感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

King Lear『リア王』(記念すべき?100記事目!)

2020/08/24
シネ・リーブル池袋
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※どうしても100記事目としてあげたくて、
急いで書きました。誤字脱字酷いけど力尽きた…。

いつの間にかブログも100記事目でした。
ちなみに今回のアンコールで
観たことないやつで1番楽しみだったのも
イアン・マッケランさんのこの『リア王』です!
リア王(80歳以上)に年齢近くて、
実際に『リア王』演じるのってあんまり観ない...。
体力精神力おばけじゃないと無理じゃん?

てか『リア王』自体は正直苦手です!!
救いがないし、観てて普通に辛い!
ハムレットとかが死んだところで、
どんな名演だったにしろ多分別に泣きませんが、
リア王』だけは辛すぎでまじ泣ける...。
しかも観客との関係を親密にするために、
わざわざデューク・オブ・ヨーク・シアターの
客席まで減らしてくれちゃってまあ...ほんとに...
四大悲劇の中で一番げっしゃりします。(›´ω`‹ )

...なんか出だしのインタビューで、誰かな...
ちょっと誰だか忘れたんですけど...
多分ジョナサン・マンビィさんか、
イアン・マッケランさんだったと思うんですが、
リア(リア王だと題名と混乱するので)のことを

"I can do anything I like."
(したいことはなんでも出来る)

って思い込んでる人、って形容するんですが、
そういう人が、狂気の中に陥って、
人間なんか、王だった自分なんか、

"Nothing"
(なんにもない)

存在でしか無かったことに気が付くっていう...。
まあそんなのが主題の劇なんですけど...。

もうここまで書いただけで、
かなりゲンナリきています。頑張る。


戯曲で言うなら多分端的にここかな。
第4幕第6場だと思う。

"they told me I was everything;
'tis a lie, I am not ague-proof.
"
(ヤツらはわしを全てだといった。
そんなの嘘だ。熱すら防げないのに!)

なんでこんな考えに至ったかというと、
今度はここ。第3幕第4場。

"Is man no more than this? Consider him well.
Thou owest the worm no silk, the beast no hide,
the sheep no wool, the cat no perfume.
Ha! here's three on 's are sophisticated!
Thou art the thing itself: unaccommodated man
is no more but such a poor bare, forked animal
as thou art. Off, off, you lendings!
come unbutton here.
"

長いけどしゃあない、頑張って訳す。

人間ってこんなものなのか?あいつ
〈哀れなトムになってるエドガー〉のことを
よく考えてみろ。蚕から絹を借りてる訳でも、
獣から皮を借りている訳でも、羊から羊毛を、
猫から麝香を借りている訳でもない。
それに比べてここにいる俺たち3人ときたら!
〈リア、フール、ケントのことかな?〉
お前〈エドガー〉は"ものそのもの"だ、
飾りをとった人間なんて、こんなにも哀れで、
裸の二本足の動物にしか過ぎないものなのか?
お前のように?...脱げ、脱ぐんだ!こんなもん!
ボタンを外してくれ!

んでもっかい第4幕第6場にもどって、
多分『リア王』の中で一番有名なセリフです。

"When we are born, we cry that we are come
To this great stage of fools
"
(人間、生まれた時に泣くのはな、
阿呆どもの舞台に引きずり出されたのが
悲しいからだ)

...あまりのリアの迫力に泣きかけたよ。辛い。
てか、ここのセリフ、『ゴドーを待ちながら
に似たのがあって、エスドラゴンの方なんだけど

「人はみな生まれたときは気違いさ。
そのまま変わらぬバカもある」

こんなんだったと思います。そっくり。
きっとベケットがパクッたんだね(失礼)
不条理演劇の代表みたいな劇に、
明らかに『リア王』のパクリじゃね?のセリフが、
これ以外にも結構あるんですけど、
今回の演出もそんな感じでした。

だって最後に、コーディリアをリアが
抱き抱えて出てくる場面、
コーディリアの首に首吊りの紐かかってて、
後ろに真っ黒な木が一本映ってるって...。
完全に『ゴドーを待ちながら』じゃん。
しかもちゃんと、リアがその首吊り紐を、
自分にわざわざかけてるのに、
首を吊って死ぬ訳ではない、
つまりなにか行動を起こして死ぬ訳ではない
って、いやもうほんとベケットすぎて辛い...。

リア王』だけでも辛いのに、
ベケット掛け合わせてくるとかマジで反則。
キレちゃうよ精神が!やめて!(褒めてます)

(どうでもいいんですが、
今まで映像とか生とかで観た舞台の全部で、
唯一途中で"もうとめて!"って思ったのが、
ベケットのAct Without Words IIです。
あれは精神病んでる時に観たら、
多分9.5割茫然自失になる。まじで。
パンドラの箱開けた人の気分。
希望も無くはないけど辛すぎる)

あ、ちなみに、リアが首吊り紐を自分に
かけながら言うセリフはこれでした。

"My poor fool is hanged."
(わしの可愛い阿呆が絞め殺された)

よく、コーディリア役の俳優さんが、
フール役(道化役)を兼ねることが多いんですが、
今回は全く別の俳優さんがやられてました。
だから、ここでの"fool"は
コーディリアのことだけを示していて、
またリアは自分が"foolish(愚か者め)"で
あることにその前の段階で気づいているから、
このセリフを言いながら自分に首吊りの紐を
かけるって演出?演技?は、

コーディリア=Hanged fool←それにすり寄るリア

みたいな構図になってて面白かったです。

それにしても今回の一番の問題は、
このコーディリアの描写の問題のような...。

このコーディリア、傍白しないんですよね。
だから、えーと、ここか、

Cor. Nothing, my lord.(言うことは何も)
Lear. Nothing?(何も?)
Cor. Nothing.(ありません)
Lear. Nothing will come of nothing: speak again.
(何もない所からは何も生まれない。
もう一度言ってごらん)

(劇冒頭から、テーマであるNothingを
ここまで短いスパンに組み込んで
観客の耳に覚えさせるシェイクスピア天才かよ)

このやり取りのまえに

"お父さんをどれだけ愛してるかなんて、
こんなちっぽけな舌で言えるわけないじゃん"

みたいにコーディリアの傍白が、
要は、観客への本音の吐露みたいなのが
普通はあるので、その後勘当されちゃう
コーディリアが"めっちゃ可哀想、
勘違いなのに"ってなるんですけど、
今回はそれがカットされてる上に、
コーディリアだけが黒人の女優さんで、
スタイル抜群な上に、口調がかなり強め。
(アマゾネス役とか似合いそうな感じです)

ケント伯が女性なこととか吹っ飛ぶレベルで、
"かっこよくて強そうなコーディリア"でした。
それ以外の主要人物は、悪役でも、
ちゃんとこっち(観客)に本音を喋って
くれたりするので、なんか憎めないんですが、
こうなってくるとコーディリアの異質感が凄い。

しかも今回はコーディリア=フール(道化)
って役のキャスティング上なってないので、
フールと、コーディリアが、
リアに対して同じような立場であった、
みたいな意味合いも消えてるし...。
???で混乱の連続でした。

つまり要はなんか、コーディリアが
ほんとにお父さんを愛してるのかイマイチ???
って状態になってて、それをなんとか、
イアン・マッケランの名演で、
ふわっとカバーしてた、みたいな。

そもそもな話、コーディリアって、
「やさしく、物静か」なんですよ?
ちょっと男勝りすぎなキャラ設定過ぎませんか...。

それか、あるいは、みんながみんな、
「阿呆どもの舞台」で血みどろになりながら、
醜悪にひいひい喘いでいるのに、
一人"お綺麗なまま""天使のごとき綺麗事"を
言い続けるコーディリアの非現実感を
強調して際立たせるなら成功してると思いました。
ただそうなってくると、天使的な感じが
あった方がいいとは思うんですが...
なんかなあ....アマゾネスな感じなんだよなあ....。
喋り方も目を( ✧Д✧) カッって感じで
声高々に、だったので...。
うーん、このコーディリアは....なんとも...

しかも対するフール役の方なんて、
Act1の幕切れで、短刀持ったエドマンドと
ばったり鉢合わせてたので、
多分あれぶっ殺されたんですよ、可哀想に。

確かに途中から、あの"キチガイ裁判"の後から、
戯曲上でもフールって消えるんですけど、
その消えた理由の解釈がリアリズムーー!で
ちょっとビックリしました。ほんとに。

でも、リアがお付きの者達と馬鹿騒ぎするとき、
リアとこのフールが互いに互いの声真似しながら、
対話してるのは面白かったです。

Lear. Dost thou call me fool, boy?
(わしを阿呆呼ばわりするのか?)
Fool. All thy other titles thou hast given away;
that thou wast born with.
(あんたが持ってたほかの肩書き〈王とか〉は
もう全部あげちゃっただろ、そいつ〈阿呆〉は
あんたが生まれた時からもってたものさ)

っていう、リアが後々から悟ることを、
ここでフールがほんのり教えてくれてるので、
その場面でリアとフールが互いに、
特に、リアがフールみたいに振る舞うのは、
結構意味深でした。好き。

...でもそれ以外は別にそこまで魅力的な
フールではなかったかなあ...。
もっとこう...コメディアンというよりは
ウィットに飛んだ感じの
賢いフールを期待してました。残念。


あ、それにしても、リアが荒野でこの、

"人間みんな阿呆=フールじゃん"

みたいなエラスムスの『痴愚神礼讃』的な
悟り敵ななにかにたどり着く時、
ガチで嵐吹き荒れててビックリしました。
どうしてあんな小さな劇場で、
上から本当に雨が降ってくるんですか。やべえ。

ああ、でもそうやって考えると、
結構リアリズム気味な舞台だった...かもです。
あんまり見立て芝居とかはなかったような。

リアの衣装とかもどんなに古く見ても、
19c後半ぐらいの軍服っぽいけど、
ちゃんと君主の服だったし...。

それにしても、最初に舞台が始まった時、
一人円形に照らされた舞台の真ん中で、
書類に一生懸命目を通すリアの存在感が...。
イアン・マッケランさん化け物ですかね?(失礼)

あの一瞬で、"老いる前は立派な君主だった"
リアの人物像をたちあげるってやべえ...。

そのあと花道(観客席減らして作った)から
"ふふふふん〜"って鼻歌歌いそうに、
コーディリアと腕組んで出てくる
(恐らく最初のリアより歳とった)今のリアと
雰囲気が全然違うってどういうこと。怖すぎ。

しかも最初の国分けのときのリアが、
これまた茶目っ気たっぷりの
可愛いおじいちゃんで...。
娘達の"どれだけお父さんを好きか"スピーチを
聞いてガッツポーズしちゃうとか可愛い。

あとその国分けのやり方がなんとも...笑笑
UKの紙の地図を用意して
リアが大きめのハサミでチョキチョキ。
誰が考えたその演出。面白すぎる笑笑。

しかもまず、ゴネリルにスコットランドの方を
あげるまではいいとして、残るは、
アイルランドイングランドのあれですよね。

それをチョキチョキ半分にして、
リーガンにイングランドをあげるかと見せかけて、
アイルランドの方を"our fair kingdom"って、
言いながらあげるって、もはやギャグです。

1番大好きなコーディリアに
1番よさげなイングランドをあげたいのは
分かるよ。分かるけども、
アイルランドを「我が美しき王国」って、
一応もともとはイングランドの君主が
言ったらアイルランド系の人キレんじゃね笑笑。

結構ギリギリな政治系ブラックジョークでした。
セリフを変えないでやってるとこが凄いです。

こんな感じのリアなので、
ゴネリルの後のセリフで

"Now, by my life, Old fools are babes again."
(いいこと、年寄りって赤ん坊に戻るのよ)

ってやつがあるんですけど、
それに"あー"ってなるぐらい、子供っぽい...、
んですけど、それなのにやっぱところどころ
息が止まるぐらいの迫力のリア...。

エチョットマッテナニコレドウナッテンノ

...とにかくイアン・マッケランさんが、
凄すぎて凄すぎて辛い(語彙力の敗北)

あ、あとコーディリアはちょい個人的に
んんんん?ってなったんですけど
ゴネリルとリーガンはかなり面白くて
好きでした。

ゴネリルはリア(物凄い剣幕のマッケランさん)に

"Into her womb convey sterility!"
(この女の子宮に不妊をはこんでやれ)
"Dry up in her the organs of increase"
(この女の生殖器を干上がらせよ)

ってエグすぎる呪いの言葉を吐かれた時の、
娘ってよりは、女性としての尊厳を
よりによって実の父に踏みにじられた時の、
"頭が真っ白です"ぐらいのショックが
まっすぐ立ってるだけの身体から伝わってきて
観てて痛々しいぐらいだったし、
(あと正直"リアのこんちくしょう"と思った。
いくら何でも酷すぎるよこれ。)

リーガンはちょっとビッチな感じが、
(ゴネリルに比べてタイトな服。
常に膝上5センチぐらいのスカート。
あと喋り方が完全にアメリカコメディに
出てきそうな良い女感。※でもイギリス英語笑)
夫が死んだ後に直ぐにエドマンドに
直ぐに流されちゃうのも納得な感じでした。

何より、彼女達の、
お父さん(リア)の横暴さに対しての不満が
めちゃくちゃ筋道だってて、
むしろこっちに一理あるし、
この第1幕第1場の後半の2人のやり取り、
多分?散文なので、すごくとっつきやすい。

何より2人が最初っから悪者ではなかった、
っていうのがすごく伝わってきて良かったです。
リア(お父さん)を一応大事には
思っていたんだろうな、とか。
だからこそこの2人が、置かれた状況とか、
お父さんの気まぐれの怒りの一言とかで、
"こんなにも残酷になってしまうんだ..."
っていうショックが倍増というか...。

特にリーガンがグロスターの目を
くり抜く時とかやばかったですね。
エログロには結構耐性あるんですけど、
そういう問題ではなく目を覆いたくなった。

だって、豚の屠殺場みたいなところに、
グロスター縛り付けて、しかもリーガンが
傍で夫とちょっといちゃつきながら、
(しかもリーガンは謎にエロいし)
興奮感とともに拷問が実行されてるんですよ。
音楽もちょっとアゲアゲな感じだし。
人間ってまじなんなんだろうってなるよ...。

しかも、その拷問をとめようとした召使いや、
更に拷問を実行した夫はその場で、
そして後々には拷問されたグロスターも
リーガンも、なんと姉ゴネリルに毒殺される形で
最終的にみんな死んでいるので、
善悪も、老若も、男女も、他人も身内も関係なく、
みんな豚とかそういう"animal"同様、
ただただ"何もなかったNothing"みたいに
死ぬだけなんだな...って思うと、
うげえ、書いててそろそろ精神やられそう...。

なんかね...少しなにかが違えば、
みんながみんなどっかしら譲ってたり、
もう少しだけ妥協できるようなタイミングが
ほんのちょっとでもあれば、って思うから、

"All hearts against me"
(まるでこっちが悪者よ)

っていうリーガンのセリフに対しても、
一概に"いやお前が悪いだろ"とは言えなくて...。

なんていうか、ほんのに辛い。この劇。
全部が全部逸れていくというか、
外れていくというか、
失ってから、間違ってから気づくというか、
そんでもって、それこそが人間だ、
ってどうしようもない感覚になります。

例えば、リアはリアで

"I would not be mad!"(狂いたくない)
"No, I'll not weep"(泣きたくない)

って何回も何回も言いながら、
泣きたくないのに泣いてボロボロになって、
狂っちゃうことで初めて

"who I am?"(自分は何者なのか)

っていう問に対してのフールの答えの

"Lear's shadow"(リアの影)

の意味を理解したし
(結局阿呆である、nothingでしかない、こと)
※解釈実は2通りあるらしいけど、
多分主流のこっちで行きます。

グロスターは目を潰されて初めて
本当のことが目に見えるように分かったし、
Ex)"I stumbled when I saw."ってセリフがある。
(目が見えてる時に、躓いた)

理性的な人のタガが外れて残酷になって、
些細なことから大きなことになって、
兄弟や姉妹同士で殺し合うし...

でも立ち止まってよくよく考えると、
みんながみんなちょっとずつ悪くて、
善悪もきれいにわけられないまま、
ただみんな同じように血まみれでボロボロで
死んでいっちゃう...みたいな感じです。
(こうなってくると、コーディリアの高潔さが
逆に違和感しかないって思いました)

しかも、なにが残酷かっていうと、

"As flies to wanton boys, are we to th'Gods;
They kill us for their sport."
(神々の手にある人間は、わんぱく小僧の
手にある虫と同じだ。気まぐれに殺される)

って第4幕第1場の盲目のグロスターのセリフが、
ちょうど休憩あけのAct2の冒頭に来るんですが、
この時から舞台が、明るくなるんですよね。

それまで結構暗かったのに。突然明るいグレー。
しかもグレージュって感じで暖色ベースのやつ。

つまり、明るい=視界が開けたってことかな、
と思ってるんですが、
ここで視界が開けるってことは、
...いや『オイディプス王』の
全盲預言者テイレシアスじゃないけど、
これが真理なんだ、ってことなのかな、と。

噛み砕くと、神様云々は置いとくにしても、

人間は出たくもない舞台に引きずり出されて
散々楽しんだり苦しんだりしてる時に
なんとなくで、偶然に殺される、

っていうことが真理....ええええ....

.....えええええ........
つら......(撃沈)_(┐「ε:)_

「運命の女神」とか何回も何回も
セリフに出てくるけど、
イメージとしては歯車なんですよね。
最悪の後には最高が来て、
最高の後には最悪が来るって言う。

一番わかりやすいのはエドマンドとエドガーかな。

エドマンドの手紙の策略によって、
エドガーはめっちゃ不味い立場になるんですが、
そのエドガーが最後らへんに、同じように、
たまたま手に入れた手紙によって、
エドマンドを結果的に陥れることになるっていう...。

確かにもはや遊ばれてるとしか思えない状態。
「手紙」が巡って兄弟の運命を入れ替える感じ。
これは今回観てて初めて気が付きました。

しかも実は上に書いたほど単純ではなくて
結構ぐしゃぐしゃしてるんです。
リア王』ってリアの筋と、
エドガーと弟で出私生児エドマンドのいざこざの
ふたつがぐちゃぐちゃ組み合わさってるんですが、
この兄弟喧嘩(言い方)の方の筋、
実はお互い立ってる価値観の立場がすごく違って、

エドガーとかグロスターは
割と前近代的な、星占いとか、運命とか
そういうものを信じる立場にいて、
エドマンドとかはもっと現代的な、
星占いなんかクソ喰らえって感じの立場に
いるんです。特に第1幕第2場とかいい例。

演出でもエドマンドが、お父さんのグロスターの
星占い板とかをフリップ芸みたいにして
散々弄った後に、こんな風に、

"Tut, I should have been that I am,
had the maidenliest star in the firmament
twinkled on my bastardizing."
(とんでもねえや、おれが生まれたとき、
最も貞淑な星が輝いていても、
おれは今のおれになっていたさ)

とか言ってるので...。
でも星占い板は良かったです。
ああいうのあると、そういうの信じてる時代、
って感じが分かりやすく出るので、
(実際権力者は20c半ばぐらいまで、
ガチで信じてる人とか結構いたらしい)
現代服で唐突に言われるより、
納得感があってスムーズでした。

ってまあ、問題はそこじゃなくて、
この近代的で現代的なエドマンドのせいで、
前近代的な人が大変なことになって...
みたいな出だしだったのに、結局は、
前近代的な運命の女神」におちょくられた、
みたいな感じにエドマンド含め終わってて、
しかも、この星占いとか運命の女神とか
信じるor信じないの対立って、
リア王の筋の方にも結構明確にあったりして、
どっちの話にも組み込まれてるくせに、
今回みたいな現代風の演出だと、
そういう対立がイマイチぼんやりしちゃうし、
( ゚皿゚)キ─︎─︎ッ!!って感じです。

かといってこないだのソフィー・オコネドさんの
アントニークレオパトラ』みたいに、
服装で分けて上手くいくかっていうと微妙だし、

役の年齢関係なく、俳優さんの年齢で
対立作ってもなんかイマイチになりそう?だし、

女性vs男性で対立関係作ったら
それはそれでいろんな所から
たくさんバッシング来そうなので、
ほんとに難しいと思います。

...かと言って古き良き感じにやると、
なんだか観てて面白くなくなるのも
特にシェイクスピアの悲劇とがだと、
割とあるあるな気が個人的にするので...。

今回に関しては、現代風なこと以外、
なんか、めっちゃ奇抜な演出とかは、
ゴテゴテしたような印象を受ける演出とかは、
あんまりなかったんですけれど、
小さい空間でほんとにみっちりと濃くて、
原作の隅々がクリアにみえてくる感じがしました。

多分一番視覚的に演出演出!してたのは、
ほんとに最後らへんの戦争のシーンかなあ。

ストップモーションを強いストロボたいて、
断続的に撮影してるみたいな感じで、
小さい舞台でも工夫すれば結構戦争感でるな、
って思いました。カッコ良い。

あとは、ケント伯が、使者から、

"ゴネリルの夫とリーガンの夫が仲悪くなって、
そんな中にフランスが攻め込んできた"

って報告を受けた時に、
それぞれの夫が左右から同時に出てきて、
真ん中ですれ違ってはけていくんですけど、
そのすれ違った真ん中の部分を、
フランス(コーディリア)の軍隊の一部が
スルッと花道に向かって通り抜ける、
て感じで視覚的に分かりやすかったです。
なんで二人の夫が仲悪くなったのか、
とかあんまり説明されてないんですけど、
"実際見ちゃう"とあんまりその辺は
疑問に思わないで飲み込めちゃうので、
すっげえ、と思いました。

あ、ケントと言えばもう1つかな。
途中で足枷はめられちゃうシーンがあって、
その時なんでかオリに入れられて宙吊りなって、
それを見たプールが

"おまえhanging aroundしてんじゃん!"

みたいなツッコミをしていて(セリフ分からん)
Hang aroundって二日酔いみたいだったり、
ハンガーがブラブラしてる様子なので、
まんま過ぎで爆笑しました。

あと書くことといえば、エドマンドかなあ。
結構チャーミングな感じの悪党です。
ちょっとリチャード三世とかに近いかも。
大体私シェイクスピアの中の悪党って、
全部こっち(観客)に本音をぶちまけてくれるので
なかなか憎みきれなくて好きなんですけど、
もちろんエドマンドも好きです笑。

特に今回は自作自演で手を切った時に
お父さん(グロスター)に対して、

"Look sir, I bleed!"
(見てくださいよ!血が出てる!)

ってお前どの口が言うんだよ笑笑笑笑笑笑、
みたいなツッコミ笑いどころシーンが、
ちゃんと結構あって面白かったです。

ただなんか、ちょっと姉2人が惚れ込んじゃう、
悪党なりの色気というか、
なんだろう、危険な香り笑笑?みたいなのが、
ちょっとあんまりなくて...、
そこだけは、まあうんって感じでした。
企みが上手くいった時に"うううー⤴︎⤴"みたいに
アゲアゲでこっち見るのは、
見てて"よかったね笑"ってなっちゃう感じで
結構すきだったんですけど、
リーガンの色気に負けてると言うか...。
頑張れエドマンド笑笑。

でも現代人だったらエドマンドの考えの方が、
カッコイイし好きだなと個人的に思います。
"俺は俺のしたいように生きて
絶対に這い上がってやる!"
ってめっちゃかっこいいですよね。

あとあと、

"'Tis past"
(もう過ぎたことだ)
"The wheel is come full circle: I am here."
(運命の歯車はしっかり回ってるよ、俺は死ぬ)

って言って死ぬのは、なんというか、
無常観的なあれがあると思います。(語彙力)
2個目の引用とかとくに、
大宇宙と小宇宙が呼応してる星占いとか、
神々によって運命がどうたらこうたら、
っていう旧体制側の考えに巻き込まれた、
って読むことも出来なくはないとは思うんですけど、
でもその前に"pass"って単語があるので、
なんというか、途切れなく常に迫ってくる
時と状況とタイミングに
何も出来ずに(nothing)流されてきて、
流れに乗れた時は良かったけど、
その時が通り過ぎ(pass)ちゃったから、
俺は今死ぬんだ、みたいな。

星占いとかで、

"色んなことがそう思われる(seem)"、〈神話〉

とかいう立場より、

そんなのはどうでも良くて、

"実際そうなんだ(be)から仕方ない"、〈科学〉

って感じですかね。

ハムレット』が凄いのは、
これがセリフで入ってるところかな。多分。

“Seems,” madam? Nay, it is. I know not “seems.”
("思う"ですって?実際そうなのです。
"思う"だなんて知りません!)

あとはその"is(be動詞)"を引き継ぐような

"To be or not to be that is the question."

って小学生でも知ってるセリフとか。
考えてみると四大悲劇って全部これな気もするけど。
大体の時期コペルニクス的転回の時期と、
被ってなくもないしなあ...。
まああんまり長くなるので(既に大分長い)、
この辺はぼやかして寝かせておきます。

そろそろまとめに入らないと、
コリオレイナス』にマジで間に合わないので、
急ぐよー頑張れ自分ー!

まあなんか、今回はリア王
多分他に類のないくらい素晴らしすぎる
俳優さんをキャスティングしてるので、
リアの苦悩の方に焦点があって、
旧体制vs新体制みたいな対立は
ちょっとぼやあってしてました。
"人間みんなfoolである"ことを
強調したかったというか。

エドガーなんかも、Poor Tom(哀れなトム)に
身をやつす時、顔とか身体に泥と血を塗りながら、
でもどっか解放されたみたいに、

"うわあああああああああああぁぁぁ"

ってスッキリしたような顔で大絶叫してたのも、
多分そういう意図があったんじゃないかな。
もともとの自分(=fool)になれた
解放感というか。

"Pray you, undo this button."
(頼む、このボタンを外してくれ)

っていうリアの最後のセリフも、
「この世のタガがはずれた」のかもしれないし、
こういう解放の意味もあったのかなと思います。

あとエドガー役の方、多分声優さんできる笑。
エドガーって結構色んな人に変装するけど、
全部訛りから声色からして違う。すごい。
多分グロスターみたいに目が潰れてたら、
絶対勘違いしちゃいます。芸達者かよ。

あと書ききれなかったのは
たしかゴネリルの召使いのオズワルド。
くっっっっそ生意気な執事って感じで好き笑笑。
何気に結構目立ってたような気がします。

それにしても...『リア王』ってほんとに難しい。
全然感想ぼんやりしてる気がします。

最後のセリフだってさ、
(戯曲だとオールバニだけど、
確かに舞台だとエドガーが言ってたような...?)

"we that are young
Shall never see so much, nor live so long."
(わたしたち若い者は、
あれほど多くを経験できないだろし、
あれほど長く生きられないだろう)

って...。なんのなぞかけですか?
若いものだってこれから生きればするよね?
んんん????謎すぎる。

とにかく謎なセリフが盛りだくさんで、
今まで色んな『リア王』観てきて、
なんとなく????ってなってて、
リアの苦悩とかなんがその辺が
イマイチモヤっとしてたんですけど、
今回はイアン・マッケランさんの
物凄すぎる演技で、なんか無条件に納得でした。
ようやく良い『リア王』を映像だけど、
舞台として観られて良かったです。

....ギリギリ間に合ったあ!!!!
行ってきます『コリオレイナス』!
アデュー!!(テンション崩壊)