感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

Skylight『スカイライト』

2020/08/08
シネ・リーブル池袋
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『スカイライト』自体は
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(2018/12/24、新国立劇場

実は観たことあったんですよ(ドヤ)
クリスマス・イブに1人観劇してたのは
まあ脇に置いておくとして、
今回NTLiveの『スカイライト』を観て
まず思ったのが、

"なにこれこんなに爆笑したっけ??!"

全然違う劇でした。声漏れるかと思った。
てか多分漏れてたかも。

言葉のアクロバット劇、っていうのは
日本語も英語も変わらなかったんですが、

("Listen to what happens now."
「なにが起こるか聞いてね」って
作者のデイビット・ヘアさんが
インターバルのインタビューで言ってたし。
もともと劇は"聞くもの"だったことを
差し引いても、やっぱ、言葉が面白かった笑)

特に、英語のスピード感と
発音による緩急強弱の付け方は
そこだけで独特のユーモアのニュアンスが出て
日本語完敗です。これはしゃあない。

エドワードなんかもかなり
若めの俳優さんなのに、すっごく鼻に付く
お坊ちゃんのボディランゲージが上手くて
もうなんか喋ってるだけでウケる(褒めてます)

しかもトム役のビル・ナイさんが、
これまたすんごく上手い...。
なにあの妙にカチンと来るけど
憎めないお金持ちで皮肉屋の富裕層....。

そしてキラ役のキャリー・マリガンさん
めっちゃキュートかよ。かんわいい。
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かわいい...(2度目)
可愛いくせしてすごくアクティブな演技...。

社会を保つための仕事をしてるキラと
(例えば、先生とか、ソーシャルワーカーとか)
社会を大きく動かす仕事をしてるトム
(例えば、政治家とか実業家とか)
そういう人たちの立場の違いによる
決定的な価値観の違いによって、
元恋人同士がどうしようもなくすれ違う
(しかも不倫関係でした。おうふ)
っていうなかなかにシリアスが凄い内容ですが、
会話のユーモアの応酬が秀逸で
いつもシリアスがクラッシュして
シリアルになってます。でもやっぱり
どっかちょっとシリアスで面白すぎる。

お気に入りなのはトムがエドワードについて
描写するセリフ(正確には覚えてない。無念)

"あいつには会話って概念がないんだ、
現代男子テニスと同じさ。ラリーはなし。
最初のサーブで点を取って終わり"

言葉で、しかも日本語で書くと
そんなでもないけど、これを
皮肉たっぷりに上手な役者さんが言うともう...
お腹いたいよ笑笑笑笑最高すぎる笑笑笑。

しかもちょっと現代っ子の問題まで
つついてるみたいで最高のユーモアです。

息子エドワードは実はそんなに出番なくて、
最初と、最後にちらっと出てくるだけです。
でも最初に息子のシーンがあるから、
キラとトムがどんな状況にあるかを
観客は知らず知らずに知ることになるし、
絶賛親子喧嘩中なのに、その後訪れる父親が
どのくらい息子似ているかとかで、
結構笑いの仕込みになってます。
例えばキラの部屋訪れるお土産に
エドワードはビールを持ってきて、
トムはウイスキー...とか。
観客だけは知ってるので笑えます笑。

こういう認知のズレの笑いが
結構そのあとも効いてきて面白かったです。
ほんと秀逸な室内会話劇。

それにしても、キラがトムに向かって、

"あんたらお偉いさんはあたし達が
どんな大変で大事な仕事をしているのか、
よく知りもしないで批判ばっかり、
見下してばっかりよね!文句あんなら、
やってみなさいよ!!"

"Come and join us!"
って言う時の啖呵の切り方が最高で。
観客もそうだそうだの拍手でした。
わかる。あれはスカッとする。
ちょっとトムが(´・ω・`)ってなってて、
可哀想でしたが笑。そういえば
"Self pity of the rich(お金持ちの自己憐憫)"
って単語も初めて聞きました。
凄い言葉だな。改めて書くと。

まあ、トムはトムでトムの価値観でしか
物事を考えられてないので、
悪いとは思うんですが、
自分の価値観でしか物事を考えられてないのは
キラも一緒といえば一緒なので、
一概にどっちがパワー的にマウント取ってる、
と簡単に言えない状況なのが、
こういう微妙な関係性を生み出してるのかな、
と思います。

結局よりを戻すのは無理で

"It's too late and you know it."
(遅すぎるのよ、知ってるでしょ?)

ってキラが言ったすぐあとに
静かな中にブザーが切り裂くように鳴るのが
ちょっと悲しいといえば悲しかったかな。

しかも外に、コンクリートの明かりが
ぼやあってなってる夜の寒い町が
常にチラチラ見えているので、
そこにトムが出ていくがっくり感が凄いです。
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あ、そういえば、日本語のやつだと
多分演出なんだと思うんですが、
最後にエドワードが持ってくる朝食の
テーブルの上に飾る花が
いんですよね。

劇中でトムがアリス(妻)に
求婚する時に送った花もかったので、
なんか最後にい花が飾られていると、
もしかしたらキラとトムワンチャンあんのか?
ってなるんですが、
今回は白い花だったので、特にそういう
含みはなかったように思います。
割と完全に関係を清算しきったというか。

だからなんか、日本語のやつよりも、
ある意味ではサッパリしてたし、
ある意味ではちょっと悲しかったです。

...というか、不倫の末の男女のすったもんだ、
(しかも3人は3人ともお互いを大事に思う
っていうめちゃくちゃ奇妙な関係性)
なんて大学生に完全に理解出来るわけ、
ないような...無理じゃね...。
『フォリーズ』に引き続き、
人生経験豊富な方がより楽しめる劇ですね。
あとイギリスの社会状況に、
ある程度慣れ親しんでないと、
んん?ってなる部分が結構あるかも...。

ただそんなのはどうでも良く
キャストも戯曲も演習もどれも秀逸なので
観てよかったと思います。

そしてまだ『ジュリアス・シーザー』の
感想書いてないけど、
今日は『嘆きの王冠』の『ヘンリー五世』。
トムヒさんを大画面で観てきます。
フォルスタッフがいないのが寂しいけど...。