感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

All My Sons『みんな我が子』

2020/08/04
シネ・リーブル池袋f:id:monsa_sm:20200805110950j:plain



映画館に大学の先生いたけど、
このご時世だから...って言い訳で、
完全にスルーしました笑。どうせ向こうも
一学生のことなんて、そんな覚えてないので
まあいいでしょ笑

(ほぼ斜め前だったので、内心ヒヤヒヤ)

という訳で『みんな我が子』!
2019/10/06にも1回観てるので、
おかわり!って感じで観ました。
何回観てもハラハラするのは凄い...。

当たり前だけどこの間観た時とは、
またちょっと印象に残る部分が違ったのも
自分としては面白かったです。

"金ばかり追っても何にもならない、
そういう世の中になればいい"

っていうドクターのセリフが今回は
結構頭の中に残りました。

冒頭の演出で、
スクリーンにアメリカの国旗と、
アメリカンドリームの典型的な幸せの映像が、
まあつまり裕福な家族が、大きな家が
投影されるんですが、
それを全員見つめるところか始まってて、
そこから徐々にスクリーン(幕)があがって、
彼らの大きな家が前方にぐあーって出てくる、
って感じなんです。

結構すてきな演出ですよね。
全登場人物がスクリーンの前で"立ち尽くす"様子
から始まってるってのがすごい。
資本主義に完全になってしまって、
そういう経済的な成功から逃れて
物事を考えることが生活する上で、
ほとんど不可能になっちゃった...って感じが、
最初っからします。

ほんとにざっくりでいいなら、

人道的な倫理観
→不備があるシリンダーを供給したために、
21人もの人間が死んだのだから、その責任取る。
それはひとつの国家として"たくさんの我が子"を
死なせたも同然だから...?

"Something bigger than family."
(家族よりも大切なものがある)

っていう自殺少し前のジョーのセリフが
端的に表しているような気もします。

経済的な倫理観
→家族を養っていくためには、
ほんの数人の"我が子"を立派にするためには、
グレーなこともやんなきゃダメだったし、
別にそこまで責められることではなくね?

みたいな、対立かなあ、とは思うんですが、
これを真ん中の対立軸として、
色んな方向に発展した対立する概念が、
放射線状に並んでて、その色んな方向に
登場人物のセリフであっちこっち
行ったり来たり考えさせられて、
正直難しくて混乱します。
何が正解とか言えないような...。

(感想書くの遅くなった言い訳じゃない...タブン)

こういう戦争とか資本主義とか
そういうでっかいテーマを、
"あーこういうお母さんとかお父さんとか
息子とかいるよな"って思わせる、家族っていう
それに比べれば小さいレンズで、
巧みに圧縮させたり屈折させたりして
描き出すってどんな天才かよ、と思います。

"Just see it human."
(人間としてみてくれ)

って、シリンダーの欠陥のことについて、
責められたジョーが喋るこのセリフも、
お金が物言う時代だとしょうがない気もするし、
そんな中でも

"You've got to be a little better."
(もうちょっと良くならなきゃ)

っていう息子クリスの主張も頷けます。

"Everything they have is covered with(by?) blood."
(この家にあるものはで覆われている)

ってジョージ(アニーの兄)が怒るけども
資本主義経済の中でそういうきっつい労働とか
犯罪とか絶対に掠ってすらいない商品って、
なかなかにないような気も、しなくはない。
このすぐ後に家の中から出てくる
ケイトのドレスが真っ赤だったのも
意味深と言えば意味深...?

そのケイトが確かどっかで

"None of us change."
(誰も変わってないわ)

って言うんですけど、多分大戦っていう、
とてつもないことを世界全体で経験したんだから、
ほんとは"変わらなきゃいけない"ような
そんな感じに思いました。
あるいは、"変わったことに気づく"かな。

クリスは、あるいは自殺したクリスの弟は
自分たちがいつの間にか
"誠実さの星The star of one's honesty)"を失って
"要領のいい(practical)"やつになっちゃった、
ってことに気づいたのかな、と思います。

まあ、ある程度妥協して
2つの対立する倫理の間でグレーに生きてく、
って感じの事なのかな、と。

1回そうなってしまうともう二度と
"誠実さの星"は取り戻せないので、
星をいつまでも取り戻したいともがく、
例えばクリスがお父さんを糾弾したみたいな、
そういう生き方は辛いし、
反対に、お父さんのジョーみたいに、
経済的な成功が全てだ、みたいな考え方でも
どうにも生きていけないようにも思います。

(だから死んじゃうわけですけど)

お父さんが自殺した後に
"そんなつもりじゃなかったのに"って
大号泣するクリスに向かってケイトが

"Forget now.Live."
(忘れるのよ、生きるの)

って言うのが全てかなあと。
"誠実さの星"を失ったことも、
間でグレーに要領よく生きてることも、
全て忘れることでしか、
楽しく生きることはできないのかな、
と思いました。

(しかもここで大きな家が、ぐぐぐって
後ろに下がりながらぼんやり暗転。
だんだん忘れてく感じがして最高に好き!)

つまり、要約すると、
"何この劇、救いが『リア王』並にない!"
こんなにラストで全登場人物が
大号泣でボロボロになるってやばくないですか。
観てるこっちが辛いわ。ほんと。

そして何とか書き終わったぜ感想。
『フォリーズ』の感想も残ってるけど、
とりあえず今日は『スカイライト』を
観に行ってきます!
蒼井優さんがやられた新国立のやつは、
観たので、どうなるのかな。楽しみ!