感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

観てて素直に楽しかった『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』

2022/02/13

KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオ 13:00 ※アフタートーク

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横浜中華街とコラボした春節オブジェランタン。
元町・中華街駅の改札付近にもありました。

 

 

KAATにあけおめしに行ってきました。今年も面白い公演を勝手に期待しています。

 

あいにくの雨だったんですけど、観ていて素直に「楽しい!!」と思える作品に、すごく久しぶりに出会った気がします。

チケット代も破格の値段(U24で半額の2,400円、高校生以下だともっと安い1,000円)。

 

雰囲気としては、学芸会とか、学祭で先生たちが本気出して出し物考えた、みたいなノリで、客席でもかなり気楽にくつろいだ状態で観ることができました。

でもやっていることのレベルが全然学芸会とか学祭レベルのクオリティではないという。

こんな風に、プロが全力で遊んでる作品をもっと観たいなあ、もっと気楽に観られる機会が増えればいいなあ(そしたら演劇人口もどんどん増えるのに……)と思いました。

 

あと成河さんがいつものように無双してました。前口上も合わせればたぶん11役ぐらいやってました。当日もらえるパンフレットの役名の下に延々「成河成河成河……」と続いているので「ああ、ついにクローンを生み出してしまったのか……」と思いました。楽器演奏もしてて(ギターは知ってたけどパーカッションも謎に上手い)「もうこの人ができないことって、一日じっと黙って何もせずにゆっくり過ごすことぐらいなんじゃないか……?」と思いました。

もし『フリー・コミティッド』の再再演があるなら観に行こうかな……一人芝居で38役……。どういうこと……?

 

 

公式と舞台写真

www.kaat.jp

okepi.net

 

あらすじ(あまりに楽しく観たので間違っているかも)+α

天竺国大雪音寺に向かっていたのに、どういうわけか現在の神奈川県に三蔵法師柄本時生)一行が迷い込む、という話です。

 

愉快な前口上に続く形で、孫悟空菅原永二)、猪八戒(インスタグラムの自撮りのみの登場。写真は舞台上の白布に投影される)、沙悟浄長塚圭史)、白馬の玉龍(佐々木春香)全員と散り散りになってしまった三蔵法師が、空腹のため野れ死にしかけているところから物語部分は始まってました。

開演時間的に昼飯食べられずに観に行っていたので、三蔵法師に超共感してたら、30分もしないうちに精進料理にありついていたので早々に裏切りを感じました。仲間だと信じてたのに……。

【追記】テーマソングみたいなのがあるんですけど、「ちょは〜かーいはいなーいけぇどぉー(猪八戒はいないけど)♪」の部分がやたらクリアな発声(成河さん)で妙に耳に残ります。近所の歌上手い兄ちゃんが歌ってるノリで、ミュージカル......にはギリギリなってない感じ......。良いとこ攻めてる......。

 

そこにたまたま(?)ジャック&ベティっていう横浜の映画館から映画を観終わって出てきた口笛の男(成河。道祖神らしい。アラン・ドロン冒険者たち』のテーマソング吹きながらレティシアについて話してるけど、革ジャンにグラサンはアラン・ドロンのイメージなんだろうか……)に連れられて、お腹ぺこぺこのまま三蔵法師は何故か人喰い大蛇退治に加わることになってました。三蔵法師と電車の組み合わせがシュールすぎる。行った先で出会ったアミメニシキヘビ捕獲で有名な白輪園長(菅原永二)と共に大蛇を捕えると、なんと玉龍でびっくり。人をほんのちょっと食べちゃったみたいで(「ほんのちょっとですよ〜」って佐々木さんの言い方がかわいい)食べられちゃった人の遺品の(?)スマホもゲットだぜ!な展開。

 

猪八戒はどうもめちゃくちゃ神奈川県各所を食べ歩きしているらしくて、インスタグラムも使いこなしてるみたいです。

「豚カツとか食べてる写真上げたら絵面的にバズる(猪八戒は公演ポスターまんまの見た目)」とか言われてたけど、ラストには何故か養豚に興味持ち出す始末で腹筋崩壊した。

【追記】というわけでめちゃくちゃ美味しそうなご飯の写真がてんこ盛りです。飯テロ演劇という新ジャンル。

 

そのあと三蔵法師は、精進料理になんとかありついたり、最初は三蔵法師に会えて恐悦至極みたいだったのに後半やたらチャラめな木彫りの空海像(成河)に「観音経、1回一緒にどうッスか?」みたいな一杯ひっかけるノリで誘われてお経を読むはめになったりしてて、その流れで沙悟浄は精進料理のデリバリー(たぶんウーバー)で生計立ててることを知って、とりあえず猪八戒を白輪園長に捕獲してもらってました。でかい括りだと沙悟浄も爬虫類だから捕獲できるらしい。園長すごい。

そういえば空海像に会ったのは海に移動したからなんだけど、三蔵法師、「海に行こう!(その場でジャンプ)(移動が終わった体で)わ~まぶしい~」って感じだったので、なんのバラエティ番組だと笑いました。

あとアフタートークで喋ってたけど、このセリフ地味に言いづらいそうです。シェイクスピアじゃないけど、Act on lineというか、気持ち作ってからセリフというよりセリフ言いながら気持ちも同時に作らなきゃ間に合わない表現なので、確かに難しそうではある……。

 

沙悟浄はサユリさん(佐々木春香。実は人間に化けた河童に化けた狐)とその連れ子(成河。人間に化けた、目久尻川で目をくじられた河童)と暮らしてたみたいなんですけど(【追記】「洗濯機が外にあるタイプのアパート」という表現の破壊力)、三蔵法師達が乗り込んで行ったら、正体表してみんなびっくり。でも目が見えないので白輪園長あっさり捕獲。やっぱり園長最強。

あと河童だと正体明かす時の成河さんの声と身体が、どんどん妖怪っぽく(義経の時みたいにキンっとした声と、あと謎の身体能力で動きがぬるぬるしていく)なっていくし、謎のクオリティ。サユリさん(佐々木さん)も最後キレた沙悟浄から逃げるとき、華麗に舞台後方の紙を破って飛び出ていくので、とにかく謎のクオリティ。

 

怒りのあまりサユリさんを殺そうとした沙悟浄に「むやみな殺生ダメ!」っていう三蔵法師はさすがお坊さん慈悲深いです。でも「ぶっ殺して皮剥いで……首にまいてやる」って沙悟浄が返すと「……愛してたんですね……」としんみり展開。沙悟浄、だいぶバイオレンスな愛情表現で笑いました。

 

行方知れずの孫悟空はスカジャンの刺繍のバイトをしてたみたいです。バイト仲間の山下くん(成河)とテレビ観てたらプレデターみたいな見た目の沙悟浄が映ってて、お得意の雲での超高速移動で再会。やったね!

 

そのあといろいろあって(省略)、影取池に三蔵法師が影を取られちゃいます。影を取られると早々に死んじゃうらしくて、玉龍沙悟浄孫悟空、これはやべえと3人で頑張って蘇生を試みる。

 

びんざさらの後光をたたえた(成河さんが毘沙門天の後ろに立って、光輪みたいになるように頭の後ろで掲げてた。毘沙門天の力が働くときの効果音込で「経済的な演出だ(笑)」と1人でツボってました)毘沙門天(佐々木春香)に、「二宮金次郎像(成河)ならなんか知ってるかもよ」と言われて、ほとんど優等生をカツアゲしてるヤカラ2人みたいな絵面で金次郎から情報を得た沙悟浄孫悟空は、なんとか影を奪いかえすけど、どうもうまく三蔵法師が蘇生しないめんどくさい事態になってました。

【追記】あとちょいちょい思ってたけど、三蔵法師はヤカラを抱えつつ教育しつつ旅してた苦労人ということがよく分かった(曲解)。

 

もう1回金次郎とかから情報集めて、最終手段のレッツ神頼みで大山に。三蔵法師の遺体(仮)は玉龍のしょってる桶の中です(たぶん紙とか布製。生き返る時に柄本さんぐしゃっと潰して遺体(仮)と入れ替わってた)。

金次郎がヤカラ感あふれる2人に、「今ぐらいは本から目ェ離せよ」的なことを何回も言われて「出来ないんですよッ!銅像だから!!」って言うのとか「本当は僕二宮尊徳になってからがすごいんですッ!!目線をあげてからがすごいんですッッ!!」って謎に悲痛な叫びをあげてたのがかなりツボりました。もしかしたら本人からすれば黒歴史な部分が銅像にされてしまったのかもしれない......。とにかく「ふっ」って声出して笑っちゃった。優等生が突然キレて(なんで俳優さんってキレる演技する時ほんとに顔赤くなったり文字通り青筋立てたりできるの??)ビビる不良2人的な絵面もあいまってヤバかった(笑)。あと話途中で飛び出していく2人に対して「子供かよ……」って呆れてる二宮金次郎像に、「お前よく飾られてるの小学校だろうが……」とまたツボって、もうとにかくこのシーンは腹筋が死にます。

 

その後、観音開きの奥から荘厳に登場した大山祇神(成河)のおかげでめでたく復活~。いえーい。

 

これでみんな帰れるね!めでたし!

 

でもその前に玉龍はカミサマパワーで居場所判明した猪八戒とっ捕まえてきてね、沙悟浄はサユリさんにアデューしに行くね(サユリ……魔性……)、孫悟空はスカジャンに刺繍途中だった虎が出てきちゃったって山下くんから「助けて!」の電話があったからそれどうにかしてきてね、とそれぞれ用事があるみたいなので、その間に三蔵法師大山祇神は温泉に入ってゆっくり待ってよっか~とのんびり終わってました。

 

前口上その他

前口上が、「今日雨降ってるのに来てくれてありがとうございます、今からこんな劇やります、今まで色んな役やってきたけど神奈川県役ってまじやったことなくてびっくりだよね、そういえば三蔵法師の三蔵って名前じゃない(世界史とかで聞くけど、経典の経蔵、戒律書の律蔵、注釈書の論蔵の3つに精通したお坊さんのことを三蔵法師っていう。名前は別にあってそれが玄奘)んだよ知ってました?(問いかけられたお客さん知ってて)あ知ってたんですか教養高ええ!!すごいっすね……じゃあ今日誰が誰を演じるか紹介しますね~」みたいな、かなり緩めのノリで始まって、ストーリーも、仲間集めからの、仲間で力を合わせて仲間を救う、みたいな分かりやすい筋で「観劇初心者に優しい劇だな」と思いました。

もちろん子供にも。ヒーローものとか冒険もので王道の筋。

おもちゃ箱というか、飛び出す絵本超立体版!みたいな観音開きの木箱をあけると、みんな「○○を演じる△▽です~」ってとにかくアットホームなノリ。

それにしても誰だ一体神奈川県をしょって前口上しよう!って考え付いた最高にクレイジー人。大好き。

 

間の取り方とか完璧でかなり笑える前口上で、物語が始まる前から「これは楽しく、ゆるく観ていいやつ……!」とテンション上がりました。

 

あと最後、温泉でも入りましょうか~!って大山祇神(成河)に誘われて、木箱の中に戻っていくんですが、その時に大山祇神が、三蔵法師に続いて木箱に入って、蓋を中から閉めながら客席に向かってウインクしそうな勢いで茶目っ気ふりまいて引っ込んでいくので「ディズニーとかで良く見るやつ……!」と思いました。そんなにディズニー観ないけど。

子供向けのアニメとかショーとかだと終わる前に登場人物が「ばいばーい!まったね~」するじゃん。なんかあの感覚。終わった後もほっこりするやつ。

 

前口上と同じ人がやってるカミサマ(でも表情とか仕草的に、客席に顔向けた時に大山祇神役だったかは謎)なので、「もしやお前全部いたずらとして仕組んだな……?なんなら天竺から一行連れてきたのお前じゃねえよね……?」と個人的にニヤッとも出来ました。パック味がある......。

木箱に始まり木箱におわる扉の開け閉めを、同じ俳優さんにやってもらったのは、ちゃんとした納め口上、エピローグはないけど、それがあるように感じて、「うあ~終わっちゃうのか~もっと観たいなあ~」と、なんだか久しぶりにそんなこと思いました。

かわいい終わり方だったなと思います。

 

生演奏ヤバい

角銅真美さんの歌声すごい好き…。あと本当に色々な楽器を使っていて(ぶんぶん振り回すと音出るアレとか)聴覚的にも視覚的にも演奏が面白かったです。効果音の部分でも声で表現したりしててマジで楽しい。

 

でも河童関連の部分で、角銅さんが上手に座ってる時、河童の像に見立てられていたので笑いました。かわいい。

 

あと成河さんのパーカッション(あれ太鼓……?)がかなりハイレベルでビビりました。なんでそんなになんでもできるの??天才なの??

 

二宮金次郎の時にその太鼓を薪代わりにしょってるんですけど、そのあとすぐ箱根駅伝(というか三蔵法師が冥土から頑張って帰る道中)で応援する沿道の人に戻らなきゃいけなくて、急いで太鼓の上からベンチコートみたいなの急いでひっかぶってて笑いました。ニット帽も急ぎ過ぎで上手くかぶれてない(笑)。

早着替え関連でギリギリセーフ?アウト?みたいなことして笑いとるのって定番なんだろうなきっと。

 

そういえば何役も演じるから早着替えの利便性のために上が白Tなのは納得だけど、下はなんで地下足袋にボンタンみたいなとび職じみた格好してんだろう……と疑問だったんですけど、最後大山祇神を演じる時にみずらみたいな髪型で、なんかもう「大国主命とかこんな格好してたよね」的な恰好になるので、その時に違和感ないようにあれだったのか…とびっくりしました。

あと沙悟浄の色々はっつけたみたいな衣裳のチープな感じがツボです。というか沙悟浄のサユリさんへの愛が深くてツボです(熱弁)。

 

影絵の演出面白かった

お供の妖怪、とはいっても人間が演じてるので、せんとくんばりに人感あふれてるんですけど、長距離移動する体の時とか、白布の後ろで影絵としてリアルな妖怪フォルムのやつがぴょこぴょこ動くので「ちゃんと妖怪だった......!」となりました。

 

あと私を裏切った(根に持つ)三蔵法師が精進料理をかっこむ時、玉龍も一緒に食べてるんですけど、影絵なので大きさを調節してて、玉龍の方の影が三蔵法師に比べてめちゃくちゃ大きく映ってたので、やっぱり「妖怪だ......!」となりました。

 

何回か影絵を使った演出って観たことあったんですけど、だいたい畏ろしい感じとかホラーな感じで使われてることが多かったので、ここまで笑えてキュートなやつは初めてで、楽しかったです。

あれでも妖怪の表現だからホラーといえばホラー......?

 

道祖神(警察)意外とスレスレのこと言ってる

道祖神、たしか全部成河さんが演じてて、三蔵法師たちを色んなとこに導いて言って話をどんどん進めてくれる便利な存在でした(たぶん狂言回し的な役割に近いからこの11役はできれば兼ねるのがベストなんだろうと思う)。

出番ごとの最後らへんに「どうも〜この辺の道祖神です」ってボンタン風ズボンのポッケからちっちゃいお地蔵様的なものを取りだしてたので、「証明書かよ......!」とツボってました。ズボンに紐付きでくっついてるのもやばい。たぶん落としたら警察手帳みたいにペナルティでもあるんですかね。

 

あと結構最初の方に、警察官に見えた道祖神が、白輪園長に向かって「いや〜これはあなたの思い込みを利用してっていうか......(要はあなたが私のことを警官だと思ってるから警官に見える)」って喋ってて、「スレスレのネタバレしてんじゃん」、とまたニヤッとしてしまいました。

手作り感あふれる舞台美術で、シンプルで、観客の想像力に頼る部分もめちゃくちゃある舞台で、警官に見える人が「いやでもそういう風に色々見えるのって実は思い込みで〜」ってとんだメタ発言ꉂ(ˊᗜˋ*)。

 

他にも劇中の人物なのに、劇外からツッコミ入れるみたいなセリフがちらほらあったので(ブレヒトとか喜びそう)、意外と細かく見ていくとさまざまなレベルのセリフがありそうで、ちょっと戯曲読んでみたいと思いました。

沙悟浄とサユリさんのアパート(木箱の中)で起こる出来事について、その木箱の枠の外(なんかプロセニアムアーチの外みたいにも見える)に腰掛けてる園長がつまんなそうに聞いて茶々入れてたりとか。ここ好きだった。

 

売ったりしないかな?買うけど全然???(圧)

 

こんなの最初に観られたらきっと演劇やってみたくなるし大好きになりそう

そしてたぶんそれが狙いな気もします。たぶん大成功だよ!!頼むから地元にも来てくれ!!(青森)

 

なんていうかPLAY(演劇)らしくPLAY(遊び、あそび=余裕)の雰囲気満載なのが、とにかく久しぶりに観た感じがして最高です。

今回は内容も明るくて軽くて楽しい感じだったけど、こういうのを超ド級のシリアスな内容の時とかでも要所要所に挟んでくれるといいのに......。なぜかシリアス路線だと全編映画っぽくなるという摩訶不思議現象が起きたりする......。

 

KAATでの公演期間は短いけど、ツアー企画でいろんな劇場めぐるらしいので、観に行ける方は観に行って〜そして楽しんで〜!(と勧めやすい値段なのもとても良き)って感じです。

 

あと、「アフタートークもあって得した気分だしとにかく楽しかった〜」ってるんるんでKAATの出口に向かったら三蔵法師のお父さんが普通に立っててマジでビビりました。マスク無かったらきっとアホみたいに口開けてて醜態晒してたのでマスクありがとう......。

 

ところで、今日は例のシラノ・ド・ベルジュラックをプレイハウスに観に行ってきます。あのパンフレット騒動があったやつ。

ダイジェスト映像観る限りだいぶジェームズ・マカヴォイのやつに感覚似てそうだけど、はたして日本語のラップを聞き取ることが私に出来るのか......!!乞うご期待(!?)