への集中が保てない。
こちらの意識が弛緩すると、
話を見失ってしまいそうになります。
音楽のないダンス的な要素もかなり多くて
こっちが集中しないと、間の抜けた感じにも
見えなくもないので、なかなか疲れる演劇です。
(個人的に、バレエとかでも音楽消すと、
何やってんだ?この集団?って馬鹿馬鹿しくなる
ような感じに似ていると思います)

まあ、生で観れば、意味なんかわかんなくても
十二分に楽しいとは思うんですが、
なんせオンラインなので...。
コロナウイルス治まったら観に行ってみたいです。