感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

『Barber Shop Chronicles』

2020/05/16
Youtube
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(画像は公式Twitter@NationalTheatreから)




邦題にあえてするなら『床屋年代記』ですかね。
...名前からしてコメディだと思うじゃん?
違ったんですよこれが!

作品全体に、ユーモアがきいてて
終わり方自体は明るかったんですけど、
扱ってる内容が、ざっくり言うと、
黒人や有色人種の、差別・植民地の歴史とか、
アイデンティティの問題とか、民族性とかで、
中々にヘビーな内容でした。
特に日本は、他の国に
文化形態の破壊・変容を余儀なくされるまで
ガッツリ支配されたことない島国だから、
差別とかには鈍感だし、実感がわかない...
って感じが個人的にはします。
正直Japとか言われるより
ブスって言われた方が普通に傷つく。

でもこの劇観てて、床屋って(美容室も含めて)
結構ユニークな場所だなあと思いました。
ある程度決まったスパンで、(月イチで、とか)
ある程度決まった人に(理容師、美容師)
自分の体を整えて貰う間、
世間話とかの雑談をしても許される場所。
まあ、お金もはらいますしね。
カフェとも、学校とも、病院とも、風俗とも、
ショッピングセンターとも違う感じの場所。

"This is a place for talking"
(ここは会話のための場所だよ)

こういうセリフがあるんですが、
その意味で、都会には少なくなってしまった
共同体の中にある集会所、
みたいな役割を果たしているのかもしれません。
外国のパブに似てるといえば似てるかな。
カウンセリングルーム的でもありました。
まあ、私は残念ながらコミュ障なので、
美容師さんとの会話が苦手ですが笑。

例えば、今回のように、
移住してきた人とかだったりすると、
同じく移住してきたような人が集まる
床屋に通ったりすることで、
なんとなくそこで繋がりができたり、とか。

海外の黒人に対する偏見とか差別の実態は
いまいち勉強不足で知らないんですけど、
そういうような場所があるとすると、
リラックスして会話ができるのかなと思います。

だから、二大陸六カ国(数え間違いがなければ)
にまたがって展開していく、
それぞれの床屋の中では、
様々な人々が様々な主張を
様々な分野...政治、哲学、教育、民族、血縁、
人種、文化、愛、結婚、アイデンティティ
差別、植民地、関連してポストコロニアル...
あとは、男性性の考察とか、
などなどに関して自由に繰り広げます。

一見するとあんまりまとまりがなかったり、
(一応、イギリスの床屋で起こる、
家族の問題がガイドライン的に機能してる)
時折もっと下世話な性の話になったりして、
あくまでも日常会話の域を出ないんですが、
例えば、違う国の床屋で語られていた内容が、
別の国の床屋に流れ込んでいたり、
また、どこの国でもスポーツ観戦してたり、
内容はちょっと違うけれど、
骨格が同じジョークを喋っていたり、
母国にいようと移民であろうと、
同じように悩んで話して楽しんでて、
ある意味では国境を越えた、
なにかまとまりのようなものを感じました。

ジョークに関してもうひとつ。
内容としては
"それぞれ違う国民のA、B、Cの3人がいて、
バーでお酒を飲んでいます
ハエが飛んできて、それぞれの酒に入ります。
Aは酒を全部捨てて、新しい酒を注文。
Bは虫が入った上澄みだけ捨てる。
Cは虫をつまんで虫についた酒を舐めとり、
虫に向かって、"自分で買え!"と怒鳴る"
っていう、なんかとんでもないものなんですが、
これが最後の幕切れのジョークでは
ABCが、Englishmen、Irishman、 Scotsman
(英国人、アイルランド人、スコットランド人)
と白人系の人種に置き換わります。
それまでは全てアフリカ大陸系の民族なのに。

この間『Cyprus Avenue』を観たので
ちょっとだけ知ってるんですが、特に
北アイルランド人とかもかなりめんどくさい
アイデンティティの問題を抱えてる場合が
あったりするみたいです。

つまり話全体としてはアフリカ系の黒人に
焦点があるけれど、そこだけに限定せず
全ての移民とか、移住による疎外感や、
それに伴う問題を感じている人は、
あらゆる人種にいるだろうし、
その意味では国境も人種も関係ないのかも
しれないな、と思いました。

そこまでアフリカ系に限定的に話していたのに、
幕切れのセリフで一気に視界が開けるような、
"差別も疎外感も皆同じなんだ"、という、
なにか、社会的な問題の解決の1歩というか、
そういうものを感じました。

...ただ、社会系の問題が主軸にあるような
演劇はちょっと考えるのが苦手なので、
こういう解釈でいいのかは自信が無いです。
うーん、難しい。

そもそも英語が口語すぎて理解が辛かったです。
NaがNotとかどういうことなの...。
ThをDで表記するのだけはまじでやめて...。

ただ、セリフはウィットに富んだものが
いっぱいあって、めっちゃ笑えます。
お気に入りのはこれです。

"When they come, we had the land
and they had the Bible.
They taught us to pray with our eyes closed.
When we open them, they had the land,
and we had the Bible."
※ここでのtheyは宣教師のこと。
(あいつらがきたとき、俺らは土地持ちで、
あいつらは聖書を持ってた。
あいつらは、俺らに目を閉じて祈ることを教え、
次に俺らが目を開けた時、
土地を持ってたのはあいつらで、
俺らは聖書を持っていた!)

なんというか、世界史で長々と説明されることを
めっちゃ簡潔に分かりやすく語ってる、
って感じです。笑っちゃいけないけど、
やっぱりどこか皮肉めいてて面白い。

英語自体はちょっと訛ってて
聞き取りづらいけれど、
ちょこちょこセリフが面白くて
なんとか最後まで観られました笑。

今日は後でアンドリュー・スコットさんの
『Sea Wall』も観なきゃ、です。
この方の英語も個人的な印象として
声質とかにクセが強めで聞き取りづらい...。
期間限定配信だなんて聞いてなかった。
そういうことは早くデカく提示して欲しい。
そういうとこだぞモリアーティ(どういうこと)
...本当に、英語が出来たら楽なのに...(´TωT`)
それかYouTubeの自動翻訳が完璧なら...。
頑張ります。何とか。