感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『The Metamorphosis』(The Royal Ballet)

2020/05/01
Youtube
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『Frankenstein』観たい欲を、
なんとか制御してこっちを観ました。
どうせ観るなら両バージョン同じ日に観たい。
この間映画館で観た時も昼夜でいきました。
明日歯医者から帰ってきたらStayhomeで観ます。

というわけでありがとうロイヤル・バレエ団。
まさかカフカの『変身』を
フルで観られるとは思わなかったです。
短い抜粋は前観たことあったんですが、
それだけだとなんかスカトロジーの極み(酷い)
みたいにしかみえなかったので...。

小説を舞踊で表現するって
とんでもないことやってるんですが
本当に、カフカの原作の、
ちょっとコミカルでグロテスクで
でもきちんとまとまった...
なんというかneatとかtidyって単語がぴったりな
あの感じが表現されていると思いました。

グレゴールの部屋が病室みたいに真っ白で
ものすごく潔癖で几帳面な印象があるし、
日常と労働の繰り返しのシーンは
ダンサーだからこそできる
機械的な動きが、その単調な感じを
効果的に表しているように思いました。
でもその時の音楽は短調気味なのに、
裏拍のどことなくリズミカルな感じで
クスッとなってしまうような滑稽さもあります。
個人的な印象だと、推理ドラマとかで探偵が
街の中を証拠集めに(無駄に)歩き回るシーンで
使われそうな音楽。ニヤニヤしちゃいます。

ただ、重低音の長い音がずっと響いてるので
不安な感じは消えないです。
何か起こるぞ...の不安さがあります。
日常の単調な繰り返しの中に、
確かに平穏な幸せがあるんだろうけれど
なんとなくみんなしかめっ面で苦しそうです。
グレゴールの妹だけは、よく分かっておらず
溌剌としていますが、毎日兄の帰りを喜ぶ様が
いっそ機械仕掛けの人形かよ!レベルで
気味が悪いです。めっちゃ美人で可愛いけど。

まあ、その退屈な機械じみた毎日に
風穴をどかんと開けるのが
グレゴールの虫への変身ですね。
でも実際のところ、風穴が空くのは
ほとんど一瞬で、すぐにそれも日常と化し、
後に残るは稼ぎ頭を失ったという
現実的な金銭問題ばかり、
っていうのはさすが"不条理"だと思います。
人間が馬鹿でかい虫になったのに、
ひとしきりあたふたしたあと
"生活費どうしよっか!?やべえじゃん!!"
ってなんだそりゃ。馬鹿馬鹿しい笑。
"Absurd"とはよく定義したと思います。

因みに"Metamorphosis"って"完全なる変化"
って定義されるので、なるほどってなりました。
...人間から虫...確かに...やばい...。

いやでもまさか本当に人間が虫になるとは...。
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人間の手なのか足なのか訳分からなくなる瞬間が
何回もありました。多足にしか見えない。
足の指が長いからってのもあるかもです。

ダンサーの体って、特にバレエダンサーとかは
ほんとに同じ人間ですか?って
疑いたくなるぐらい男女問わず筋肉質で、
無駄が削ぎ落とされているので、
骨とか皮膚の裏にある筋肉とか
めっちゃ分かるんですよ。
その体に薄暗い照明を当てて
落ちる影を利用して、その質感を強調し
虫のイメージに昇華させているのは
空いた口が塞がらないぐらいビビりました。
やばい普通にでかい虫にしか見えない!

特に白い部屋の壁に影絵になっているのは、
体の輪郭線だけのただの黒い形なので、
まじで虫...まじ無理...。
(虫がいなけりゃ世の中極楽と思うぐらい
嫌いです。ほんと無理。辛すぎる。
映画とかでも出るとギエッてなります。
せめて女子らしくキャーッて言いたい。
でもそういうのに限って面白い。酷すぎる)

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最初は普通の部屋だったんですが
こういう風にセットごと傾けることによって
原作にもあるように
家具の間を這い回るというか...
...あの虫ならではの...色んなところ
ほんとに色んなところ...壁とか...隙間とか...
電気のかさの裏にひっそりといるような...
...寝る前に気づいて大乱闘...(一昨日です)

とにかく壁にいる時なんか、もう虫!
虫以外の何物でもない!
ちょっと最近の虫との個人的な大乱闘もあって
気持ち悪さが倍増してます。
でも動きとかはため息出るぐらい美しいので
脳内軽くパニックです。
テロテロ黒光りというか茶光りしてるのも
東京とかに多いヤツ(幸いまだ見たことない)
を連想するレベルで嫌悪感があるんですが、
なんか、妙に...セクシャル...なんですけど...?。

...あれか、なんにせよ、濡れた男と女は
イイ男と女になるってあれか?!




...舞踊って...いいよね...(思考放棄)( ¯꒳¯ )




あと、グレゴールが虫になったばっかりの時、
自分の体を何とかコントロールしていく様を
全身なんか黒光りする分身を登場させて
その分身とシンクロしながら踊ることによって
表現するとは思わなかったです。
体の、まだ、他人みたいなそれぞれのパーツを、
徐々に自分の意識と一体化させていく感じがして
美術様式の意味においても、また単に
「気味が悪い」という意味でもでグロテスク!

というか全編通して
幻想的で奇怪で、でもどこかに滑稽さもあるので
"grotesque"の全ての意味を包括する作品...かも。
不思議の国のアリス』も
一応分類的にはグロテスク作品なので、
グロテスクの奥は深すぎます。
まだぼんやりとしか分からないグロテスク...。
でもグロテスクは結構好きです。
最初にじたばたした『Frankenstein』も
グロテスクですね。早く観たい。

ただ、最後グレゴールが自ら窓から去るのは
かなり劇的な表現だなと思いました。
原作だとただ普通に部屋で死んでるはずだけど、
自らの意思で出ていったふうに見せることで、
自らの運命を受けいれたような、という意味で
悲劇的な終わりとして成立させています。
でも、何回も触れたように
見ようによっちゃ喜劇的な原作なので、
ここは好みが分かれそうです。
ただ原作通りの終わり方で、
劇として成立しするか?って考えると
こっちの方が高揚感があっていいと思います。

あと、悲劇に方向定めたために、
家族に訴えかけるグレゴールの無言の視線が
思っていた以上に哀しくて切実な色合いで、
なんか観ていて苦しくなりました。
見た目が変わっただけでこんなにも
扱いに差が出るのか...みたいな感じ。

でもカーテンコールでのグレゴール役の
エドワード・ワトソンさんが、
"えっ、誰この人??"(失礼すぎる)
ってなるぐらい、なんか...なんというか...
...へにゃんってした感じの人だったので
(上手い言葉が見つかりませんでした。)
"いやすげえな逆に"ってなりました。
どっから引っ張り出してきたんでしょう。
あのグレゴールの切迫した雰囲気。謎すぎる。

こういうことがたまに起こるので
何気にカーテンコールはいつも楽しみです。
3回ぐらいやると、人によっては
2回目、3回目、下手すると最後まで
かなり役が残ってたりする方がいて
ニヤニヤしながら毎回見てます。
映画とかでも、最近エンドロールの後に
なんか色々後日談的なあれが入ったりするので
エンドロールは最後まで見る派です!(唐突)

いやでも『変身』最高でした。
気持ち悪かったけど、それ以上に感動です。

そして『Frankenstein』は明日観る...絶対...
観なきゃ死ねない...てか死んでも観る...
Creation(怪物)に負けないぐらい、
地の果てまで追ってでも観る...。

だから今日はとりあえずstratfestの
シェイクスピア作品を消化する...。
読んだことないけど...『コリオレイナス』...。

色々な団体が色々な作品を
アップしてくれるのは嬉しすぎるんですが
もったいない根性もってるやつにとっては
アップしすぎだよ!って全世界に叫びたい。
1日1個って世界劇場連盟(そんなものはない)
とかで決めて専用Youtubeチャンネル作ろ?
そしていい機会だから今後も続けよ?
年会費1万までなら払うから...
いや、2万くらいならギリ...。
でも、出来ればタダがいいなあ...。
寄付みたいな感じでさ...。
どうせ日本から寄付できないし...。
オンライン授業の準備も始めなきゃなので
なんだかんだで、かなり忙しいです。