感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『エブリ・ブリリアント・シング ~ありとあらゆるステキなこと~』

2020/02/02
東京芸術劇場 Theatre East
13:00から
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1人芝居ということで
内容見るまでもなく購入しました。
ド派手な舞台も好きだけど
どっちかというと小劇場で少人数が好きです。
あと単純にイギリスが好き。

チケットにも"お早めにお越しください"
って書いてあったので想像はしてたけど
今めっちゃ流行ってる
「イマーシブ・シアター(没入型演劇)」
型の演劇でした。
学生演劇だと何回か似たようなのは観たけど
ここまでガッツリなのは初めてです。
東京芸術劇場のシアターイーストも
ここまで形が自由に変わるとは知らなかった。
自由度が高いのも小劇場の魅力だと思います。

佐藤隆太さんが開演前から
ドタバタポストイットを配りながら
上演参加を呼びかけてるので
つまりもう開場した状態から開演ということです。
早めに行ってよかった。
さすがに一人で行ったので
緊張して参加は無理だったけど楽しかったです。
結構近くまで来られるので
ファンの方は発狂もんですね。
というか上演中に運が良ければ
主演の方とハイタッチできます。
私は出来ました。単純にラッキー。
席位置の確率的には2分の1です。
ということは2回観に行けば確実。
金銭的に余裕があるならありだと思います。
観客参加型なので演出は常に変わるので。
出来れば私も何回か観たかった...(遅い)

開演前からそうやって
かなりアットホームな雰囲気があるので
外国の演劇ってたまについて行くのが
大変だったりするんですけど(テンションとか)
そういうことは全くなくむしろスムーズでした。
バラエティとかで司会業やられているから
単純にまわすのが上手なのもあるのかな。
どうなんだろう。

にくい演出はいっぱいあったんですけど
小さな古代ギリシアの劇場みたいな円形劇場型で
観客席の椅子が前に行けば行くほど
(舞台に近づけば近づくほど)
セットの1部みたいになってるのが良いなと。
びっくりしたのは開演直前、係の人が
最前列の座席のうちいくつかに
コートとかチラシとか置いてあったのを回収して
てっきり"他のお客さんが座るもんだ"
と思ってた席が実はセットだった
ということです。
これで、もともとほとんどなかったけど
完璧に客席と舞台の壁は消えましたね。さすが。
自分の座席に行く時に舞台を横切らないと
座れないのも新鮮でした。
良いのかな...みたいな。笑。

舞台セットとか照明のイメージは
イギリスのフラットとかアメリカの夜の街
みたいな印象です。
英米ティーンエイジャーが主役の
ミュージックがストーリーに組み込まれてたりする
そんな映画の雰囲気に近いかな。
初演はイギリスだけど、参考にしたのは
アメリカの俳優さんがやられた舞台というのも
関係があるかも...です。
実際この劇もかなり音楽多用です。
さすがミュージカル・コメディの国、イギリス。

役者さんがその日来られたお客さんの中から
一見ランダムに
でも戯曲の雰囲気にぴったりなお客さんを
キャスティングしていくので
ハプニングの連続です。だからこそ楽しい。
ワークショップに近い状態。
お父さんと、カウンセラーに割り当てられた方々
とっても素敵でした。
お父さんの結婚式のスピーチには感動です。
佐藤さんも「残りの公演ぜひ来てください!」
ってなってました。観客皆同意だったと思います。
もちろん即興です。
でも、それがむしろ
ガチガチの決まりごとの中進む演劇よりも
"真に迫って"感じられたりするので
不思議です。
ピーター・ブルックがハプニングが好きなのも
わかる気がします。
(客席に向かって実弾発砲はやりすぎだけど)

トークイベントとも、ライブとも
グループカウンセリングとも、演劇とも
判断がつかないような、そんな空間でした。
主人公の話を聞いているような
かと思うと
主人公の追憶、ともちょっと違う
自叙伝的な小説中の登場人物として
自分たちが存在しているような
今まで味わったことの無い
奇妙で面白くて、でも不快ではない
そんな感覚です。
すり鉢状になっているから
低くなった中央の舞台から
イメージが上にぶわっと広がっていく
そんな印象があるので
それが構造的に主人公の頭の中のいるような
雰囲気を出しているんだと思います。
最高です。

テーマは生と死、自殺とは、生きるとは?みたいな
ちょっと重めなんですけど
ハッピーエンドなので後味は最高です。(2度目)
Keep going! Get better!の意味が
人生という意味で自殺をとめる説得にも
この劇の進行そのものにも関わって聞こえて
二重にも三重にもしみてきます。
自殺に関しては誰もが考えたことあると思います。
泣いてらっしゃる方
たくさんいらっしゃいました。

主演の方に関して
ドラマでしか拝見したことなかったんですけど
等身大の人物を
劇場内で等身大として表現するのが
ここまで巧みだとは思いませんでした。すごい。
個人的には狂った役より身近に居そうな人を
演じる方が難しい気がします。
演技とかしたことはないので完全憶測ですが。
今度は韻文形式とか古典とかで観てみたいです。
ちょっとファンになりました。

開場と開演の境目で
脚でリズムをとりながら
すっと役に入っていくのって
普通の第四の壁形式の演劇だと
あんまり観られないので
いいものを観てしまったなあという感じです。
観てしまったから、観ている
そして観られていて、参加している
そこまで体験できるのは
ほんとに稀です。

イマーシブ・シアターみたいな演劇
それに限らずそういうパフォーマンス
日本でもじゃんじゃん増えればいいなあ
と思いました。
流行るのも分かります。これはやみつき。
気まぐれで買った過去の私グッジョブ!