感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

A View from the Bridge『橋からの眺め』

2020/08/03
シネ・リーブル池袋
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予定組んでたから気づいた。
これ、今日明日とアーサー・ミラー祭りやん。
おう...ヘビー。超ヘビー。

この話もどんな話かと思ったら、
移民問題と近親相姦(叔父と姪)を
ミックスさせんなや...。
というか正確にはミックスしてないで、
どぎゃーんって衝突しちゃってるし...。
相変わらずすっごい面白いですね!(逆ギレ)

最初ブラックボックスみたいに、
舞台がでかい箱に入ってるみたいに見えるの
ちょっとテンション上がりました。
そういえば今の劇場って
ブラックボックスシアターって
言ったりもするけど...。関係ないか。

しかも、なんかレクイエムかかってるし。
あれなんのレクイエム?
てかレクイエムでいいよね?多分。

しかもセットはほとんど無くて、
白い正方形型の舞台に、
出入口の穴がひとつという潔さ。
ただ舞台がガラスで足元囲われてたので、
なんか液体系ぶちまけんだろうな、とは
思ってたんですけど、の雨なんて聞いてない。
ホラーじゃん。めっちゃかっこいいけど!
上から降ってくるので軽く泡立ってるのが
余計に悲惨というか...。
それまでセットらしいセットも、
あからさまな演出!っていうのもないので、
かーなーりービビりました。

ところで、今回はコーラス役がいました。
イタリア系アメリカ人...でいいのかな。
とにかく25年アメリカにいる弁護士さん。
アルフィエーリだっけ。なんかそんな名前。

何がどうして、「『橋』からの『眺め』」なの?
って結構謎だったんですけど、
この弁護士さんが「橋」だったぽいっすね。
単純な二項対立にしてもいいのかは
ちょっぴり疑問なんですが、
イタリアの決闘とかアル・カポネとか、
そういうイメージのいわゆるちょっと古い法と、
アメリカの法治国家的な法、
あるいは両国の文化的な価値観、
そういう両方に足かけてるから「橋」なんだなあ、と。
んで、特定されてるから"the Bridge"

"A View"なのは多分、
いくつもある事件のなかの"1つ"っていう、
そんな意味合いなんじゃないかなあ、と。

自然法Natural Law)的なことを語る
そういうセリフもあったので、
その法が定める自然から逸脱するような、
要は常軌を逸したとも思える、
エディ(マーク・ストロング)の異常な、
それでも純粋な真っ直ぐさを、
自然の"流れ"に逆らうものとして危険視しつつ、
どっか愛しく思っちゃうんだよなあ、
って感じで話が終わってました。
最後らへんにセリフ引用してます。

この"流れ"とか言う単語、
劇の途中でぶっ込んでくるのほんとやらしい!
橋の上に立ってる弁護士が、
川が流れているのを、
家族の悲劇がどうしようもなく進むのを
ただ上から眺めてる....
みたいなイメージが湧いちゃうじゃん!
天才かよ!好き!(突然の告白

そういう傍観する立ち位置の人が、
コーラス役って...うわあカンペキ。
一部の隙もないとはまさにこの事。

まあだから音立てるのも躊躇われるぐらい、
えっぐい緊張感・緊迫感・緊密感なんですけど。
アーサー・ミラーの作品、
いっそ三緊劇って呼んでやろうか(ダメです)
毎回毎回切れちゃいそうなピアノ線みたいで、
観てるこっちが疲れます笑。

地謡のない能に近いような、
それかチェーホフをあえて
すっごくゆっくり読んでるみたいな
めちゃくちゃ静かな奇妙なシーンが
真ん中らへんにひとつあって。
なんか舞台全体に家族全員...
エディと妻、姪のキャサリン
イタリアからの移民の兄弟2人(マルコとロドルフォ)
それぞれ奇妙な距離感で、
変に間を開けながらポツポツしゃべる、
みたいな形で進行する部分とか、

"OMG、イヴォ・ヴァン・ホーヴェさん
天才ですか、そうなんですね了解っす"

ってこれまたアホ全開の感想抱きました。
何故か笑いが起きてしまうような、
緊張感って凄くないですか?!
変な木魚みたいな一定のリズムを
心拍音みたいに刻むだけの音楽が
不思議と効果的でビックリしました。
シンプルイズベストですね。
でも感覚としてはエッシャーのだまし絵を
じっくり見てるあの感じに近い。

あと各々役者陣の目付きが怖い。
マーク・ストロングさんが特にやばい。
殺られる。あれは殺られる。
逃げてロドルフォ(キャサリンの恋人)
超逃げて。まだ間に合うから。
名前にストロング入ってて多分勝てないから。
あと単純にマッチョすぎて怖いから!
ブロンドの優男ロドルフォに勝ち目なし。
どんまいロドルフォ。(酷い)

あと、確かこのシーンの最後だったと
思う...んですが...(もう一回は観に行けぬ)

"Can you lift this chair?"
(この椅子持てる?)

ってマルコがエディに
椅子を足だけから持ち上げる方法を教え、
あのちょっと宗教画的に静止したシーン、
正直何が何だかいまいち理解出来てないけど、
なんか感動したのを覚えてます。
エディがマルコの弟ロドルフォを
遊びと称して殴った後だったから、
マルコがエディをそのまま
殴り殺すのかと思ってヒヤッともしたかも。
最後結結局ぶっ殺すので、
単純に見ればその感じなのかな...?
んーでもなんかもうちょい深いような...。
今度戯曲読も...。

あ、そういえば全員基本裸足だったのも、
何となく謎といえば謎。
弁護士も一応登場人物としての時とか、
わざわざ脱いでたもんね...。
なんだろ、日本だと裸足だと結構意味深だけど、
海外だとどうなるんだ...?
あ、でもリチャード二世、ロンドン塔だと
裸足か...え、でも演出家さん、英国の方では
別にないし...ん...?謎。

印象に残ったセリフは
"私はいつ妻に戻れるの?"っていうやつかな。
エディの妻のセリフなんだけど、
多分セックスレスとか言うやつだよね。
なんか遠回しなのが逆にざっくり来る感じ。
なかなかに抉られました。

あとは大流血の決闘が終わって、
コーラスの弁護士のセリフかな。

"Most of the time we settle for half
and I like it better. Even as I know
how wrong he was, and his death
useless, I tremble, for I confess that
something perversely pure calls to me
from his memory—not purely good,
but himself purely And yet, it is better
to settle for half, it must be! And so
I mourn him—I admit it—with a certain alarm.
"
(大体の場合、程々で決着をつけます
私もその方がいいと思います。
勿論、彼が間違ってることも、彼の死が
全然意味の無いことも分かっていて、
それでも、私は心が震えました。
というのも、実を言えば彼に関する記憶が、
何か、逆に、純粋なものを私に思いおこさせる、
そんな感じがするからです。
純粋にいいことではありませんでした、でも
彼自身は純粋だったんです。
それでも、まあ、程々が良いでしょう
そうあるべきなのです。
彼を亡くして寂しいのは確かですが、
これはやっぱり警告でもあるのです)
こんな感じ...だったと思う...。多分...。
エイゴデキルヨウニナリタイ...。

なんか、弁護士の引き裂かれた、だと
ちょっと表現強いか、えーと、
間違ってるんだけど、"程々"であることに
頑として良しとしなかったエディを
なんとなく良いなあ、と思っちゃう、っていう
しんみりした感じが伝わってきて、
"あるよねえ、そういうこと"って思いました。

あとこの最後のモノローグが
要らん要素に見えないようにする
そこまでの演出が凄い。
だって、後ろ、大惨事(大流血)ですからね。
マーク・ストロングさんのみならず、
全員だらけですからね。
正直そこで終わってもいいんだけど、
独白があっても良いなと思わせるのが凄い。

今回はなんか、演出が凄かったですね。
役者さんの演技が普通にレベル高いのは
もう言うまでもないんですけど。
アーサー・ミラーのやつって、
なんか全体的に演出にかかってくる気がする...。

手に汗握る会話劇、最高でした。
とか書いてるんですけど、
実は今さっき『赤鬼』観てきたばっかで...。
真逆過ぎてパニックだよ。か。
一日で180度違う演劇観ました。
予定組んだ自分を褒めてあげたいような、
貶してあげたいような...。(-_-)