感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『鏡冠者』

2020/06/05
Youtube
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(画像は公式Twitter@SetagayaTheatreから)



最初は普通に

"なんとかして主人の目と神様の目を盗んで
御神酒たらふく呑んでやるぜ。てか絶対呑む"

的な普通のよく見る狂言だったんですが
なんか途中から、太郎冠者(野村萬斎さん)が
型じゃなくて普通の演技っぽいのしだしたので
"んんん?気のせい?"ってなって観てたら、
新作狂言かこれ。なるほど。

鏡の中の自分と入れ替わってしまうという
"双子もの"の変化球ですね。
"双子もの"はギリシア・ローマの古典古代から
古今東西人気のテーマでもあるので、
息が長い作品群というか...

"みんなアイデンティティ問題大好きだね!?"

って感じです。

なんとなく『まちがいの狂言』思い出すけど、
どちらかと言うとブラックユーモアか
夏の怪談系に分類されそうな怖さがあります。

太郎冠者は、鏡から出てきた
自分の鏡像くん(面かけてる)と
向かい合って舞うんですが、
1回目は、鏡像くんが太郎冠者を真似て、
2回目は、太郎冠者が鏡像くんを追う形なのが、
コンマ何秒かの動きの差で
ちゃんと伝わるのが何気に面白いです。

で、くるっと180度
お互いの立場を入れ替えた時点で
個人的には"あっ何これまじホラーじゃん"
ってなって『月見座頭』並に笑えません。

最後の鏡像くんの高笑いがマジで怖いわ。
(そしてここでの太郎冠者は
ほんとに狂言かよ?!レベルの演技してる笑
なんかもうここからは狂言の格好した現代劇)

橋がかりも上手下手に2本あるのに、
どっちも照明がふって落ちて
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(例によってスマホでパソコンを撮影)
暗い舞台に丸く落ちた照明の所に
(鏡は丸鏡だった。鏡の中ということだろう)
太郎冠者はどこにも行けず
ぽつーんと取り残されています。

"身共は、はて、いづくへまいればよかろうぞ"

多分どっちにも行けないし、
てかなんかこのセリフ含みあってやだな...。
フリーターとかニートの方とか
将来決めかねてる大学生とか(私)
聞いたら、地の底までめり込みそう...。
"そんなのこっちが知りたいよ"って感じですよね。





…ってしみじみ、"なかなか面白いじゃん..."って
謎に上から目線で観てたんですけど

最後....!最後が.....!!
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オーマイゴッドとはまさにこのこと。
照明が丸いだけで確実に伝わるのに、
鏡の中に閉じ込められるのを見せちゃうという
完全な蛇足....!個人の見解です笑

能楽って引き算の芸術じゃなかったっけ...?
確かにこういうの付けると
最後に不条理から引き戻されて、
古典に戻れるといえば戻れるけど、
新作狂言なんだから不条理のまま
完全なオチはない状態でも
良かったような気もします。

まあ、なにはともあれ残るは一作品。
ギリギリ観られるぜ。やった。
というわけで観たらまた感想書きます。