2021/09/04
東京芸術劇場 プレイハウス
これの続きです☟
- 二コラがすごくて私のド偏見がロストしました
- ちょっと2次元的かつ全部ホワイトの舞台はずるい!!
- アンヌとソフィアの対象性とピエールの好みについて(真顔)
- リアル親子キャストで強制的に虚実が揺れるから死ぬほど面白い
- 「とりあえず生きてくれればそれだけで嬉しいんだ」ってなんで誰も言ってあげないんだろう
- ようやく終わった
二コラがすごくて私のド偏見がロストしました
元不登校&引きこもり&エトセトラやらかした目線から観た時、二コラのいろいろな感じすごい「あッなんかこれやったことある…(というか今もたまにやらかしてる…)」って思い出しちゃう場面が多々あったのでまあ何が言いたいかというと
「ゼレールのやつなら観たいけど若手のジャニーズの人主演なの…??え…??」
とか思っててマジすいませんでしたアアアアア!!!と土下座したい気持ちでいっぱいというか。なんかもうほんとに素人のくせに色眼鏡かけて見ててごめんなさいとしか言えない。
これ観にいった翌々日に『検察側の証人』も傍聴してきたので完全に眼鏡は外れました。考えてみれば基本大舞台で「歌って」「踊れる」んだからそりゃあ上手いよね…しかも岡本圭人さんに至っては留学してたらしいし…というか日本にも海外みたいな学校あればいいのに…。
「分からない」を連呼しまくる元々のセリフがそもそも「これ私も親に向かってめちゃくちゃ言ったな…」みたいな感じばっかで、たぶん読んだだけでもなかなかにキツい感じだな、とは思ったんですけど、情緒がジェットコースターな感じとか、それでも周りに気を使ってしまって余計に不安定になる感じとか、大声出したくないのに出しちゃう感じとか、何よりそういう細かい二コラの感情に(こっちが勝手に)共感してしまうぐらい、なんかもう上手かったとしか言えないというか…。
うあああああって錯乱しかけて騒いでいる場面とか「あれこれもしかしなくても私の家に監視カメラでも資料映像用についてたかな?」と自意識過剰レベルの妄想抱くくらいすごかったです。
おかげでお腹が痛い。メンタル的なあれで(訳:最高すぎるぜちくしょう!)。
あと個人的に、泣き叫んでも、わめいても、ちゃんと「何言っているのか」が特に集中しなくても聞き取れたのがものすごくポイント高かったというか…。
もちろんすぐ横にいるパパのピエールの方がその辺は聞きやすいんですが、プレイハウスの2階席で観てこれなら全然気にならないどころかむしろ良い…全然良い…。
最近、普通の時は聞き取れるのに、叫んだりすると途端に何を言っているのか分からなくなる役者さんもちらほら見かける気がなんとなくするので…。単に活舌とか発声の問題じゃない場合もあるから厄介…。
とりあえず頭の片隅にうっすらあった偏見はきれいさっぱりロストしたのでLUNGSのチケットも参戦するだけはしてみようかな…。日曜日だよね確か…。まあ無理だろうけど…。
ちょっと2次元的かつ全部ホワイトの舞台はずるい!!
感想の前半にも書いたし、フランス版の動画ものっけたんですけど、壁が移動する感じなので、もちろん家具とかはきちんと使えるレベルだし、かなり奥行きもあるんですが、基本シンプルでちょっと平坦な印象の舞台装置でした。
たとえが適切かは微妙なんですが、紙芝居みたいな??
しかも床まで全部真っ白。全方位レフ版状態。
身体の動きとか表情とか超ハッキリ見えます。
でも全員演技は文句のつけようがないほど上手いから問題ないというか、そうじゃなきゃこんなどシンプルなセットにしないだろというか。
そして内容的には、最後に超でかい出来事は起きるけど、基本人間と人間のやり取りメインの心理劇。
…なんかもうこういうことが全部綺麗に組み合わさって、すごい人物の生の感情が浮き上がって見えました…。
少なくともそういう風に錯覚するレベル、というか…。
2階席で観ているはずなのに、目の前で展開されている感じ…。
舞台の、登場人物間で刻一刻と変化するそういう雰囲気が、何にも邪魔されずにダイレクトに観客席まで迫ってくるので、かなりの緊迫した状態で観劇するハメになりました。最高に楽しかったけど内容が内容なので、お腹がいたいです。
あと、感想の前半に書いた照明関連のごちゃごちゃから出てくる、どこか「カミサマ」みたいな絶対者を想像させるような感じと、このそれぞれの人物の内面みたいなものが浮き彫りになって観ている側に迫ってくる感じが相まって、どこにでもありそうな家庭で起こった今もどこかで起きているスケールの悲劇が、なんだかギリシア悲劇並の壮大な悲劇と同等のものに感じられたのにびっくりしました。
でもギリシア悲劇も家庭の悲劇といえばそうだし…。
あと物語に関しては「特殊化すればするほど普遍化する」っていう変な法則もあるし…。そういうのもあるかも…。
アンヌとソフィアの対象性とピエールの好みについて(真顔)
いやほんと観てて思ったんだけど、アンヌとソフィア真逆すぎない??
マジピエールの好みどうなってんの??
と思わず浮かんだふざけた感想はおいておくにしても、アンヌが後ろを向く人なら、ソフィアは前を向く人、ぐらい印象が違ったので、ちょっと面白いな、と思いました。
特にアンヌ。なんか若村麻由美さんて、芯まで凛とした役が多い印象を勝手に持っていたのでちょっと珍しいなと思ったり、どっちにしろ黒いドレスとハイヒールとかマジ美しすぎるなと情緒が不安定になったり衣裳さんグッジョブ(サムズアップ)!
アンヌのセリフのところどころに「昔は違った。昔は良かった」的なのがダイレクトに現れるのもそうだし、特に、ピエールが二コラのことでアンヌの元に訪ねてきたのか?みたいな場面…確か2人でお酒飲んでる場面だったと思うんですが、その時の、アンヌの未練たらたらな感じが、見ていてこっちが悲しくてやりきれなくなる程というか…。
なんていうか、お酒飲みながらだからなのか、軽くピエールの肩とか触れるんですよね。自然なんだけど、ちょっとすがるみたいに。
あくまで、ピエールに対する未練、というよりは自分とピエールと二コラが3人でまあ幸せに楽しく暮らしていた昔への未練って感じだったんですけど…。
色気はあるけどそこまでどろっとした性の匂いはあんまりしないという凄まじすぎる演技。最高。
そしてピエールはピエールで、ちょっとだけその手を見たと思ったらこっちも自然に身体をずらして離れる、みたいなことしていて。
だからラスト近くでピエール、アンヌ、二コラ3人がニコニコお茶飲んでて、二コラがその時に発する「なんかパパとママがこうして楽しそうなの久しぶりだね!」的なセリフも、「でもこの夫婦、あの時の感じからするともう金輪際修復無理そうだしな…」と思いながら聞けるので、その後の自殺の展開がよりしんどいです。絶対演出の確信犯。
こういう細かい、たぶん普通だったら見逃してたなレベルの動作まで、さっきも書いたけど、何にも邪魔されない極限の集中度合いでハッキリ見えるんで、胸の痛みが倍増というか、何があったか知らんけどこんなアンヌ捨てるとかマジピエールの横っ面を張ってやりたいというか、なんかそんな気持ちになりました。
ごめんピエール。別に犯罪犯したというわけではないんだけど、確かに二コラが死んだのは6割方あなたのせいなのは確かだと思うよ…。
あとアンヌがソフィアばりに前向き(「どんなに辛いことがあっても人生は続く」マインドの持ち主。諦観的な前向きさだけど、強い人なのは確か)だったら、二コラのラストも変わっていたかもしれないな、と思ったりもしました。
二コラが「もう終わりにしたい」ってギリギリの状態でアンヌにSOSを出したのに、それへのアンヌの答えが「そんなこと言わないで。私を悲しませないで」ですからね…。
アンヌがしんどいのも分かるんですが、二コラ的な状態になったことがある人とか結構多いと思うし書くんですけど、もうこんなこと言われちゃうと、「なんかもう自分が生きてうだうだ悩んで相談するだけで大切な人を悲しませて迷惑かけてんのかしら…自分マジダメ人間…死んだ方が良くない…?(「自分はおかしい。ダメだ」がベースとしてあるので、「相手にとって自分が大切な存在である可能性」とかまで頭が回らない、感じがする)」と普通になるので、このセリフも割とアウトな気がしました。
にしてもなんでピエールはソフィアに走ったん。タイプがほんとに真逆なんですけど。それとも別のタイプにも行ってみたくなるっていうのはやっぱり人間の欲望としてどっかにあるんですかね…。共通項は美形なとことぐらいだぞマジで…。
あと単純にアンヌとソフィアのその後が気になります。特にアンヌに関しては、ラストシーンちょっと前ぐらいから言及されなくなるので…。
リアル親子キャストで強制的に虚実が揺れるから死ぬほど面白い
ずるい!!!もうずるいよ!!!!
こんなん面白いに決まってんじゃん!!!心の叫び
あと考えてみれば、親子で役者ってだけでも珍しいのに、どっちも名前売れてて、さらに舞台も行けるって(演劇と映画で結構すみ分け感がある日本だと)めちゃくちゃ珍しいんじゃないか??あれよく考えると観られたの奇跡的にラッキーなんじゃね???
とにかく言い合いする場面とか、楽しくTV見る場面とか、何故かお尻を振るダンスでテンション爆上がりするふざけた場面とか、殺伐とする場面とか、ほぼ乱闘騒ぎじゃねえかレベルでピエールが二コラに馬乗りになって大喧嘩する場面とか、自殺の場面とか
「うわ…すごい真に迫っている…というかそういや実際親子だったわ…え…じゃあ今舞台で起きていることは何…ガチってこと…いやでも喋っているのは『書かれたセリフ』だしやっていることは演技(言い方悪いけど虚)だし…え…???え…???何を見せられているの…??」
みたいにプチパニックを引き起こしました。
ごくごくスタンダードな形式の翻訳劇観に行くつもりだったのに、寺山修司の市街劇でもお前観たんか?レベルのこの混乱どうしてくれよう。大変に面白い。
逆に親子キャストじゃない(この父子の物語を信じたり没入するためにワンクッション必要な)ごく一般的なキャストの時がどんな感じになるのか気になります。
どこかでの再演に期待しよ…。『母』やるときとか一気に3本まとめてやるとかどう…??6時間ぐらいでしょいけるって…。(むちゃぶり)
それにしても、二コラと似た経験していたからか、戯曲、演出、意図的なキャスティングエトセトラに上手く引き込まれたのか知らないけど、ピエールがキレて大声出す時とか自分が言われているみたいな気持ちになって冗談抜きでお腹痛くなったので、「しんどくなるかもしれないか胃薬持ってきてね!」ぐらいはフライヤーに書いてもいいと思う…。
それかクソ高いパンフレットの特典で希望者に胃薬的なあれ配ってもいいよ…??(ダメです)
ピエールが二コラのこと真剣に考えているのは痛いぐらいに分かるのは分かるんですが、それが「学校に行け!」「俺だって父親に愛されず、病気の母をヤングケアラーとして支えながら頑張ってやってきたんだからお前も頑張れるはずだ!」「そういう努力をしないのは怠慢だ!」「みんな似たような経験があるんだ(だからお前の今の状態も100%理解したうえで言っているんだ)」ベースなのがほんとにしんどいというか逆に追い詰めまくっているぞ、というか…。
「自分の正しさ」基準で来るのがもうあかんでピエール…二コラのメンタル死んじゃう…「あなたが耐えられないこととその人が耐えられないことは違う」ってことを頼むから分かって…あと親子だろうが何だろうが究極には理解し合えない「他人」でしかないことはちゃんと理解して…。というかまずもって二コラの話を「ちゃんと」聞いてあげて…。
とエンドレスに辛くなりました。ピエールの迫力がものすごいから余計タチが悪い。すごい。
そして繰り返すけどこれを本当の親子でやっている恐ろしさな。もう何を信じていいか分からないというか、舞台で起きていることが本当にしか見えないというか。
心の底からやられた。全面降伏です…。
「とりあえず生きてくれればそれだけで嬉しいんだ」ってなんで誰も言ってあげないんだろう
っていうほんとにただの感想です。なんで二コラに誰も言ってあげないんだろう。
二コラの状態は本人も「分からない」って言うぐらい僕然としているんですけど、「居場所がないから辛い」「生きているのに向いていない」って言っているんだから「そこにあなたがいてくれるだけで私は嬉しい(死んでしまったら悲しい)」「辛いのに頑張って生きていてくれてありがとう。あなたが少しでも楽に生きられる手伝いをしたい」って、少なくともピエールとアンヌはそう思っているはずなので、ちゃんと伝えてあげればいいのに…と思った、っていう感じです。
アンヌは青字部分だけだしピエールは色々すっ飛ばして緑色のとこだけだし…。
まあ客観的に見ているからこそこういう風に思うのであって、実際当事者になってしまうとなかなか頭回らない部分があるんですが…。
てかこういうことに関しては私、とりあえず全肯定で話聞いてくれた自分の親に感謝しかないな…。
家族って難しいね…。家族だからこそ難しいのかもしれないけど…。
1番印象に残っている会話があるんですが、それがパンフレットに原文で載っていてびっくりしました。
Pierre: Tu sais, quand tu te fais du mal, c'est comme si c'était à moi que tu en faisais.
Nicolas: Et toi, quand tu as fait du mal à maman, c'est à moi que tu en as fait
「お前が自分を傷つけるのは、俺を傷つけることと同じことなんだよ」
「パパがママを傷つけたのは僕を傷つけたのと同じなんだよ」的な訳だった気がする。
こういう部分があるからこそ、なにか家族間の関係の中で不穏なことが起きると、一気に行くとこまで行ってしまうことがあるのかも…と漠然となんか思いました。
まだ消化しきれていないのであれなんですけど、「大切だけどあくまでも別の人間である」ってことは、たぶん頭にずっと置いておくことが、こういう結末を避けるには大切なんだろうな、と思った…ような気もします…難しいね…。
ようやく終わった
あまりに最高過ぎてテンション爆上がりしたので、こんなに長くなっちゃったよ!!
ようやくまとめ終わりました!!!
あと個人的な好みなんですけど、笑いを作れる部分は、もっと爆笑できるレベルで面白おかしい方が好きかな!!
それにもし再演するなら、もっと(体格的にということではなく)如何にもああいう強権的なこと言いそうなマッチョな雰囲気のピエールも見てみたいかも!となりました。
とにかく観に行けて良かったです。いいの観ると心が元気になります…。