感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

Hamlet『ハムレット』(Stratford Festival)

2020/06/12
Youtube
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(画像は公式Twitter@stratfestより)




個人的に『ハムレット』は
ベネディクト・カンバーバッチのヤツが
最高...というか単にカンバーバッチの演技が
好きなだけだと思うんですけど、
そういうふうに思ってたので、
"さすがにあの『ハムレット』は
超えないでしょー"ぐらいの気持ちで観ました。

...スライディング土下座○| ̄|_=3!
すんません。舐めてました。

いや舐めてたわけじゃないんだけど、
なんていうかびっくり。
...演劇って"これ以上ないだろ"って作品に
軽くならんだり、さらに超えてくるヤツが
どんどん見つかるので中毒性が高い気がします笑。

ハムレット役の俳優さんが、
多分今まで観た(舞台)中で、
一番歳いってる...かな。
作中の年齢に近いハムレットだと思います。

そのせいか分からないけれど、
なんかハムレット強いぞ...!
青年っぽい独特のちょっとナヨッとした感じが
今までのよりは薄い気がしました。
そしてそんなハムレットだから、
いつに増しても苦労人感がすごいホレイショー。
ああ、そう言えば、ハムレット
アイデンティティの揺らぎみたいなのも
ほとんど見えなくて、
ザコン感(ママへの依存感笑)とかも
かなり薄かったように思います。
役者の年齢性って反映しようと思えば
結構反映されるんだなーって
改めて感じました。
敢えて反映させない場合もあるけど笑。

強いって書いたけど、
セリフ自体をがなるように強く言う訳じゃなく、
演技自体が結構パワフルっていうか...。
今まで観てきたイメージでいいなら
フォーティンブラスっぽいかも。なんか。
ちょっとアグレッシブハムレットでした。

だから、"Act on line"...
演出家のジョナサン・ケントさんが、
どこかで言ってたような気がするんですが、
気持ちを作ってからセリフを言うってより、
セリフを言いながら気持ちをつくっていく
みたいなのってこういうことかなあ、って
ちょっと思いました。そうなると、
俳優さんが全員、"言葉を使って自分で自分を演出する"
みたいなことになるので、
妙なスピード感と熱量がありました。
でかい装置を使ってるわけでも、
音楽を多用しているわけでも、
現代風にしすぎているわけでも、(くらい?)
つまり突飛とも思えるような演出を
している訳では無いんですが、
それだけじゃなんか説明つかないぐらい、
舞台全体が言葉の魔力みたいなので
狂熱に浮かされた感じがしました。
そういうのも含めてアグレッシブ

あ、あとハムレットってかなり独白多いけど、
(たしか第5独白まであるんだっけか)
個人的に2パターンのどっちか寄りになる、
と思ってて...

①ガチの(結構大きめな笑)独り言を喋るタイプ
脳内会議を舞台で再現するタイプ
(あの、脳内に何人もの自分がいて...みたいな)

今回ほとんど②だったから、
余計パワフルな印象があったのかもしれないです。
特にハムレットの第1独白?でいいのかな?

"Frailty, thy name is woman."
(弱き者、汝の名は女)

って言うセリフが入ってるとこのやつです。
そこなんか、ほんと一人芝居してるみたい。
あ、あと、この「弱き者、汝の名は女」って
結構日本のとかだと吐き捨てるように、とか
苦々しげに言うパターンをよく観るんですが、
今回は、頭の中の声がするっと漏れるみたいに、
言ってました。こういうのも結構好き。
元々の地声が結構フラットな方なので、
高低差と、厚さと、雑音の入り具合とかを
ここまで巧みにあやつられると、
何人か違う人が喋ってるみたいに聞こえて、
一人芝居みたいでめっちゃ面白かったです。

あとなんか、舞台前半のホラー感がすごい笑。
最初っからぶっ飛ばしてました。
そもそも照明が暗すぎる笑。
俳優さんがギリッギリ見えるか見えないかレベル。
めっちゃ攻めてる。
思わずこっちが"Who's there!?"ってなります。

しかもそんな暗い舞台の上で、
先王ハムレットの亡霊が手持ちのサーチライト
みたいなの持ってきて、
それぞれ出会った人に当てるから(超迷惑)
なんかめっちゃ逆光になって、
亡霊の顔もよく見えないし、
かなりこっちも見ててくらくらします。

その顔の見えない父の亡霊が、
ハムレットの肩に手を置いて、
その手だけが(しかも甲冑付き!)、
ハムレットの顔の周りにぼやっと浮かび上がる...
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...なんのホラー映画だよ!(しかも日本風)
完全に振り返ったらやばいやつです。

まあちゃんとその後笑えるシーンが
盛りだくさんだったのでいいんですが...。

ポローニアスを見つけた瞬間
踵を返して逃げるハムレットとか、

やたらとカニの真似が上手いハムレットとか、

なぜか愛情表現強めのクローディアスとか
(誰だかんだに口にキスするし、
政治が上手くいった時に
ポローニアスを抱き上げてくるくるしてた笑)

あと、劇中劇の目的をハムレットが述べる時、(第2独白?)

"I have heard that guilty creatures
sitting at a play...
"
(罪をおかした観客が芝居を観ていて...)

ってセリフがあるんですが
観客見ながら言うなよハムレット
うちらなんもやってないんだけど笑。

劇中劇といえば、多分1番面白かった演出が
ハムレットが役者の1人にセリフの付け足しを
お願いするシーンですかね。

"Dost thou hear me, old friend?"
(頼みがあるんだが、旧友よ)

みたいに役者の人に語りかけるんですが、
ここで後ろにいたギルデンスターン
自分が呼ばれたと思って勘違いして
ハムレットの肩に手をかける演出、
っていうのは初めて観ました。
確かにギルデンスターンローゼンクランツ
"友達だった"のは確かなので、
この勘違いは有り得るなあ、って思いました。

あと、劇中劇の無言劇の方に、
無礼講としてクローディアスを参加させるか!?
あからさますぎてちょっと観てて
ヒヤヒヤしました。
クローディアスも顔色がざっと真っ青です。
そりゃそうなるよ。どんまいおじさん。

あと、その後にハムレット
ポローニアスを殺しちゃってから、

"Where's Polonius?!"

っていうクローディアスのセリフへの返答が
控えめに言って最高すぎました。

"In heave~♪(マジでこんな感じ)
Send thiter to see,
If your messenger find him not there,
seek him in the uh other place yourself.
"
(天国とかー?
人でも送ってみれば?
あっ、でもあんたの使者が
もし見つけられないんだったら、
反対の方、えーっと、こっち(下を指さす)を
ご自分でお探しになられては?)
超高速スピーキングでどうぞ
雰囲気的に多分こんな口調。

まんまアメリカンコメディじゃねえか、
って突っ込みをわかってくれる方がいたら
この上なく嬉しいんです笑。
『ブリジッドジョーンズの日記』とかの
イギリスのコメディでも別にいいんですが、
なんかそんなノリでした。
このセリフが面白いのは知ってたけど、
ちょっと面白すぎですね。笑っちゃう。
ごめん、ポローニアス。

ポローニアス役の方も上手いですよねー。
まあだいたい上手い方がやられるんですが。
死んだとしても笑っちゃう感じ、凄いです。
あ、あとレアティーズは
この間の『恋の骨折り損』のビローンの方ですね。
そろそろ何人か見覚えが出てきました。
あとこの劇場も。

そしてそしてのオフィーリア。
前半はそこまででもなかったんですが、
尼寺シーン(勝手に命名)が凄かったです。

こんなにドラマティックな、
...ドラマティック?いや、ロマンチックかな、
ここまでお互いを愛し合っているのが
きちんと伝わるハムレット&オフィーリアも
珍しいな、なんて感じました。
抱きしめ合うとこなんか印象的だと思います。

そのシーンの最後らへんに、
オフィーリアがハムレットに突っ返した
(もともとハムレットが書いた)手紙を
ハムレットがビリビリ破いちゃうのも、

"Now cracks a noble heart."
(気高いお心が、砕けてしまった)
ハムレットが死んだってこと。

っていうホレイショーのほとんど最後のセリフと
"Crack"のイメージが呼応してる気がして、
個人的には面白いなあ、と思いました。
ハムレットの手紙とハムレットの命が
ダブって感じらるというか。
それをハムレットが去った後で
必死にかき集めるオフィーリアが
またなんとも健気で、観てて辛いです。

…とかなんとか思ってたら、
後半のオフィーリア!
狂った時の声どうなってるんでしょう。
男性みたいになってます。迫力やばい。

そのオフィーリアの葬式でが降ってるのが
ちょっと皮肉ですね。

"Too much of water hast thou, poor Ophelia"
(水はもうたくさんだよ、オフィーリア)

レアティーズのセリフでこういうのがあるので。

あと個人的に面白かったのは
クローディアスの罪の懺悔シーンかなあ...。
酔っ払いながらするのはいいですね。
どんなに頑張っても
ハムレット率いる若者勢みたいに高潔には、
どうしてもなりきれない俗っぽさ
まさしくクローディアスなので。好き。

それにしても、そのクローディアスを殺すときの

"Follow my mother!"
(母のあとを追え!)

っていうハムレットの声の迫力...!チビる(下品)
英語の発声って空気の大砲みたいですよね。
いやほんとこのハムレット強いわあ。

...この強さにしてみると、

"最期割と、あっさりめだったかな?"

みたいな感じはなくはないんですが、
これは『ハムレット』を観ると
毎回感じることなのでスルーします笑。
そもそもの戯曲の好みの問題かもです。


何回も『ハムレット』の劇は観てるはずなのに、
今回もまんまと惹き込まれてしまいました笑。
これを400年も前に書き上げた
シェイクスピアってやっぱ凄いなあ、と
改めて感じます。
ごめんね、高校の時、

"何このザビエルもどき"
(今はシャヴィエルなんだっけ?)

とか思ってて...(›´ω`‹ )
(高校3年ぐらいまで
演劇と映画の違いすらよくわかってなかった笑)


ところで話は変わりますが、
今日はなんとなんと、
『スモール・アイランド』を
シネ・リーブル池袋で観てきました!!!!
ただいまああああああぁぁぁ!!!
I'm baaaaaaaaaaaack!

まあ、今度の金曜日には日本でも
無料配信されるんですけどね...。
でもめっちゃ面白かったです。最高。
感想は、ボチボチゆっくり書いていきます。
最近レポートが辛いよ…。