2021/07/11
※ちょっと作品が作品なので、気を付けて書いてはいるつもりなんですが、性別とか出産について色々書かざるを得ない部分がでてきてしまいました。すごく不勉強なので、もしも不快な表現とかあったら、すみません。
久しぶりのシネ・リーブル池袋…!!
そしてヘレン・マックロリーの追悼特別上映…。
…追悼じゃなく観たかったなあ…。コロナでやるやつないから的な特別上映で…。もういないのか…。
冒頭からいきなりしんみりしましたが、学校でTOEIC受けてから来たのですごいスケジュールでした。あとイギリス英語の方が耳が慣れているので安心する…。
まだ『フェイクスピア』の感想も書き終えてないので(なんと前、中、後に分かれた)さっそく感想まとめたいと思います。
ただいま中編で止まっている…
それにしても帰りの雷雨がすごかった…。電車内一瞬停電したもんね…。
公式のやつとか
【本日7/9初日】#NTLive『#メディア』
— ナショナル・シアター・ライブ (@ntlivejapan) 2021年7月9日
この熱演、ぜひスクリーンで!#ゴールドフラップ の音楽も、#トム・スカット のセットも、#ルーシー・ゲリン の振付も、#ベン・パワー の脚色も秀逸
演出は #キャリー・クラックネルhttps://t.co/hE9rZ7tg1a pic.twitter.com/7GwVLOZ17H
【明日7/9公開】#NTLive 『#メディア』#ヘレン・マックロリー のキャリア史上最高と評されたメディア役をぜひスクリーンで!
— ナショナル・シアター・ライブ (@ntlivejapan) 2021年7月8日
あっという間の99分!
お席はご鑑賞劇場のHPにて販売https://t.co/ygT4p3UAMr#ゴールドフラップ 音楽#ベン・パワー 脚色#キャリー・クラックネル 演出#ギリシャ悲劇 pic.twitter.com/nkSw8beZLB
以下、画像とか、ちょっとこの公式のTwitterから引っ張りながらまとめます。
どうでもいい話
あ、あとエウリピデスの『メディア』というと、蜷川幸雄演出、平幹二郎主演の『王女メディア』の印象が個人的に強くあります。
なんと映像ではあるけれど、ほとんど初めて通しで観た演劇がこれ、という。
もともと映画の勉強でもしてみたいなあ、と思って大学に来たのに、この映像観て人生狂った感はなくはない(笑)。
さっきまで嫉妬の青い炎を燃やしまくってた女性(男性が演じていることに気がつかず)がカーテンコールでイケメンになって出てきたから「なんかいま奇跡をみたんじゃねえか…???(放心と混乱)」となって、今に至ります。
そんなこんなで割と『メディア』は思い入れがある作品です。
疲れてるので脈絡なく書いていくよ、の感想
めっちゃ現代!!
…これが『メディア』だと…!?
階下にいるのが左からメディア、乳母、階上の白いワンピースの人はジェイソン(イアソン)が再婚する予定のコリントス王クレオンの娘で、手を握ってるのがもちろんジェイソン、あと集団はコロス(ちゃんと13人、コロスはだいたい12~15人)
びっくりです。タンクトップだぞメディア。
しかも下手奥にある手洗い場の下に、洗剤とか掃除道具までおいてあったの見えたぞ。
…すげえ…凝ってる…めっちゃリアル…そのまま映画のセットに使えそうな細部へのこだわりっぷりを見せておきながら!、の階下奥の暗い森ね。
まるでメディア、それか人間の暗黒部(しかもリビングから続いているので、日常から簡単に行ける、誰でもそうなってしまう可能性のある、みたいな印象がある)みたいじゃないですか惚れる。
乳母のプロローグ(『アルゴナウティカ』の辺りとか。金羊皮紙の話)から始まって、パロドス(コロスの入場曲)?的なコロスのあれがあって、メディアが奥の森から出てくるので余計そんな印象でした。
あと、ジェイソンがメディアに「離婚しても君らの面倒は見るよ」って言いながら小切手書いてたり、メディアが後半ジェイソンと子供たちをスマホで撮影したり(もちろん観客みんな、にやっと笑う)
なんかもうセットも衣裳もなにからなにまで全部すっごい現代…なのに不気味と異質さみたいなのはちゃんとあるし、かといってそれが強烈な違和感を生み出している、とかじゃなくて溶け込んでる…えええすごい…なにこの舞台美術と演出…。
あとそれに耐えうる原作な…2500年前から人間なんも変わってねえ…すげえ…(寝不足なのでいつに増しても語彙力低め)
コロス、面白かったけど…
コロスが全員女性ってのも初めて観たんですが、すごい面白かったです。
なんか象徴的なジェスチャーを繰り返したりしてて、それがものすごく異質なんですね。
あ、異質といえば、このコロス、クレオンの娘とジェイソンの結婚パーティーの参列者も演じているんですが、同じように花嫁花婿含め奇妙なジェスチャー、というかダンスを繰り返すのでやっぱ不気味だし、この結婚(再婚)に関することが全て階上の窓の向こうで行われたりして、よく見えない(けど全く見えないわけではない)のがこれまた奇妙な感覚で…。
たぶんすごくリアリズムなセットとか衣裳なのに、ふと入り込んでくるコロスとか、こういう場面が、溶け込んではいるけど確かに不気味さ・異質さも感じる、みたいなところに繋がっているんだろうな、と思いました。
圧巻だったのが、最後のところ、メディアの贈り物でクレオンもクレオンの娘も死んで、ジェイソンが家に怒鳴り込みに来るんですが、その時、舞台がほんとに暗くなって、で、コロスの人達が、まるで後ろにある森の木の延長みたいな陣形で立ち並び、そのちょうど真ん中にジェイソンが取り込まれる、というすごい舞台面になるんですね。
暗黒面を感じさせる森が、コロス(どちらかと言うとメディア側の人たち)を通してリビング(日常)の空間まで確実に侵食し、ついにジェイソン(ところでこのジェイソン、絶対子育てとか手伝ってないだろ、感がある)を囲い込むまでになり、彼を子殺しの事実によって絶望に叩き落す(子殺しが行われたことをジェイソンに伝えるのはコロス)、っていう…
この怖さすごくないですか(興奮)
メディアの心の奥底から湧き上がってくる、「夫を自分が味わった絶望に突き落としたい」という激しい情念が、完全に可視化された気がしてマジで感動しました。
そして圧倒的に勝利を収めたはずなのに、コロスたちはみんな薄汚れた可愛らしいピンクの花模様のワンピース(かつてあったはずの幸せの残骸?)を着て、しかも全員ものすごく哀しそうな顔をしていて(メディアだって子供を殺したいわけではなかった)、だから、怖いのに、それを圧倒的に上回る勢いで舞台空間に広がる虚無感な。しんどすぎる。大好き。
1行ごとに1人ずつ交代に畳み掛けるように、コロスが喋るのも神秘的で好き…だったんですが、これ全体で100分ぐらいの劇なんです。
なんならコロスも『アルゴナウティカ』の話も、全部バッサリカットして、完全に現代劇として原作の細かい部分詰める、みたいな台本とその演出、でもそれはそれで面白そうだな、と思いました。好みの問題かな。
私は、少なくとも『アルゴナウティカ』は要らんかな、と思ってしまいました。
「出産は生と死のダンス」
あの、メディアが色々「やってやる!」と決意したあと、よれよれの服から、上の画像みたいなややギリシャ風かな?みたいな純白のオールインワン(ワンピースじゃなくてズボン)に着替えて、で、この衣裳のままラストまで行きます。
…真っ白なので照明があたった時のヘレン・マックロリーの神々しさな…特に横顔の時がえぐい…。
メディアがやろうとしてることはどう考えても人道的にアウトなんだけど、そこに一直線に突き進む彼女の、ある意味高潔で清廉な感じがトリハダしか立たない…(日本語)
話戻します…。
で、このまま、まるで花嫁衣裳のみたいなまま、ラストに子供の遺体が入っているであろう黒い袋2個、肩に担ぎながら森から出てくるんです。もちろん血まみれで。
なお殺しの場面とかは、悲鳴のみで「見せませんでした」。そこもギリシア悲劇に倣ったみたい。
それですっごい、いとおしそうに、としか言えないんですが、そんな表情で袋にほおずりしたりするのと同時に、
They are beyond you now!
この子たちはもうあなた(ジェイソン)の手の届かないところにいるのよ、的な意味だったはず。
ってメディアが絞りだすんです。ここほんと聞いてて辛い。
ちなみにメディアが子供を殺すのは、ジェイソンにとって1番大切…死んでしまったらと生きていけないレベルで大切なものだから。要はジェイソンがメディアに対してした行為もそれほどのものだったということ。
で、言っても死体2体担いでいるのは相当つらい、のかは分からないんですが、メディアの足とか、自分がしてしまったことへの恐怖なのかなんなのか、とにかくめっちゃ震えてて…。
ここだけじゃなく、メディア、感情が高ぶったりすると、肩とか肋骨とか小刻みに震えてて、すっげえ身体性…と思った。
なんか白い衣裳に、広がる血しぶき、come to me, my childrenっていうメディアの穏やかな語りかけと、ものすごく疲労しきった涙まみれの優しそうな、でも苦しそうな表情と、彼女の不安定な身体をみて、なんか、あまりまだ上手く言語化できていないんですが、
「ああ、彼女は1人きりで子供を出産し直したんだ…ジェイソンから完全に奪ってしまうために、ほんの少しもジェイソンの力を借りず、彼女だけで妊娠し直して、彼女だけで産み直したんだ…」
って思ったんですよね、ほんとになんでか分からないけど。
でもそうなってくると、劇冒頭にあった意味深なセリフ、「出産は生と死のダンス」というのもなんとなく腑に落ちるし、あるいはこの「出産し直し」のあとに続く、メディアの「私は私の清らかさを取り戻す」みたいなセリフも、処女性の復活?的な感じで(聖母マリア的なあれで)理解できなくもない…。
おまけのインタビューで演出家さんが、「実はこの話って、にっちもさっちもいかなくなった夫婦がケリをつける話」って言ってたのがなんかわかった気がする…。
とにかく、このシーン、本当に凄かったです。壮絶とはまさにこのこと。
惜しい役者さんが亡くなってしまったなあ…と思います。しんどい…。
ラストも考えさせられる感じで面白い
乳母がエクソドス…いやエピローグかな、で観客に向かってこんなことを言います。
「この物語に別の結末があると思いますか」
でそのあとは
First, silence, then darkness.(この後、暗転。幕。心憎すぎる終わり方!)
和訳忘れた…まずは沈黙、そして暗黒、程度の意味だとは思う。
………………………………………………ない気がする…!!(メンタル崩壊からの号泣)
しんどすぎます。だってメディアの説明は正気にしろ狂気にしろ、追い詰められた人である割にはとっても理路整然としてて、パッと聞いただけじゃ私みたいなバカは口をつぐむしかないじゃんか…不意打ちやめて…
英語のギリシア悲劇初めて観た(ヘレン・マックロリーが凄すぎるだけかもしれない)
かたっくるしい難解な邦訳とか、逆にフランス語とかの上演は観たことあったんですが、現代の英語で、って初めてかもしれない。
なんか変に美文麗文の日本語とかより、ドッシーン!と心に刺さった気がしました。
…あるいは役者さんたちがうますぎるだけか…。
メディアとジェイソンの互いの主張、どっちも嘘言っているようにどっちも本当のこと言っているようにも見えて、まじで混乱したからね…。
あとヘレン・マックロリーが
I'll DO THIS.
とか
I WILL SUCCEED.
って1語1語に力点置きながら発話するときの迫力な。軽く死ぬかと思った。
おかしいな、映像なんだけど…。
『メディア』のカーテンコールはみんなこうなのか??
すげえ強烈な印象残して去って行って、放心してたらヘレン・マックロリーさんが、超朗らかにキラッキラの笑顔でカーテンコールに出てきて。
あれ?メディアどこいったん???(デジャビュ)
…きっと上手い人の『メディア』観る度にこうなるんだろうなあ…。
あと音楽に関しては超エモかったです。毎度語彙力低くてごめんなさい。
照明があんなにかっこよくなかったら、メディアのナイフみたいな神々しさは8割減ぐらいしてた瞬間があるんじゃないかと思うレベルでかっこよかったです。
つまるところ、全部最高でした。
観たことないものを観られて、満たされました最高…。
ところで真面目に『フェイクスピア』の感想が終わりません。
助けてシェイクスピア…ロイヤリティ払うから…monoみたいに「よんでません(大声)」とか言わないから…。
あ、千秋楽お疲れ様でした…当日券チャレンジされた方も…。
時間あったから冷やかしにいったアホはここにいます。証拠⇓