感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『Timon of Athen』

2020/05/24
Youtube
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(画像は公式Twitter@stratfestから)




なんかもう何がどうしてこうなった、
ってビジュアルですよね。マジでびっくり。
確かに政治系が絡むシェイクスピア劇は
かなり現代化しやすいとはいえ、
富裕層が遊びまくるクラブみたいなところで
話が展開していくとは思いませんでした。

正直、あらすじだけ理解して、
あとは雰囲気で観たので、
話の細かい展開はよくわかんないんですが、
ここまで主人公に同情できない
悲劇(主役が死ぬという、そこだけに限定)
ってあんまり観ないですね...。
コリオレイナスにも話が少し似てるけど...。
あれはそもそもコリオレイナス
なんだかんだで英雄って一面もあるし、
一応はお母さんに譲歩したりなんかして、
まだ、"性格に難アリだけど
凄いやつじゃん"って
なんとか同情の余地があるんですが...。

ここまで全人類を呪い通したキャラって
シェイクスピアの劇に他にいるか...?
ハムレットですらホレイショーは
信頼してたのに...。

ってぐらいの剣幕です。後半が。
前半の気前のいいおっちゃんどこいった。

多分、タイモンに同情できないのは、
彼の裏切られたっていう負の感情が、
全て外側にしか行ってないからなんですよね。
"あいつら、俺を裏切った!
呪ってやる!死ね!"みたいに。
もっとざっくり言うと、
多分この人、少しも反省してません。
マクベスみたいに、ビビったりしてくれれば
ちょっとは可哀想とも思えるような、
気がしないでもないのに...。
彼のことをまだ大事に思ってくれる人に対しても
ただただ拒絶を示し、呪い続けるので、
なんか観てるこっちまで軽蔑されてるみたいで
正直あんまりいい気持ちはしません。

ただ、これがもし悲劇、だとするならば、
かなり現代的な悲劇だと思います。
お金とか、社会とか、人間性
これでもか、という程に否定しまくるので。
それこそ不条理劇にほとんど合致するぐらい。
(没落した後に、タイモンが偶然にも、
金を発見して、それを求めて、
また人々が群がるという構図も、
どこかabsurd馬鹿馬鹿しい印象があります。)

例えばの話ですが、タイモン自身が

"忠告に耳を貸さなかった"

という反省点を見つけられれば、その後悔が
彼の狂気的なまでの怒りや憎しみを
少しは柔らげてくれたのかもしれないんですが、
(言葉はほとんど理解出来なかったけど)
観た感じ最後までその雰囲気はなかったですね。
というか、もしそうだったとすると、
リア王』みたいにちゃんと同情できる
普通の悲劇になってたかもしれないです。
でも外側への強烈な感情の発露が
この劇のひとつの魅力にも見えなくもないので
難しいところだと思います。

"Here lie I, Timon, who, alive,
all living men did hate,
pass by and curse thy fill
but pass and stay not here thy gait."
(ここに眠るは、タイモン。
生きてる間、全ての人から嫌われた。
お前たちの求めるもの全てに
呪いの言葉をはいてやる。
しかし決してここに留まりはしない。)

まあだいたいこんな意味...なのかな。
これが墓碑に刻まれてるってなかなか壮絶です。
強烈なまでにエネルギッシュな憎悪。
"貫き通す"ということではとても劇的だし、
ちょっと孤高っぽくてカッコ良ささえ感じます。

じゃあ好きな劇か?の言われたら、
それはちょっとノーコメントということで笑。
せめて戯曲読んで、内容を9割理解してから
判断したいと思います笑。
図書館いつ開くのかなあ...。
そろそろ限界が近い自粛生活です。