感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『The Tempest』

2020/05/15
Youtube
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(画像は全て公式Twitter@stratfestから)



シェイクスピアの戯曲に関しては
まだ全読破できてないんですが、
それでも『テンペスト』は
かなり上位にランクインするレベルで好きです。
多分、もともとハリポタとかの
ファンタジー大好き人間なので、
魔法とか出てくるのが好きなんだと思います。
大仕掛けの魔法のシーンは圧巻でした。
ディズニーかよって感じ。

舞台セットも本当に魔法的...といういか、
マジカルってカタカタの方がしっくりくるかな。
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ちょっとこの魔法のシーンの画像だけだと
フランスのキャバレー感も無くはないんですが、
それ以外のシーンが、ほぼ木と床だけの
『なにもない空間』で演じられるので、
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より一層こういうシーンが夢幻的になります。
左がプロスペローで右がキャリバンです。
キャリバンの特殊メイクが凄い。
フランケンシュタイン』越えかも...。
背中に細かい角みたいなのとかも生えてて
ちょっと気持ち悪いぐらいです。

あと、まさかまさかのプロスペローが女性!
Martha Henryさんだそうです。
気品と迫力がありました。さすが女王。
あととにかく声が遠くまで響きます。いい声...。
いい声ってだけで、なんかもう役者として
正直勝ち組な気がします笑。
いい声で言われると説得力が増す気がします。
聞かざるをえないというか。

あと、なんとなくの印象なんですが、
こういう風にプロスペローが女性だと、
植民地問題とか、支配・非支配とかいった
この劇が含む社会的な問題性が
ちょっと和らぐ気がします。
あとは、植民地に関連して
野蛮と文明の対立もあるかもしれないです。
名前からしてもそんな感じがします。

プロスペロー→proper(繁栄)
キャリバン→おそらくカニバリズムカニ
(原住民の印象からカリビアンかもしれない)

こういう風に結構色々な問題を
ふんだんに含んでいる劇なんですが、
そういうことを、そこまで抉り出すようには
突きつけてこない、というか。

プロスペローの"復讐を遂げてやる"っていう
ちょっと異常なぐらいの激情と、
そこから、一転してころっと全てを赦す
心の柔らかさは、確かにステレオタイプ的に
女の人っぽいなあ、とは思わなくはないけど、
実際に女性がやると、
ここまでイメージが変わるかって感じです。

多分、どうしても女性に対しては、
男性と比べると、(アマゾネスでもない限り)
肉体的に非力な印象があるので、
男性がすると、"わーひどい"ってなることも、
"まあ物理的に力弱いしなあ..."
"やられてる方もやり返せなくもない..."って
何となく同情みたいなものが入るからかな、
なんて考えたりもしました。

でもそもそもプロスペローはかなり高齢だし、
魔法使いに肉体的に勝とうとするのが
まずもってちょっとありえないので、
あんまりそこは関係ないのかな...。
なんでこんなに和らいだ印象なんだろう...。
謎ですね。演出の意図もあるかもしれない。

ところで、なんですが、『テンペスト』はよく
シェイクスピア最後の作品って言われてて、
しかも終わり方が結構独特なんです。
詳しく書くと面倒くさいんだけれど、
ざっくり書くと、人気絶頂期のアイドルが
"普通の女の子に戻ります!"って
コンサート終わりにマイク置く感じに近いです。
それで、最後の作品ってこともあってか、
シェイクスピア=プロスペローなんじゃない?
って言われたりもします。
というか学術的にはほとんど確定事項かも笑。

そういう予備のちょっとした知識があると
プロスペローが舞台より一段高いところで、
本とかを捲りながら、目下にある舞台を
チラチラ眺めていたり、茶々を入れたりすると、
物語が彼女の手中で転がってる感じがして、
本当にこの劇作品を作り上げている
演出家みたいだな、と感じました。

さらに脱線すると、プロスペローは
確かに魔法使いなんですが、
実は、実際に魔法をいっぱい使うのは
エアリエルっていうプロスペローに仕える
(多分名前的に)風の精霊です。

つまり、プロスペローが道筋をつけて、
それにそって行動を起こすのはエアリエル...。
ざっくりとした指示はプロスペローで
頑張って現実にするのはエアリエル...。

...そしてシェイクスピアには複数人説がある...。
...プロスペロー=シェイクスピアだとすると、
ゴーストライター(笑)エアリエルは
一体誰なんでしょう!?

みたいにトンデモ妄想を膨らませて
楽しんだりしても面白いと思います。



まあ、そのトンデモ妄想は一旦忘れるとして
最後の最後にプロスペローが
エアリエルに手を伸ばすような演出も
シェイクスピア=プロスペローって考えると
結構印象的なシーンだと思います。

そろそろ引退したいなあ、みたいに思ってる
シェイクスピアが、お客さんにその旨伝えて、
"赦しを乞う"て、退場する訳なんですが、
その退場の道すがらは、つまり
全ての肩の荷がおりて自由な状態に
なっているわけです。
ちょうどその時に、"どこでも飛んでいける"
風の精エアリエルと手を取り合う演出なので
なんだか観てるこっちまで、
"お疲れ様!"って言いたくなっちゃいます。

ちょっと理由付けするならば、
プロスペローにはすごく有名なセリフがあって

"We are such stuff as dreams are made on,
and our little life is rounded with a sleep."
(我々自身は夢と同じものでつくられてて、
そのちっぽけな人生は眠りの中と同じだ)

これですね。訳はざっくりだけど笑。

そしてシェイクスピアといえばこのセリフ!
『お気に召すまま』のジェイクイズのやつ。

"All the world's a stage,
And all the men and women merely players."
(この世は舞台、人は皆役者)

これだけで考えるのは浅いかもしれないけど、
レポートじゃないので良しとします笑。

つまり、シェイクスピアにとっては、
舞台こそが生きた強い実感伴う"この世"で、
そこから離れた普通の人生、つまり日常は
(もっと正確に言うと、
舞台であることをやめたような日常)
マクベスが言うように、全てを癒す眠り、
だったのかなあ、と思います。

だから、プロスペローの退場は
"そろそろ疲れたし、舞台からは引っ込んで
ちょっと眠るね"、的な感じがします。
シェイクスピアはきっと多忙だったろうし、
プロスペローにしても劇中ほぼ出ずっぱりだし。
そういう人が、ある意味では
夢の世界の住人である精霊と
手と手を取り合おうとしてるのを、
とめられる奴は人間じゃねえ。(言い方)
道徳の授業を一限から五限まで受けてくれば
いいと思います。(にっこり)

まあ、劇全体の話としても
"I do forgive thee"、要は、赦しの劇なんですが
観客から引退する作者に対する赦しの劇でも
あったのかもしれないな、って感じです。

そういうメタ的なあれやこれや含めて
テンペスト』は大好きなので
観られて良かったなと思います。
とくに酔っぱらいとキャリバンのシーンは
最高すぎる。あの歌はノらざるを得ない笑。

あとすごく関係ないけど、ミランダ役の方が
えげつないぐらい可愛い。どストライク!
しかもこの間の『コリオレイナス』で
コリオレイナスとオーフィディアス役の方が
セバスチャンとアントーニオ役でびっくり。
しかも王子は『マクベス』のマルカムじゃね?

...同じプロジェクト観続けると
出てくるあるあるですね。混乱します笑。

明日は1日かけてNTLiveを観る予定です。
オンラインだけど大学が始まって、
時間が足りない足りない笑。
もったいない精神で頑張ります└( 'ω' )┘