感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『リチャード三世』

2020/08/13
シネ・リーブル池袋
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つ!い!に!コンプリート
夏休みの目標1個達成です。
もう1個はNTLiveのアンコールをコンプリート。
まだまだ頑張ります笑。

ところでさすが日本で大人気のカンバーバッチ。
(名前、ファーストもファミリーどっちも
長いので敬称略でいいよね。本音:めんどい)

満席だよ!?すごいね?!
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ちょっとトイレに行ってた隙に売り切れでした。
まあ『リチャード三世』そのものが
シェイクスピアの中でも人気ですし。

...知ってる...?リンカーンとかそういう
めっちゃすごくてえらい人よりも、
ジャック・ザ・リッパーとかの方が
本として書かれてる数って多いんだよ...??

みんな悪党大好きだよね。私も好きです。
しかも"villain"って形容されるレベルの悪党は
突き抜けてて寧ろ一周まわってかっこいい。

『リチャード三世』もセリフが特にカッコよくて
好きなセリフがわりと多いです。
でもリチャード三世自体は
結構面白くてかっこ悪くてキモイと思う笑。

(キモイけど、突き抜けてるから
またそこがかっこよくもあるという堂々巡り)

だって最後らへんに、マーガレット妃の
娘を婚約者として貰おうと話持ちかけるけど、
年齢的に完全にロリコンだよ笑笑。
お兄ちゃんの奥さんの娘()貰おうとするとか、
犯罪の香りしかしない笑笑笑笑。

あと、個人的にベスト・オブ・キモイシーン
アンを口説く冒頭のやつです。
この間の『ヘンリー六世』のラストで
宣言してたみたいに、ほとんど嘘泣きまでして
口説き落としてて結構笑いました。最高。
でもアンってリチャードがぶっ殺した夫の
未亡人にあたる人なので、当然口説かれたら
"はぁ?!"ってブチ切れますよね。
だから、戯曲にもあるように、アンは
リチャードに、唾を豪快に吐くんですけど、
その顔にかかった唾を手で拭くまでは、
まあ良しとしようじゃないか。(上から)
でも、その手をなんとなくそのまま
口元に持っていくなよリチャード笑笑笑

伺うような、見上げるような、
そんな視線と姿勢と相まって
気色悪さが増幅しかしてない笑笑笑。
好きな子のリコーダー舐めちゃうあれかよ、
と謎のツッコミまで思いつきました。
(でもリチャードが本当にアンのことが
好きだったのかどうかはかなり謎。
丁々発止でお互いやり取りしてるので
性格の相性は良さそうだけど)

演出なのか演技なのかはわかんないけど、
こういうのいいと思います。好き笑笑。

全体の演出のキーになってたのは、
チェスの演出かな。
前に学生演劇の『ハムレット』でも
monsa-sm.hatenablog.com
将棋ベースの演出は見たことあるけど、
まあなんかそんな感じです。

『リチャード三世』って

"Now is the winter of our discontent
Made glorious summer by this sun of York...
"
(今や我らが不満の冬は去り
ヨーク家のサン=太陽、同音でson、息子
によって眩いばかりの夏が訪れた...)

っていう出だしの、日本人にとっての
平家物語』とか『枕草子』とかの出だしぐらい
英国とかだと有名な独白があるんですけど、
その続きに、

"I am determined to prove a villain
And hate the idle pleasures of these days.
Plots have I laid...
"
(決めたぞ!俺は悪党になってやる。
だらしない快楽という快楽を憎んでやる。
そこで、俺の筋書きはこうだ...)

っていうこれまたかっちょいい(死語かな)
セリフがあるんですけど、
これがほんとに出だしのセリフな上に、
この後、劇がこの"Plots"通りに進みます。
(少なくとも中盤すぎぐらいまで)
あんまり小気味よくリチャード三世の
思い通りに進むので、
映画冒頭にこのセリフ喋りながら、
ついでにせむしの身体(CG?メイク?)を
これでもかと見せつけながら、
チェス盤いじってると、
なんていうか、ゲーム感覚になります。
王冠とるための。
結構ものすごい勢いで、色んな人が
処刑されていくので、映画でやると、
"展開早過ぎない?"ってなるかな、なんて
思ってたりもしたんですが、
チェス盤の駒をコンコン倒してるだけ、
っていうイメージがついたので全然大丈夫。
相変わらず巧みな演出で最高かよ。

あ、相変わらずなのはカメラ目線もです。
リチャード三世(まだグロスター公だけど)
ほんとハムレットといい勝負だろ、
っていうかどっちかというとイアーゴーかな、
なんかそのぐらい独白が多いので、
それ全部カメラ目線でやられると、
なんか追跡ドキュメンタリー番組みたいで
謎に笑いが込み上げてきます。
よくコメディ映画とかで使う手法じゃないこれ?
特にミュージカル系とか。
カメラに向かって本音話しながら、
流れるように劇中に戻るのが、
想像してたより面白い雰囲気になってました。
マスクの下でニヤニヤとまらない笑。

クラレンス公(お兄ちゃん)の暗殺を
企てるセリフも結構すきなんですが、

"Simple, plain Clarence! I do love thee so,
That I will shortly send thy soul to heaven
"
(単純で率直なクラレンス!大好きだよ、
だから急いで天国に送ってあげるね)

ってこの日本語の語尾みたいにキャピッと
言わないでカンバーバッチ笑笑。
ちょっと吹いちゃったじゃないか。
語尾に❤見えそうだったよやめて笑。

その後極秘暗殺を下手人にスムーズに頼んだ後、
カメラを見て"うまいだろ?"ばりに
眉毛あげるのまじアメリカンです(英国だけど)

そんなリチャードが劇中で何回か

"俺ってすぐ顔に出ちゃうだろ、
お世辞とかも上手く言えないし..."

って周りに向かって自分を卑下するみたいに
いう場面があるんですが、まじで
どの口が言ってんだよ笑笑笑笑笑
笑いこらえすぎて過呼吸シェイクスピア天才。

上手いことリチャードが、
愉快な仲間たち(バッキンガム公とか)と一緒に
市民をだまくらかして王様になるために、
教会で祈りをしてるように見せ掛けたりなど
一芝居打つ時の、くっそわざとらしい
苦悩の演技とかも最高でした。
こういう演技上手い人が、劇中の話の都合上、
敢えてちょっと下手な演技しなきゃダメ、とか、
劇中劇でわざとらしいことしやきゃダメなやつは、
何回観ても笑えます。

でもこのシーンで、なかよしこよしの
バッキンガムとリチャードの決裂が
暗示されてたりもして凄いなあと思いました。
教会のドアの中に最後リチャードが
見事王様になって消えていくんですけど、
何故かさっきまでしたり顔だったお仲間の
バッキンガムはお外に取り残されたまま。
顔から、すっと笑いも消えるので、
"あ、この2人これからちょっと仲悪そう"
ってなんとなく思います。
まあ、冒頭にマーガレット元王妃の
予言みたいなのでも言われてたので決定打、
ってとこですかね。

このマーガレット元王妃の予言?呪い?、
これまた結構最初(まだエドワード四世生きてる)
のところにあって演出がホラー映画でした。

小さな鏡を各々に見せつけながら
呪いの言葉を吐きまくるんですけど、
(相変わらずすごい迫力の
ソフィー・オコネドさん。目だけで殺られそう)
その鏡を覗き込むと、各々の"その後"が
写真みたいなショットで、すごい高速で
切り替わる、みたいなことになってました。

これよく映画とかでは透視とか、
フラッシュバックとかで使う手法じゃん。
リチャード三世、死体ちょい出てるし。
まじホラー。

しかもその後その手鏡わざと落として、
割るので、なんとなく『リチャード二世』とも
繋がるような気もしました。
まあ、最後の締めのやつだしね。
最初に繋がるようにすると王冠の〇形、
綺麗に閉じられるもんね。

"Let's talk of graves..."
(墓の話をしよう...)

で始まった『嘆きの王冠』でしたが、
最後は
・倒れたチェスの黒い駒
・穴にホロコースト並に突っ込まれる兵士の死体
・大量の死体の真ん中に立ち尽くすマーガレット
で終わってたので、「墓」で終わってた....
でいいのかな、多分。

戦場自体が大きな墓場みたいにも見えたし、
全部の駒が倒れて空っぽになったチェス盤、
なんてのも想像ささりました。
マーガレットは元王妃で、クイーンでは
もうないので「立ってる」んですかね。
とにかくめちゃくちゃ演出凝ってます。最高。
ただチェスの知識がほぼ皆無なので。
倒れてた黒い駒がキングだったのか、
ポーンだったのか、とかがわかんなくて残念。
機会があったら確認してみたいです。

そういえば最初の方で、
"ゲーム感覚で、駒倒すみたいに
人がどんどん処刑されてく"
みたいな事書いたんですけど、
そのせいなのか、そうじゃないのかは
ちょっと分かりませんが、今回は、
処刑シーンをとにかく"直接見せない"
ってところに拘ってたと思います。

床に広がるを映したり、
処刑をロンドン塔から眺める王子達を映したり、
とにかく意地でも見せない笑笑笑笑。

1番好きだったのは、
リヴァーズとグレイかな、この2人が
ギロチンみたいに首落とされる!
って瞬間があるんですが、いよいよって時、
何故かワインを杯いっぱいに注ぐ
リチャードの手のショットになりました。
しかもリチャードそれを一気飲み。
めっちゃかっこいいかよ。
色んな人達の=ワイン
(とんでもなくキリスト教的ですね)
「吸血鬼」みたいに飲み干して
ここまで来たってあれですか。
(どっかに「吸血鬼」ってセリフあります。
王子達を心配するセリフであったかと)

かっこよすぎて語彙力低下...好き...。

あ、リチャード三世の手と言えば、
指輪でチェス盤をコツコツ叩く音も
いい音響効果になってました。
ただでさえ偉い人がたてるコツコツ音って
足でも指でも杖でも冷や汗もんですが笑。
王子達の暗殺をならず者に頼んだ後に、
ちょっとコツコツ音のテンポがゆっくりに
なるんですけど、死神の時計の秒針音かよ、
って突っ込みたくなりました。

でもちょっとだけ、
"映画でも面白いけど、これはやっぱり
舞台でやった方が5倍面白いかな..."
ってなったのは第5幕第3場、Bosworth Fieldの
(日本語ではタイトルどうなってるんだろ...)
リチャード三世に亡霊たちが

"…despair, and die!"
(絶望して死ね!)

って呪いの言葉をかけるところです。
特に若い王子達の亡霊が、
子供独特の高い声を揃えて言う時なんか、
完全に『シャイニング』の姉妹じゃん。
あとは冒頭に出たような鏡に、
リチャード三世の姿がうつらなかったりとか...。
すんません、なんのホラー映画ですか?
ってちょっとなっちゃいました。
面白くなかった訳では無いんですど、
ちょっとチープな感じもしなくはなくて、
好みの問題かな、と思います。

でもその後にリチャード三世が起きて、
またカメラ目線の独白があるんですけど、

"My conscience hath a thousand several tongues,
And every tongue brings in a several tale,
And every tale condemns me for a villain....

...(中略)...
...And if I die, no soul shall pity me:
Nay, wherefore should they, since that I myself
Find in myself no pity to myself?
"
俺の良心は何千もの舌で、
その舌で持って、いくつかの物語を語り、
その物語のどれもが俺を悪党だと責めるだろう。
.....
そして仮に、だ。俺が死んだとしても、
悲しむものは全くいないだろう。
当たり前だ、俺だって、俺が死んだところで
少しも悲しくないからな。)

なんだこのカッコよすぎるセリフ、
っていう感想はひとまず置いておいて、
この「良心」、一応"My"とはついてるけど、
カメラ目線で語られると、
観客がもしかするとその"My conscience"で、
"この芝居観てるお前らは
俺のこと悪党っていうけどよ..."
って言ってるように聞こえて、
めっちゃ最高でした。しんどい(語彙力が来い)
それにしても、第3幕第4場で

"Tellest thou me of 'ifs'? Thou art a traitor"
(俺に向かって「もし」だと?この裏切り者)

ってヘイスティングスに向かって言ってた
リチャードが「仮に」なんて、
これもう完全に死亡フラグじゃん。
無意識レベルで心折れかけてる証拠じゃん。
まあ死ぬんだけどね。うん。

でも出陣前の

"If not to heaven, then hand in hand to hell."
(天国に行けないなら、一緒に地獄へ行くぞ!)

っていうリチャード三世の掛け声は
やっぱりイケメンすぎる。シェイクスピアやばい。
まあ泥まみれで戦って負けるので
カッコイイけどダサいというカオスですが。
"Like to a chaos"(『ヘンリー六世』)
って言ってたけどここでフラグ回収しなくても笑。

でも、裏で色々コソコソやって、
ジメジメ暗い陰湿な雰囲気の画面の中に
ずっとリチャード三世はいたので、
(服も装飾はギラギラだけど暗色)
そりゃ正当な息子(sonsun)が照らす
明るい画面の戦場に出ちゃったら
吸血鬼」みたいにジュッ!って焼け死ぬわな。
最後に殺される時もそういえば、
なんか杭みたいに武器を胸に突っ込まれて
いたようないなかったような...。
考えすぎかな。

あ、画面このぐらいまで明るかったです。
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映画内で虹は出てなかったけど、観終わった帰りに
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ガチで空にはでてました。何のニアミス。
「コンプリートお疲れ様虹」でした。

あと上手く文中に組み込めなかったけど、
若い王子役の2人の子役の方が
ちょっと引くぐらい上手い。
カンバーバッチ演じるリチャードとの言い合いで、
スムーズに引けを取らず劇を進行させる
10歳前後って何者。
あとジュディ・ディンチさん演じる
リチャードのお母さんと、リチャードの
火花の散らしあいが怖すぎて鳥肌なんだけど。
精神病んでる時に観たらちょっと泣いちゃうよ。
そんなに尺はないけど心底ビビりました。

ひとまず『嘆きの王冠』を
無事コンプリートできて満足です!
あとカンバーバッチさん(敬称復活)
やっぱすごいね、怪演だね!!
さすがリチャード三世に血縁関係近いだけあるね!
もうNTLiveで舞台で今度やんない?
そして映画館で流して。お金払って観に行くから。

あと、このリチャード三世、
"俺はモテる顔じゃない"とかなんとか
ほざいてますが、本気出したらいけるって!
身体不格好でもいけるって!
「セクシーな俳優」「イケメン俳優」とか
なんとかかんとかに選ばれてるくせに
何言ってんだこいつ、っていうのは
映画&演劇あるあるなので、無視です無視。
あ、あと少女漫画でもあるか。
まあ少女漫画は置いといたにしても、
だいたい演技演出メイク照明....(あとわかんない)
その他諸々総力あげてキモくしてるので大丈夫。
今回もちゃんと"うへえ... (ドン引き)"って
思えたので超最高でした笑笑。