『ヘンリー五世』
2020/08/10
シネ・リーブル池袋
『ヘンリー五世』に関しては言わずもがな、
コーラスの処理をどうすんのかなあ...って
ところが大注目ポイントですよね。
控えめに言って最高だった...!!!
もともと『ヘンリー五世』って
"This wooden 'O' "のかっけえセリフ以外は、
そこまで好きな話ではなかったんですが、
正直演出では今までの『嘆きの王冠』のうち
ダントツで面白かったと思います。
コーラスが最初ナレーションなのは
まあまあ予想通りって感じだったんですが、
最後の伏線回収が凄かった...。
もともとヘンリー五世の葬式から
始まっているので、全体的に入れ子みたいな、
回想チックな構造になってました。
問題はじゃあ誰が回想してんのか、つまり
誰がコーラスなのか?ってとこですよ。(興奮)
まさかまさか、『ヘンリー四世』から
出てる男の子だったとは...!!
え、多分そうだよね。フォルスタッフの小姓の。
ほとんど黙り役なんですが、
やたら『ヘンリー四世』の最後らへんで
印象的に顔のショットが入ってたので、
"なんだこの子、そんな大事か?"
って思ってたんですけど、そういうことね?!
『ヘンリー五世』ではちょっと成長して、
一応出兵してるんですが、ヨークが
死んだ時に、その傷口を布で抑えた男の子です。
色々物語が終わって、さあ〆のコーラス
ってなった時にヘンリー五世の葬儀の場面に
戻るんですが、その血を含んだ布を持った
男の子が、ちゃっかり宮廷にいるんです。
(なんでかは知らんけど。昇進したのかしら)
その手がアップになって急激に老けていって、
おじいちゃん(ジョン・ハートさん)になって、
誰もいない空っぽの大広間を歩いて、
"And for their sake,
In your fair minds let this acceptance take."
(この芝居を気に入って頂けたら、幸いです)
って最高かよ。それでずっと傍観者として、
画面にチラチラ映ってたのね男の子。
王族の血の記憶と、戦争の血の記憶が
連想ささる血の浸された布で繋げるのも
最高にかっこいいです。痺れる笑。
あ、あとすごくどうでもいい事なんですが、
最後にフランスと和平を結ぶ仲介をする
バーガンディ公を演じられてたのって、
やっぱりハリポタのバーノンおじさんですよね。
リチャード・グリフィスさん、
髪型全然違ったけど、身体的に特徴的すぎて、
"絶対そうだろ"って気になってました。
合ってたのでちょっと嬉しい笑。
あ、あとアントン・レッサーさん演じる
エクセター(ヘンリー五世のおじさん?)が
1番怒らせたらやばいタイプのおじいちゃん笑。
柔らかい迫力が怖すぎます。
にっこり笑って殺っちまいそうなジジイ(表現)
特にフランスに脅しかけるシーンやばすぎました。
贈り物のテニスボールもどうかと思うけど。
あれは確実にフランスが悪いです。
あ、でも個人的にベストアクターは
モンジョワがフランス優位の伝言を
ヘンリー五世にを伝える時の馬かな笑。
モンジョワの馬がいいタイミングで
小馬鹿にしてるみたいに、なくんですよね。
なにあの馬めっちゃ腹立つ笑笑笑笑笑。
いいぞもっとやれ。って思いました。
でも基本的にはヘンリー五世の
神話的な英雄譚みたいな雰囲気漂うように
結構バッサリ色々カットしながら、
綺麗に纏まってました。入れ子構造だったのも
この辺に一役かってそうです。
"むかーしむかし"みたいな感じで。
その上で、完全におとぎ噺にならないように、
戦争の描写は結構リアルを追求してて
バランスの取り方が個人的には好きでした。
ところで、熱した油を防壁から垂れ流すって
当時実際にこんな戦法あったんですか。
だとしたらグロいしえぐすぎです。怖。
ビビって戦いに参加できず
震えてる兵士がいたのもリアルといえばリアル。
ピストルとかね。ピストルのくせに
ガタガタ震えてたしね。
フォルスタッフは『ヘンリー五世』の
冒頭で死んじゃうんですが、お仲間たちは
結構中盤過ぎらへんまでチラチラ出てます。
戦時に乗じて教会から
盗みを働いたバードルフとかもそれです。
完全に軍法違反なので首吊り処刑されるけど、
その首吊り死体を見つめる
ヘンリー五世のショットの間に、
ハル王子時代の(放蕩時代の)
バードルフとのバカ騒ぎのショットが
(『ヘンリー四世Part1』かな。多分)
入り込んでて意味深長でした。
多分、王になるってことは、
フォルスタッフが死んだみたいに、
過去を切り捨てて、友情も全て切り捨てて、
つまり個人を切り捨てて行くことなんだな、
なんて思いました。
王になると全てを失うけど、
そのかわり全てを手に入れることもできる、
とかよく言うし。
こうなってくると一介の兵士に変装して、
潜り込んでからかって遊んでたシーンも
結構納得がいくような気もします。
ちょっと「王」であることに疲れた
息抜きだったのかなあ。
こういうのがもうひとつのテーマとして
ちょっと見え隠れしてたような気もします。
そもそも最初に王座に座る前のところでも、
わざわざ外してあった王冠被ってたし。
そんなヘンリー五世が
キャサリンを口説く時に王冠外すのが最高。
あくまで「個人」として1人の女性に惚れた、
ように思われて好感が持てる。
まあその王冠を椅子に放り投げて、
ケイトの乳母らしき人がびびって
ガン見してるのは笑いましたけど。
そりゃそうなるわ笑笑笑。
この場面唯一コミカルな場面なので、
舞台と同じレベルで笑えたのは最高でした。
それにしても昨日『ヘンリー六世Part1』
観たんですが....
何だこの昼ドラ展開!?
あとリチャード推しがやばいね!?!
もはや『リチャード三世』への布石でしかない
2時間ちょいでした。
まあ...天下のカンバーバッチさんだもんね。
(Part1ではまだ少年なのででてないけど)
キャスティングからして予想はしてたよね。
ハムレットに並ぶキャラだもんね...。
でも個人的にはこのPart1は
ベン・マイルズさんの
サマセットの屑サイコパス感と、
ソフィー・オコネドさんの
悪女感溢れるマーガレット妃のペアが素敵。
そろそろ映画始まる時間が近づいてるので、
『ヘンリー六世』もPart1と2を
纏めて明日書こうと思います。