感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

Coriolanus『コリオレイナス』

2020/06/06
Youtube
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(画像は全て公式Twitter@NationalTheatreから)



トム・ヒドルストンさんが主演で
マーク・ゲイティスさんがメニーニアスという
エンタメ性が限界突破で溢れまくってる
キャスティングだったんですが、

(というか、ブチ切れたコリオレイナス
宥めるメニーニアスが、どう頑張っても
マイクロフトに重なって見える笑。解せぬ。)

コリオレイナスのシャワーシーンはあるわ、
オーフィディアスとのキスシーンはあるわ、

あるわあるわの連続でした笑。
リップサービスが凄かったです。(違う)

シャワーシーンに関しては、
少なくとも日本人からすると
シャワーってよりほぼ完璧に打たせ湯だけど....笑
でもちょっとかなり痛そうです。てかしみそう。
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野村萬斎さんの『オイディプス王』が
血糊の量の限界突破だと思ってたら、
ここにもいたか限界突破!って感じです。
いい加減血糊の成分が気になってきました。
なんであんなにスルッと落ちるんでしょうか。

まあ理科的な面はおいておくとしても、
最後のシーンなんかも、オーフィディアスが
コリオレイナスを逆さに吊るして
首や腹をざっくり裂いていたので、
なかなかに視覚的に訴えてくるタイプのやつでした。
そういう意味でもエンタメ性が高い。

で、その死んだコリオレイナスから滴る
オーフィディアスが下で浴びるという、
"R規制下手するとかかるよね?"レベルの
トンデモ表現でした笑。

実は、中盤でコリオレイナスがシャワーして
を流したあと、舞台セットはそのままに
(つまり下に混じりの水が残ってる)
場面だけオーフィディアス陣営に変わって、
オーフィディアスがその血水で顔を洗う?
みたいな表現がありました。

多分それの回収だとは思うんですが...

これは、羨望と嫉妬かな....?
憧れと嫉妬と憎しみと愛情が全部
ごちゃごちゃになってるような感じがします。
相手の一部を刷り込むことで
そのものと同化したそうにもみえなくもない。

この場合オーフィディアスがコリオレイナスに、
ってことになりますが...。
...だったらキスぐらいするか。
舌突っ込まなかったのが謎なレベルです。
やっぱ文字通りのリップサービスってよりは
ちゃんと演出でした。驚き損ですね笑。

最初の演出もなかなか好きでした。
赤い線で四角の囲みを子供が引くんですが、
まあ、部屋の壁とかとして使うのは
簡単に予想できるのでそれは良いとして、
アスファルトじみた床に引かれるので、
なんかちょっとプロレスのリングみたいです。

実際貴賎問わず論争・戦争入り交じる劇なので
"おーなるほど"って思いました。
キャパが251人とそこそこの小劇場で
舞台自体も小さめなので
コンパクトながら対立感や焦燥感を
煽るようなこの演出は好きです。
そう考えると、演者が脇に椅子待機してるのも、
リング入り前のボクサーにも見えます。

実際にオーフィディアスとコリオレイナス
初めて戦争中にエンカウントした時、
最終的に両者剣を投げ捨てて
取っ組み合いの大立ち回りだったので、
あながちプロレスってのも間違いではないかな...。

演者が座ってた椅子も見事に利用してました。
椅子を塹壕や足場や前方隊の盾とかにみたて、
プラス砂埃と、上からの火柱(消防法!?)
でガチで戦場でした。
上からのバゴーンって火花がくるのは、
小さめではあったんですがなかなかの迫力。
この間観た『コリオレイナス』は
子供の遊びで戦争を表現してたので、
きっと戦争の場面は、見せるor見せないの
せめぎあいポイントなんだな、と思いました。
プロジェクションマッピングを使って、
舞台後方の壁に市民の声を
投影するのも面白かったです。
もっと現代風にするなら
TwitterとかSNS風でも良かったかも笑。


コリオレイナス』は、たまにザコン
なんて呼ばれたりするんですが、
(というか私がそう信じて疑わない笑)

"...he did it to please his mother and to be proud."
(...彼=コリオレイナスはお母さんを喜ばせて
自尊心を満足させるためだけに
それ=国の利益になる行いをするんだ)
※たしか市民のセリフ

"If my son were my husband..."
(もし、私の息子が私の夫だったら...)
コリオレイナスの母ヴォラムニアのセリフ

なんかもう冒頭付近のこの2つだけで
あっちゃーって感じですよね。どんまい嫁。
コリオレイナスの嫁(妻)といえば、
この間のStratfestの『コリオレイナス』は
母>>>>>(越えられない壁)>嫁
ぐらいのパワーバランスだったんですが、
今回は母<嫁ぐらいに逆転してました。
嫁のキレ方が凄い。

だから最後らへんのヴォラムニアが
コリオレイナスを説得するシーンも、
なんとなくお涙頂戴的で
"これは好み分かれるぞ..."と思いました。
そんな訳でなかなかに全体的にシリアス多め。

コリオレイナスの説得のために
家族総出でオーフィディアス陣営にやってきて
家族と再会したコリオレイナス
母国ローマを攻める決心が揺らいだのか

"Like a dull actor now, I have forgot my part."
(下手くそな役者みたいだ、
まるで役を忘れたような)

コリオレイナスがこんなことを言うんですが、
ここもやろうと思えばメタ発言として
笑いが取れなくもないんですけど、
主な説得者母ヴォラムニアの悲壮感が
半端ないので、笑いは無しです。

ただ、強烈な母に言い負かされる、っていう
そういう感じは薄れるので、
その意味でザコンも薄れます。
そういうわかりやすいテーマというよりは
"戦争から遂に日常に戻りきれなかった男が
戦争から手を引いた瞬間に死んでしまった"
みたいなものが感じられました。

"争っているコリオレイナスこそが、
最高にかっこよくて高潔だったのに..."

みたいなオーフィディアスの声が聞こえそう笑。

コリオレイナスがかなり若い俳優さんなのも
若さゆえの直情さ、頑固さ、潔癖さ
感じられるので、彼の普通ではありえない
突飛な行動も、受け入れやすいといえば
かなり受け入れやすいと思います。

あ、若いといえばメニーニアスも、
かなり若めですよね...。お偉いさんなので
もっとおじいちゃんのイメージがあります。

あと、護民官のシシニアスが女性になってて、
同じ護民官のブルータスと恋愛関係にあったのも
なかなか面白いなとは思うんですが、
なんとなく必然性が思いつきませんでした。
政治劇のドロドロ感は、男女関係持ち込むと
増すような気がしなくもないですが、
それにしてはシシニアスの色気がない。(失礼)
でも、この劇では唯一コミカルなペアなので
なんだかんだで好きです。この2人。




...それにしても...反発覚悟で書きますが...
かなり映画っぽい演技...ですね...。
ほとんど皆さん、アクションシーン以外
上半身しか(すら)動かない...。

"イギリス人俳優は首から上で演技する"

って皮肉を思い出しちゃいました...。
(朗唱などを重視する、って意味もあります)

コリオレイナスが票集めの時に、
民衆に媚び売るようなことを言う場面で、
歯の浮きそうに、口だけ滑るような感じで
早口で捲し立てながら票もぎ取るのとかは
結構動きがあって良かったし、
酷い癇癪持ちのようなイメージが
どうしても付きまとうコリオレイナス像だけど、
それから脱するように、
囁くような息遣いのセリフ回しから
ヒシヒシと伝わる怒りとかは、
かっこいいなあ、とは思ったんですが...。

...如何せん、パソコン画面越しなもんで...。
小劇場と言う場所が持つ
俳優が観客に直接語りかけるような緊密さと、
大劇場ではほとんど不可能に近い
声を張り上げなくても聞こえて、
大袈裟に動かなくても表情でわかる、
そういう感じは嫌いじゃないんですが、
どうしてもその場にいないと、
あまりにも自然すぎて寝そうになります...。

テンポもシェイクスピアによく感じるような、
でかいフラフープがゴロゴロ転がって

"もうスピード超過だけど、とめらんないよ!"

みたいな異常なテンポ感ではなかったんですが、
今書いたみたいに、自然な...
あえて悪くいえば棒立ちの演技が多かったので
演出が視覚的に面白い割には、
俳優自体はそこまで視覚的に面白くない...
というまさかの自体が起きてます。
空間が狭いのでしょうがないのは
しょうがないんですが…。

メニーニアスがお腹ポコポコ叩きながら、
例え話をしたりするシーンとかは
そういう点では、良かったんだけど、
なんだかんだで決定的なシーン、例えば、
コリオレイナスに"Away!"って言われた時とかは、
やっぱり主に表情で演技されてたので...
いや、めっちゃ上手いのはわかるんですが、

えーっと、つまり何が言いたいかと言うと、

"生で観せて、頼むから!"

特に政治劇だと、生で観てると、
自分がまるで民衆になったみたいに感じるので...。
それがないのが辛すぎる...。

せめて映画館で観たかったけど、
大人のあれやこれやの権利関係で
もう上映がかなり厳しいらしいので、
観られただけでも御の字とします...(›´ω`‹ )