感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『フリーバッグ』

2020/03/19
シネ・リーブル池袋
13:00-14:35
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(画像はNTLive日本公式Twitter@ntlivejapanより)



コロナウイルス感染網をくぐりぬけ
まだ感染確認されていない地元から東京へと
気持ち的に頑張って戻ってきて
滑り込みで観に行ってきました。
もはや『フリーバッグ』の為に戻ってきた
と言っても過言ではない。(本当は歯医者です)
Amazonプライムでドラマも観られるらしいけど
Netflix派なのでかなわず。
動画配信サービスはいつか国境超えて合併しろ。
それでこそビバ、グローバル社会。(違う)
そろそろ日テレの「続きがHuluにあるよ!」
にもキレかけてます。地上波でやれ。
ほんとにもう...

Fxxk you!(クソッタレ)

って感じです。
ちゃんと伏字です。ここ大事。テスト出ます。
というかふざけるのも大概にすると
『フリーバッグ』ラストのセリフですね。
最高に痛快でした!
芸達者な英語版女性落語を見ているような
(ちょっとdirtyな下ネタ多め)
ざっくり言うとそんな感じです。
赤い椅子しかない舞台に
女優さんが出てきただけFooo!ですよ。
どんだけ人気なんだ。
素晴らしすぎるのか。
超分かるけど。
いやほんと頑張って戻ってきて良かったです。

予告でもあったけど
下ネタは確かにオンパレードでした。
放送禁止用語が出るわ出るわ
でも、個人的にはR15+つけるほどかなあ
って感じです。
ほら今のお子さんはませてるから...(偏見)

主演のフィービー・ウォーラー=ブリッジさん
(名前長いですね...というかどれが名前)
天才です。誇張なしで。
80分ぐらい噛まずに喋り倒すってなんじゃそら。
そういえば1人で何役もやるのも落語っぽいです。
それにしても姉の髪をいじり倒す時
15~30秒前後無言の顔芸(失礼)だけで
どっかんどっかん笑いを引き起こすって
一体全体どんな芸当。
脚本もブリッジさんが書かれたそうで
いや演技も最高で脚本も最高とか天才かよ、
って感じです。神は二物を簡単に与えますね。

物語の構造としては入れ子構造に近い...
ような気もしなくはないような...。
就職の面接に来て
面接でも"いつも通りにやらかして"
面接する人が呆れ返って出ていこうとするけど...
って所から"ここに至るまで"を回想っぽく
"彼女"が喋り出すって感じ...なのかな。

脈絡も無いようにすら感じる
小さな出来事の話の連続で
頭に思いついたまま喋ってるって感じでした。
本当に観客に向けて喋っていて
反応し終わるのを待ってくれたりするので
いっそう"喋られている"感じで引き込まれる。
また語り方が、というか脚本なのかな...
話の運び方が面白いんです。
Aの事柄があって
そのAからBの事柄につながるまでに
つまりA→Bの"→"部分に
体感として結構な沈黙があるんです。
大体にしてBは爆笑をかっさらう下ネタです。
沈黙がその面白さを増している気がする。
思いっきりタメてからジャンプする感じです。
またその沈黙があるから
B(下ネタ)に繋がるAの事柄を
一瞬観客は考えさせられるような気がします。
共感とか反発とか同情とか
なんでもいいんですけど
Aの事柄を聞いてどう思ったか自分で確認する
そういう時間がある。
そういうのがあるから
下ネタが哲学的にも聞こえちゃったりします笑。
深い二重の意味とか
人間の真理とかを突いているような気がする。
でも喋っている"彼女"は
ただただここまでに至る経緯を
性描写まで赤裸々にやけくそに語っているだけで
その中でたまに思い出したり、耽ったり、
自分が言ったことを気持ちの部分で反芻したり、
なんなら再現までしちゃったり、
そういうことをただ必死にやっているだけなんだ
とは思いました。
"彼女"にそういう意図はないのに
結果的にそうなっているというか。

あと後半、彼氏に局部の画像を送るために
トイレで写真を撮っているシーン、
とっても滑稽だったんだけど
愛嬌があるというか、可愛いなというか
そんなプラスの感情を見てて感じました。
自分でもビックリですね。
いつの間にか"彼女"に対して
友達のような親近感すら抱いてました。
また最初の方に"sexってちょっと変だよね"
というようなことを
突っ込んでいたような気がしますが
個人的に賛成です。
sexの体勢自体ちょっと動物っぽくて面白い。
更に性とかsexとかそういうことに対して
必死になっている人間って
社会生活から見ると馬鹿馬鹿しいようだけれど
突き詰めて考えると
人と人との関わり合いの一種に
含まれるもので
ただ単に、下品だ、馬鹿みたいだ、って
割り切って笑い捨てることは
やっぱり出来ないようなものだと思いました。
だからそういうこと対して必死になってたり
面倒には思うけど、なんだかんだで
ちゃんと付き合ってあげたりすることは
ある意味思いやりというか
そういう温かみを予期せず感じて
下ネタの可能性を発見しました笑笑。
侮れない下ネタ。

それにしてもどうしてこんなにも
下ネタのオンパレードで"彼女"は語るんだろ
っていうのはずっと思ってたんですが
"彼女"の中では、結局のところ

people are shit.(人間はクソ)

なんだってところに
個人的に落ち着いたような気がします。
"彼女"自身のセリフです。
多分直訳だとクソって意味だけど
印象からは下半身からの生殖とか排泄欲求とか
そんな感じがしました。

"だからエロ動画見ることをやめられなかったり
sexのことばっかり考えちゃうのは
当たり前(ほとんど本能)でしょ?
みんなも言ってないだけなんでしょ?
それとも私がおかしいの?
絶対絶対違うよね!"

って言うのが
割と説得力を持ってズドンときました。
きちゃいけないような気もしますが笑。

また人々がshitなのは
前提として

people make mistakes.(人間は間違う)

って言うのもあると思います。
まあ当然ですね。ミスしないなら人間じゃない。
毎日毎日上手く行くように
上手く生活できるように必死だから
間違いは起こしてしまうし
そういう日々の、生きていくという意味では
単純作業の繰り返しの中で
アイデンティティが不安になるのも分かります。
だから本気にできる自身の存在を感じるため
誰とでもヤっちゃうし
(しかもこれは"当たり前(本能)"なので
正当性がある...と"彼女"は思っていそう)
その相手が親友の彼氏だったり
行きずりだったりで、結果的には失敗したり
間違えたりしちゃうし...
の堂々巡り。
その結果が、たまには死すら招いてしまう、
または死に関連付けて考えられなくもない
とかなんとかそんなことになったりして、
それがまた、最初から最後までこの劇に
暗い影を落としていたりもします。

でもこの劇が強烈に痛快なのは
"人々がmistakesをするから、
消しゴム付きの鉛筆が存在する"
という考え方ですね。
"彼女"の死んだ親友の言葉です。
なんか確か哲学者か誰か偉い人が

"日々の生活は大切だけど
生全体としては断じて意味は無い"

とかなんとか言ってたような気がしますが
それに近い感じです。
どうせ消せるような事なんだから
間違いについてクヨクヨしても、
そして多分間違うことを怖がっていても
意味無くない?って感じです。
"彼女"、確か彼氏に
"keep up(切り替えが早い)"と
言われていたような気がします。
"keep up"自体、高校では
"ついていく"って意味だったので
目まぐるしい物事の変化にも対応していける、
みたいなニュアンスだと思います。
つまり起こってしまったことを考えると言うより
今目の前のものに
しがみつく感じに近い...のかな。
切り替えが早いということはつまり
必死であるということになります。

"どうせ人間なんてクソで、
必ず間違えちゃうんだから、
悩んだりつまづいたりは
もちろんするけど
いっそ好き勝手、今を生きてやるぜ!"

っていう投げやりでやけくそ気味だけど
ある意味ではポジティブな方向に
終盤には到達したように感じる彼女の思考が
私は嫌いじゃなかったです。
切り替えが早いのも、極端な思想に行くのも
若さゆえって感じもしますね。
("若い肉体"ってセリフにあったので
多分行ってても25歳ぐらいかなと思います。)

おそらく面接官の社長も
同じことを感じたんじゃないかなあ、
なんて思ったりしてます。
なんだかんだで面接を
やり直させてもらえることになった彼女が
社長に"君の履歴書funnyだね"
って一回目の面接と同じように言われた時に
大声で"fxxk you!"って叫んで幕が切れました。
なんか文章ではとても表しきれない
必死に我武者羅に思うがまま生きてる
(思うがままの人生ではないけれど、
人生ってそんなもん、な気もしてここも共感。)
そういう女性の話だったように思います。
必死さが根底にあるので憎めないし、
そこまで吹っ切れてしまうのは羨ましいし、
だからこそ代弁してくれる"彼女"が
とっても痛快なんだと思います。
最後の"fxxk you!"聞けただけで
なんかもういっか笑
ってなっちゃうような劇です。
ドラマで観たら
また印象変わりそうですね。
親友の死のシーンとか出されたら
流石にここまで一本筋の解釈は出来なそうです。

グダグダ書きましたが、詰まるところ
フィービー・ウォーラー=ブリッジさんに乾杯!
って感じでした。
いやマジ最高。(下がる語彙力)
あと個人的なことですが
この作品、NTLive観始めてから
記念すべき?10本目でした。
予期せぬアニバーサリー。
今日の感想はお下品気味ですが
アニバーサリーなので
読み返した未来の自分も許してくれるはず。
失敗もあるさ。人間だもの!
というわけで、クソッタレ、いや、
Fucking COVID-19、お前は早く収束しろ!