感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

野田秀樹の『真夏の夜の夢』

2020/10/31
東京芸術劇場 Playhouse
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この前ニコラス・ハイトナー演出の最高すぎる
NTLiveの『夏の夜の夢』を観たので、
monsa-sm.hatenablog.com

まあそんなに期待しないで、鈴木杏さんを見に行こう
みたいな感じで行ったら、割と最高だったです(日本語)

全体的にフランスのキャバレーみたいな
ギラギラした電気的な妖しさが全開の舞台で、
とにかく照明、衣裳、装置、配置、動きの
どこをとってもきれいとしか言いようのない感じでした。
つまるところ演出が最高!
頑張って入国してくれてこんな舞台やってくれて
もはや感謝しかないです。完全に五体投地案件。

それにしてもNiziUの『Make you happy』を
余興相談のところで踊ったりとか、
演出家決めのところで蜷川さんをいじるのとかがあって、
(確かに灰皿投げてるけど笑)

こういうの取り入れるなんて外国の方なのに
凄いというかなんというかめっちゃ面白かったです。

あ、結局演出家になったのは
割り当てる役がそもそもないメフィストフェレス
だったんですけど、なんか、彼のメイクが
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こんな感じでして。私の記憶違いじゃなければ、
確かこの映画の役ってキャバレーの司会みたいなあれなんですよね。
だから劇中劇だけの演出家というよりかは、
キャバレーじみた『真夏の夜の夢』全部を
パックの立場ぶんどってメフィストフェレスが演出、
みたいな感じでかなり重層的な感じでした。

パックにしたって

「お前に(演出みたいなことを)頼むなんて
人間ってなんて馬鹿なんだろう!」

とあの有名な台詞(Lord, what fools these mortals be!
で喋ってたし。うん。

「飲み込んでしまったコトバ」が悪魔を誘い出して
メフィストフェレスに人生の演出をされてしまう、
ってよくよく考えると怖いというかなんというか…。

てかそのメフィストフェレスが演出してるから
ワルプルギスの夜みたいなギラギラ妖しい感じなのかもね。

森に歩いていこうとする登場人物たちをせせら笑いながら

「富士の山をここによびつければいいものを!」

ってメフィストフェレスが舞台前方で叫んだりするとことかで、
後ろのスクリーンにバカバカしいぐらい
どぎつい富士の映像がぐわわわわって流れてきたりとか。

そぼろ、デミ、ライ、ときたまごが混乱の極みの時

(原作だと、ハーミアとヘレナのののしり合いがあるとこ?
「背は小さくても目に手は届くわよ」のあのあたり。)

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(あれ、なんか暗いな画像…天気かな)

こんな感じで台に乗って上手から
象形文字じみた感じで四人が入ってくるんですが
メフィストフェレスの指揮者みたいな合図に従って
動いたり止まったり喋ったり…とか。うわあ面白い。

(ときたまごに向かって人物の高さが
放物線的になっていたのもめっちゃ綺麗。
考えてみればこういう二次元的なポーズ…
なんだろうバレエの『牧神の午後』とか?
そういうの思い出すようなのちらちらあった気がします。
そういえばそぼろの入退場時の走り方も
ポーンポーンとバレエ的に飛んでたような…。
オペラの『ファウスト』だとワルプルギスの夜らへんで、
たしかバレエが入ってたはずだけど、偶然かな…。)

その後に続く決闘シーンとかでも
メフィストフェレスの身体の動きと
全く同じく動くデミとライ。操られてるみたいでした。

個人的にメフィストフェレスが演出してる!!っていうのが
あからさまに分かるようなのっていったら、
まあこんなとこかなあ…。
なんかもう少しあったような気もするけど、
余りに新鮮で面白くて手元のメモがおろそかに笑。
あるあるだよね。うん。

でも最後もなんか
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タイテーニアとオーベロンが取り合っていた子供…
が中にいるはずのベビーカーを
メフィストフェレスがちょっとしょんぼりしながら
回収してハケていくので、最初っから
いろいろ彼が仕組んでいたのかな、って感じがしました。

下手に散らばっているカードは「飲み込んだコトバ」らしいです。
この後衝立が動いて、一気に最後の披露宴モード。
動線も装置も転換も文句なしに美しすぎて…
…やばい…尊い…語彙力が来い…。

もうとにかく全部ほんとにきれいなんですよね…。
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ビニールのキャバレーみたいな森とか。衣裳とか。
溜息しかでないやばいテンション上がる。
ビニールってちょっときれいだしアングラ臭もするしで
個人的に好きな素材です。ド素人の好みだけど笑。

でもこういうギラギラした演出、よく観るけど
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー
『夏の夜の夢』映画(1996?)思い出すなあ…。
(授業でチラ見だけしました)

スクリーンいっぱいのクラクラするような光の粒とかもあって
とにかくなんていうか幻惑的っていうか…。きれいで…。

照明とかも下からのライト使って不気味にしたりとか、
舞台を暗くしてスマホのライトだけにしたりとか
(そぼろとかが良くスマホを使ってます笑)
懐中電灯を客席にむけたりとか、ランタン風だったりで
目が実際にくらくらしそうになるし
(もっと小さい劇場ならしてたかも)

しかも舞台の床面が結構リノリウム感あふれる…というか
ちょっと軽いだよね、レベルでつるつるで…

照明とか顕著なんですけど、映りこむんです。
カラフルな衣装の色彩とかもぼんやりと。
やばくない?やばいよね????

"Methinks I see these things with parted eye,
When everything seems double."
(今までのことが別々の目にうつってるみたい。
なにもかもダブってみえちゃって)

っていうハーミアの台詞を体感してるというか…。すご…。

細長い板が左右に移動する瞬間に真ん中で
メフィストフェレスとパックが入れ替わって
場面も直ぐに変わる演出とかも
(映画で言うクロスカッティング的というか)
こうやって考えると「ダブって」いるようで面白いというか。

てかそもそもパックとメフィストフェレスが知り合いの設定は
どう考えてもウケるしかない。ありそうでやばい。
言葉巧みにオーブンに閉じ込められたパックの映像も完璧でした笑。
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映像といえば、すごかったのがもう一つ。
今回の劇中劇って一応不思議の国のアリスなんですけど
アリスと言えば大きくなったり小さくなったり、ですよね。

それが演出にも取り入れられていて、例えば
舞台目いっぱいに大きくなったメフィストフェレス(映像)と
舞台前方にぽつんといる下着姿のそぼろとの対話…
みたいな。めっちゃファンタジーナニコレドキドキ…。
これは文章で伝えるのは絶対不可能です…ええもん観た…。
「みえないものをみせるから芝居なんだ」とか
メフィストフェレス言ってたけどさ…最高じゃん…

(なんで『不思議の国のアリス』かは謎だけど、
ノンセンス文学だしその辺で選んだのかな…。
韻さえ踏んでりゃ意味なんて二の次
って感じは野田秀樹さんの言葉遊び好きと相性よさそう…
勿論シェイクスピアとも、アイデンティティがぼんやりしてる
『夏の夜の夢』とも…?かな。分からん…)

そもそも最初っからしてファンタジックで
ハーメルンの笛吹き男なんかも出てくるし。
靴だけが動いていく演出不思議でした。
(ロープに靴をたくさん括り付けて、そのロープを俳優さんの
足につけてるだけといえばだけなんだけど)

あとは観た方ならわかると思うんですけど
脱ぎっぱなしの靴を使って透明になる演出は面白かったです。

舞台下手に靴を置いておいて、
舞台後方でメフィストフェレスが透明になる、と宣言して
照明及びデミの視線を下手の靴に移して(ワープかな)
靴のところにメフィストフェレスがいるように錯覚誘導…。

完璧か…。そしてゆっくり裸足のメフィストフェレス
後方から歩いてきて靴を履くのがなんかかわいい笑


でも一番かわいいのはそぼろ(鈴木杏さん)です。

「かわいいやつと思ってくれるかもしれない!」

ってデミを追いかけていくのがかわいすぎてやばい。
なんなのこの人何でいつもこんな魅力的なの(キレる)
声が良いよね…声が…まったりして癖によく通る声…。
色で言うなら生成りって感じ…(意味不明)


今回の舞台は最初から割とそぼろさん無双状態でした。はい。

「不思議なことは気の所為ではないよ。木の精なの。」

っていう盲目のバカみたいな恋を肯定するような始まりが、
その恋愛がもつれて辛くなっていくうちに、
(主にメフィストフェレスのせいな気もする)

「その言葉も綺麗事。本当は自分を愛しているのね。」

と(たぶん気づいちゃいけない)深層心理みたいなとこまで
行きかけちゃったりして、

「気を確かに持っているの、気(木)の所為(精)なんかにしたりしない!!」

とか絶叫するとことか鳥肌もんだよ最高。
色恋の情緒に関しては当方経験不足なため、
何となくの解釈しか出来ません。つらみがふかい…。

何となく気の所為(木の精)があった方が
人生面白いんじゃね?だよね??
メフィストフェレスにそれ奪われかけてるから、
気の所為の最たる物語(因果関係)で
奪い返そうぜい、みたいな感じで、
最後は回収されてハピエンな感じ(酷すぎるまとめ)

...こんどちゃんと戯曲読むかあ...。

まあでも誰の台詞か忘れたけど、

「人は人に恋してるのじゃない。
星だの、月だの、太陽だの、ただ石ころで着飾ったコトバに
恋してるだけなのさ」

っていうシェイクスピアの作品に正面切って喧嘩うってるみたいな
素敵すぎる台詞があったので、あながち間違いでもなし?かな。

あとあのヤン・コットとかも

「人物たちが恋愛の相手でしかなくなっていることは、
この残酷な夢(『夏の夜の夢』)の何よりも際立った特徴」
(『シェイクスピアはわれらの同時代人』213pだったはず)

とか書いてるし!!!偉い人も言ってるし!!!(適当)

シェイクスピアに愛ある挑戦状をたたきつけているといえば、
原作中にある神話的な例えとか言葉遊びとかを
全部料理関連の例えとか言葉遊びに置き換えてたのは笑いました。

日本語わりとすごいやんって思ったり。

一番覚えているのは
戯曲読んでないから耳で聞いてただけだけど、

「好き好きだけで嫌いはない。(花占い的な?)
この玉ねぎの芯をみてくれ!これがホントのきゅうこんだ!!」

ってヘレナにライが言ったりとか笑笑笑。

ライ笑笑笑笑この文句はひどい笑笑笑笑笑笑笑笑。
案の定フラれてました。そりゃそうだ。

割烹料理屋に設定を移しているからか
和食版の『キッチン』アーノルド・ウェスカー
みたいな出だしも好きでした。
8拍子ではあるんだけど3・3・2の不思議な
畳み掛けるようなリズム回しの音楽。

あくまでちょっと妖しい感じは残しててすごいです。

モップの犬を操りながら、茶々を入れるメフィストフェレスのせいで
回転しだしそうなドラマ(物語)が
初っ端からずっこけて躓くようなテンポ感も好きでした。
ほぼ額縁舞台とは思えない。すごい。好き。

食事三大欲求満たしまくってるみたいな
結構きわどい雰囲気も相まって興奮する!としか
言い様のない感じで、観に行けて良かった。
シェイクスピアに喧嘩はうってるけれど、
逆にシェイクスピアの原作のリズム感とかが、
上手く日本語に当てはまるとこうなるのかも、なんて
ちょっと思うような舞台でした。

【と言う訳で以下、毎回恒例ではないけど
文中に組み込めなかった感想という名のツッコミ】

・三色菫をまるでドラッグみたいに
ビニールのパウチに入れんなよパック笑。

メフィストフェレス歌うますぎ笑笑。

・ボトムじゃなかった福助の腹芸がすごい笑笑笑
ほんとに腹に描かれた顔が喋ってるみたい笑笑笑笑。
謎に歌舞伎っぽいし笑笑笑笑笑笑笑笑
(とか思ったら人形浄瑠璃みたいに
他の俳優さんたちに操られる森の精たち。)
ジャパンかな?!?!!(貧相すぎる感想)

加藤諒さんの声の使い分けは面白かった。
タイテーニアがパワフルやん。楽しい。

・ずーーーっと歩いているあの妖精はなんなんだ。謎。
たぶん年の精なんだろうけど。

・デミ笑笑お前眠り薬かけられたらすぐ寝ようよ笑笑
復活しすぎでパックもびっくりだよ笑笑。(観た方ならわかるはず)



ちょっと急いで書いたので支離滅裂感なくはないけど、
いつものことなのでまあもういっか、と思ってます。(おい)

次はイヴォ・ヴァン・ホーヴェかな。楽しみやー!!