感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

歌が上手すぎて「ラップやってる場合かよシラノ……!」と思ってしまった『シラノ・ド・ベルジュラック』

2022/02/15

東京芸術劇場 プレイハウス 13:00 ※珍しく1階席で!

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【追記:2022/02/17】

すみません誤字脱字はいつもの事なんですけど古川雄大さんの漢字を最初「古川雄太」って書いてましたほんとすみません......(´-` )

 

クリスチャンの代わりにロクサーヌへ即興で詩を読む最後の辺りで、シラノが何フレーズか歌っているんですけど、ラップと桁違いの上手さで「なあシラノ、たぶんその美声をロクサーヌの前で披露すれば、割と良い雰囲気になるんじゃないかと思うんだ……」と、脱力してしまった、という話です。

よく大きな劇場でやっている、日本語へ翻訳された海外のミュージカルとかをあまり観に行かないので、ミュージカル俳優さんの歌唱力舐めてました。こんなに一気に色々(「表現として歌っているだけで、シラノが劇中世界で本当に歌っているわけではない」という可能性とか)持って行ってしまうとは思わなかったです……。

あと古川雄大さん、ずっと名前を「こがわゆうだい」だと勘違いしてました……。検索してみて初めて知った……。「ふるかわゆうた」って読むんですね……。『恋です!』も毎週楽しく観てたのに……。

 

一番気になっていた演出も、「谷賢一さんだからなんかしら面白いだろう……」と思って観に行ったのが的中で、小型カメラとか字幕投影とか、観てて「うおおお!」ってテンション上がる部分が多くて良かったです。

 

全体的に、普通に面白くて、3時間弱だから1万超えているチケット代に対しての絶望的なまでの不満感とかも少なかったんですけど、やっぱりNTLiveで観たジェイミー・ロイド演出、ジェームズ・マカヴォイ主演(調べてみたら再演してるみたいです)の方が私は好き!!という感想に落ち着きました。

youtu.be

このブログでも感想書いてるんですけど、今よりももっとひどい書き方しているので自分で読んで死にました。きつい……。

 

 

公式とダイジェストと舞台写真

youtu.be

www.cyrano.jp

www.geigeki.jp

enterstage.jp

 

「言葉の演劇」で起きた皮肉すぎる「パンフレットに翻訳者の確認も取らずに、かつ勝手にいじったセリフを載せる(しかも超長文)」事件については、公式サイトに詳しく書いてあると思います。

たぶん公演終了後しばらくしたら公式サイトも消えると思うので、修正を急がないと……。

実際にパンフレット買って、チラッとだけ(パンフは感想書き終わってからじっくり読む派)見たら、びっくりするぐらいの文量でセリフが載っていたので驚きました。

よりによってなんでこの劇で起こしちゃったんだよこんな事件……。

 

日本語だと厳しいのかもしれない

というか、日本語上演を観て、「私はジェイミー・ロイド版のやつを観たときに英語の音の面白さに惹かれたんだなあ」ということがよく分かった、という感じでした。

マカヴォイ兄さんの発音と発声が単にツボという個人的な理由もあるので余計に……。

 

ラップ監修も益田トッシュさんという方が入っているみたいだし、私ラップ全然詳しくないんで「全員普通にラップ出来てるなあ~すごいな~。あとよく英語の韻を日本語に翻訳したな~やべえ~」という感じなんですけど、原文の歯切れの良さ(英語の方が子音が多いので当たり前だけど)とかノリの良さ(英語だと日本語みたいに全部に母音つかないし)に惚れてしまってた身としては「なんか全体的にもっちゃりしてる……」と感じてしまいました。

 

日本語には日本語の良さがあるっていうのを、能楽とか歌舞伎とか、あと上手い翻訳によるセリフとか、(音楽はあんまり詳しくないけど)桑田佳祐さんの歌とか聞くと思うんですけど……、今回はなんかそこまでじゃなかったというか……。

あ、でもなんとなくシラノの友達のル・ブレ(章平)はラップ上手、というか言葉のリズムが上手かった気がします……。

 

あと、そもそも私がラップに慣れてないというのが大きいかもしれないです。たぶんだけど、観客席のテンション見る限り、そういう方多かったんじゃないかなあ……。

ロイド版だと、お客さん結構吹き出す時があったんですけど、たぶん向うの観客は演劇にラップが入ってるのに慣れてるのかもしれない……知らんけど……。

 

そもそもラップに慣れてない

そういう「慣れていない」層向けに補うためなのか、ラップの部分で何回か字幕(舞台の横幅いっぱいに、大教室の黒板みたいに上下に移動する、かなりでかい細長い板が2枚あって、そこに投影されてた。英語上演とかでよくある舞台脇とかに表示されるよりずっと読みやすかった)がコンサート風に映し出されたり、音楽入ったりするんですけど、音楽だけ入ってくる時は音楽にかき消されて聞き取りづらい、という。

ロクサーヌのラップの時は横書きの手書きフォントで、文学専攻の学生だということを思い出すような字幕で面白かったです。

 

極めつけは、部分的にシラノが歌う……、という……。

せっかく上手なミュージカル俳優起用しているから歌わせたくなる気持ちと、あと観客として歌聞いてみたい気持ちはあるにはあるんですけど、最初にも書いたように、歌とラップのレベルの差があまりにもありすぎて、「たのむシラノ1回ちょっと私の言うこと信じてロクサーヌの前で歌ってみてくんない……??絶対好感度あがるし、なんなら意識してもらえるかもしんないよ……??」と謎に混乱しました。

 

あと、どうしても、ギリギリまでそぎ落としてそぎ落として(たしかアンプかなにかの作動音とかが聞こえるぐらい静かだったと思う)、言葉の意味と音だけが前面に立ち上がってくるロイド版の方にものすごく感動した、というのがあってどうしても色々つけ足している(特に聴覚的な方面で)のが、個人的に「うーん……?」となってしまいました。

 

ロイド版に倣ったのか、階段や椅子を用いて人物間の距離を物理的に離したり、登場人物同士は大体客席に向かって話していて、登場人物同士が向き合って話したりすることが極端に少なく、全体を通して、意思疎通が寒々しいというか、人間関係において孤独な印象がある感じだっんですけど、妙にロマンチックなピアノの音楽とか、あと歌とかが入ってきてしまって、微妙にちぐはぐな印象を受けてしまったというのもあります。

せっかく、舞台美術は極限まで減らして、がらんと広いプレイハウスを使っているのでもっと孤独感を強調することもできたんじゃないかとも思うんですが……。

あとやっぱり歌とか音楽って、そもそも巻き込んだり共感を誘ったりするものだったりするから、孤独感とかとは相性が悪いんじゃないかと思ったりするんですが、どうなんでしょう……。

ラップに関しては、散文の時代がきて詩が死んだかのように思われたけれど、実は詩が現代まで息づいていることを表すためにマストだから別にして……。

 

小型のカメラを使った演出はすごい面白かった

たまに上からぶらーんってマイクがぶら下がってくるんですけど(ダイジェスト映像にもある)、どうもそれにカメラがついているみたいで、その映像がリアルタイムで、さっき書いた黒板みたいな板に映し出されるのが面白かったです。

 

登場人物同士が、物語上はかなり近くにいる設定でも、舞台上では1階部分と2階部分にいるレベルで離れていたりするので、カメラでドアップの顔面の映像が映されると、なんだか同時に、物語上での物理的距離と、舞台上で示される登場人物の心理的距離を観ているみたいで、すごく面白かったです。

ド・ギッシュがロクサーヌに「戦争行ってくる」と告げるシーンなんかまさにそんな感じでした。

1階部分にドギッシュがいて(だからで撮影されるのはド・ギッシュの方)、2階部分にロクサーヌがいる。最後にド・ギッシュがロクサーヌにキスするんだけど、カメラにキスをする(映像にはたぶんロクサーヌの視点に近いものが映し出されることになる)。そのあとロクサーヌは2階部分でキスされたと思しき部分を拭う、みたいな感じになってた。あとここでド・ギッシュがロクサーヌに渡した数々の自画像が投影されるのも吹いた。堀部さんノリノリじゃん(笑)。

 

あと単純に、リアルタイムの映像が挟まれると、なんだかドキュメンタリーを観ている気分になって、舞台上で起きることに没入しやすいというのも個人的にあります。

なんにせよオペラグラス持って行かなかったので、顔面がドアップで観やすかったのは素直に嬉しかったです。

 

シラノ……こじらせてない……!!

今まで見たシラノが、吉田鋼太郎さんとマカヴォイ兄さんだった、というのがデカいと思うんですが、こんな外国のストリートとかにいたヒップホップ青年がそのままお仲間引き連れて軍人になっちゃった、みたいなシラノ初めて見ました。

 

なんか勝手に、シラノって、そこそこ年齢重ねて男らしくて強くて、ある程度力も自信もあるように見えて、実は内面ではコンプレックスとか劣等感をこじらせまくってる、みたいな、めんどくさいけどかなり可哀そうな中年のおっさん、みたいなイメージがあったんですけど、今回のシラノはいい意味でも悪い意味でもまだ若くてピュアな感じがしました。ちょっとナイーブな若者というか。

でも、若干その印象がクリスチャンの方と被っているような気がしないでもない……。そのせいかどうもロイド版に比べてクリスチャンの印象が観た後に残らない......。あと古川さんの顔面がなんかもう「クリスチャン!!」って感じじゃん……(支離滅裂)。

 

こういうシラノもありだな~というのが発見でした。でも今度なんかミュージカルでも観に行こうかな……。

 

ド・ギッシュ伯爵(堀部さん)、ボイパできるんですか!?

マジでびっくりした。しかも上手いし。ええええ。

あまりの上手さに笑っちゃいました。

 

あと伯爵が出てきたときの、舞台がしまる感じなんなんでしょうあれ。すごい。

 

個人的にゾッとしたのは、兵士たちがノリノリで「シラノ!シラノ!シラノドベルジュラーック!」って応援団みたいなフリ付きで盛り上がってたところに、伯爵がぬるっとまぎれ込んできて、その場面の最後に「楽しいとこ邪魔したねえ」ぐらいのテンションで退場していく部分です。

伯爵が下手に退場して行く際に、シラノたちに向かってあざけるように小声で「シラノ!シラノ!シラノドベルジュラーック!」って言うんですけど、Kの音を口の中ではじくように鋭く言った時に首の部分に手を持っていくので、「なんだ逆らったら首飛ぶぞってか権力者こえええええ!!」と思いました。それでいて笑いも取っていくんだから余計に怖い……。

 

書き忘れたこと

ロクサーヌの恰好が!おしゃれで!!かっこよくて!!!かわいい!!!!

あと超似合ってる!!!!!

全体的にヒップホップな感じの雰囲気でおしゃれな衣裳ではあったけど、ロクサーヌの恰好まじで好き……。真似したいけど華奢な人じゃないとあそこまでは似合わない気がする……。

【追記:2022/02/17】Twitterの方で聞かれたので、一応こっちにも貼っておきます。

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シラノから言葉を奪ってしまいたかったという可能性も無くはないかもです。あるいはシラノの口から出る言葉を自分の口から出るようにしたかったとか......。かなり無理があるけど......。


あとそういえば、幕間とか冒頭とかに「登場人物名+生没年」みたいな字幕が投影されていて「みんな死んでる」系の演劇だったんですけど、これは多分演出の谷賢一さんの演劇観な気がします。

 

観て損はなかったです

全体的に面白くはあったので。谷賢一演出、というだけで観ることを決めたようなもんだけど間違いではなくて良かったです。

 

にしても観終わってスマホの電源入れたらラビット・ホールの払い戻しのメールが来てて泣きました……。

ミュージカル方面で有名な俳優さん2人(古川雄大さん、田代万里生さん。生の舞台は今まで観たことない)を、ミュージカルじゃないほうで初めて観る、というとんでもウィークだと1人でテンションが変な方向であがってたので、とりあえずニコール・キッドマンが出てるラビット・ホール観て気を紛らそうかと思います。

 

あと明日は久しぶりの夜公演を観劇するので頑張ろう……。