感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

Frankenstein『フランケンシュタイン』(カンバーバッチ博士version)

2020/08/20
シネ・リーブル池袋
monsa-sm.hatenablog.com




なんも書くことないからもういいや!
って若干投げやりな気持ちで観に行ったら、
やっぱり色々発見があって、正直
"嘘だろ"って感じです。

というか過去記事に書いてあった違和感
みたいなのがようやくスッキリしたというか。
なんかそんな感じです。

ベネディクト・カンバーバッチの方が
流石というかなんというか...。
観客とのパイプが太い、舞台慣れした人独特の
余裕みたいなのを感じます。
映像だと二人揃ってほぼ遜色ないとは思う...。
ただ、こういうタイプの違う俳優だから...」

みたいなこと最後にこの時は書いてたんですが
(上から目線過ぎて読んでて腹立つね
でもJLMさんも上手いんだよ???みたいに
読み直して思うことがたまにあって、
(名前は相変わらずイニシャルで。ほんと長い)
なんなんだろう...?ってなってたんです笑。

多分なんだけど、この主演2人、
演技の得意分野が違うんじゃないかな?
素人目だけど。こちとら演技なんてしたことないけど笑。

BCさんの方が
「動かしているようにみせる」演技が
JLMさんの方が
「動いちゃってるようにみせる」演技が
多分得意なのかなあ...と思いました。

「動かしているようにみせる」っていうのは、
一挙手一投足が、まるで意識の
コントロール下にあるように見えるって感じで、
身体の周りの空気が少し重くなる感じです。
能とか近いかも。イメージ的にだけど。
でも、重いってよりはなんか、ねばねば?
もったり?上手く言えないけどそんなんです。
コントロール下にあるってことは、静と動、
緩急の変化が結構激しめで、悪くいえば
シアトリカル(芝居がかってる)」。

「動いちゃってるようにみせる」っていうのは、
ほんとに「動いちゃってる」わけではなくて、
ちゃんと意識して動かしてはいるんだけど、
それがほとんど自然にしかみえないっていう、
そういう感じのやつです。多分リアリズムかな。
人間の身体って、普通「動いちゃう」ので。
観ていて突っかかる部分がないくらい
「受け入れやすい」演技だけど、悪くいえば
「特徴がそこまでない」。
(あくまで今回この劇の中だけで比較すると、
って条件付きだけど)

BCさんが博士で、JLMさんが怪物の方が
なんか色々しっくりくるのは、
多分こういうのがあるからかな、と思いました。

コントロールするってことは、
身のこなしが小綺麗ってことになるから、
貴族階級とかやってくれた方がしっくりくるし、
(ものすごく鼻につく感じとか笑)
常にコントロールする「意識」が
感じられるのでインテリとか似合います。

怪物はうまれたての赤ん坊みたいに
劇の最初で描写されているので、
やっぱりまだ上手く自分の身体を制御出来なくて、
「動いちゃってる」ようにみえる方が、
なんとなく親近感が湧きます。

これ逆にすると、特に怪物の方が怖いことに...。
うまれたて赤ん坊のはずなのに、どうしても
コントロールする部分が見え隠れすると、
「自分の身体が元通り動くか確認してる」
みたいな雰囲気が、やっぱどっかに出るし、
知能の高さが最初からえぐいことになるので、
「封印してた魔王解放しちゃった、やべー」
みたいな、中々デンジャラスな感じに...笑。

逆バージョンの方がゴシックホラー感強めなのは
多分そのためかな、と勝手に思いました。
嫌いじゃないけど、こっちのバージョンの方が
やっぱり好きです。

怪物メインの話なので、怪物に共感出来た方が、
割と展開激しく変わっていくのにも、
すんなりついて行きやすいって言うのもあるし、
後半になって博士と怪物が交錯していくのも、
ハッキリと見てとれるからです。

特に、女の怪物を造る辺りから、
それ以前と少し変わって、
博士の身体が徐々にコントロール下から
外れて見える部分の割合が増えて、
逆に怪物の方が、不必要に「動いちゃってる」
部分の割合がだんだん減ってくるので...。

あと、この辺りから、更に
博士はセリフを噛みだします。
噛むって言うか、どもる?
最初の怪物みたいだな、と思うし、
実際、エリザベスが殺されたあたりで、
博士のお父さんが

"He is monstrous!"
(なんて恐ろしい子なんだ)

って博士に向かって"monster(怪物)"の
形容詞版の"monstrous"って言っちゃってるし。

最期の北極近くのシーンなんて、
もっと分かりやすくて、
怪物が回転舞台の上に
"ほとんど直立不動"で立ってるんです。
ちょっとしたコーラス役みたいなレベルで。
博士は後からガタガタ震えながら、
もうほとんど力尽きてとにかく
身体ボロッボロで出てくるので
身体性が反転してて、面白いです。

"The son becomes the father.
The master, the slave.
"
(息子が父に、主人が奴隷に)

なるみたいに反転してるんです。
カッコよすぎかよ、やばい!(語彙力)

こういう、徐々に2つの役が交錯する時、
もともとの得意な演技と、
役のベースの段階として求められる身体性が
一致している方が、軸がひとつに定まるので、
"あ、なんか交わってきたな"っていうのが、
分かりやすいので安心して観れます。

逆になっちゃうと、

Aが得意なのに、Bとして最初やって、
後にAに少しだけ戻る

っていうとんでもなく面倒くさいことになるし、
(これはこれで重層化してて嫌いではない)
どうしてもBやってるときに、
Aの部分が雰囲気見え隠れして感じられて、
最初から交わってるようにすらみえるので、
あまり変化って変化が感じられなかった...
ような気が...しなくもない...
(だんだん喪失する自信)

過去記事の文章に関しては、
個人的に能楽とか結構好きなので、多分
BCさんの演技の方がどちらかというと
好みだったからこんな書き方になったのかな...。
「わざとらしい」ってかなり言葉悪いけど、
「みせつける余裕がある」ってことになって、
狂言とかが分かりやすいのかな多分)
その「余裕」が舞台だと笑いに繋がることが
結構多いかな、ってのが実感としてあるので、
ここまで来るとほんとに好みの問題ですね。

むしろ映画とかだとリアリズム重視の傾向なので、
おそらくJLMさんに軍配があがるのかな...?
でも映像作品になってくると、
正直監督が最高だと、どんなに
"あっちゃー"な俳優さんでも、(言い方)
めっちゃ最高になったりするので、
正直舞台より演技の上手い下手の判断が
めちゃくちゃムズい気がします。
じゃあ舞台での演技の判断お前出来んのかよ、
って突っ込まれると押し黙るしかないので、
そこはもう許してくださいほんとに...。

まあ、それとは関係なく今度とりあえず
『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』
を観ようとは思ってますが...。

...てかBCさんが「普通の自然な」人物を
映画とかで演じてるのあんまり観たことない...かも...。

(大体、変人か天才か頭おかしいヤバいやつ、
ばっかりなのは気の所為なのか...。)

あ、『僕が星になる前に』は
普通といえば普通なんですかね...。
でもあれは映画自体がちょっとあんまり
好みじゃなかったので...。
(最初のCGで爆笑しそうになった)

なんか話がズレてきたので軌道修正します笑。
主演2人だけじゃなくて、周りの役者さんの
テンションもこっちのバージョンの方が
アゲアゲなので、やっぱこっちのが好きです。

ただ博士と怪物が取り引きするとき、

"Seal the bargain."
(取引だ)

のとこかな。あそこで握手離す時に、
怪物の方が博士の手のひらに自分の手のひらを
つーっとそわせて離れていくので、
(どっちのバージョンでやってました)

"だったらやっぱ最初の膜の時にも、
BC怪物版みたいにお手手を強調しろよ!"

って軽く心の中でキレてました。疲れてるのかな。

あと"影絵と鏡は増幅効果あるなー"
っていうのが今回改めてぼんやり思ったことです。
あの、蒸気機関車の労働シーンです。
後ろに結構ウヨウヨ影絵があって、
実際舞台に上がってる以上にいるように見えた...。

こんなとこかなあ...。
流石にもうこれ以上は、感想書くこと
しばらくないよね『フランケンシュタイン』。
こんなに書いておきながら、
あの有名な映画を観てないってかなり問題なので、
時間作って今度アマプラで観ようと思います。

明日は『夏の夜の夢』
大画面で観るのは初めてなので(Youtubeで観た)
今から結構楽しみです。