感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

Love's Labour's Lost『恋の骨折り損』

2020/05/29
Youtube
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(画像は公式Twitter@stratfestから)



1週間も前に観てたんですが、
なんか感想書くタイミングを逃してて、
今日も"あー、『ハムレット』観ないと..."
ってなってたら、まさかの延期!
例の白人警察官の事件からの
黒人差別とかへの抗議の一環
だそうです。

...残念だし、気持ちは同じくするとして、
区別はいいけど、差別ダメ絶対!
よっしゃこれでようやく感想書ける!

正直に言うと最近いっぱいいっぱいで、
ちょっと休憩が欲しかったので
言い方悪いけど丁度いいです。

というわけで華やかな恋愛喜劇
恋の骨折り損』!初めて観ました。
ちなみに読んだこともない笑。
大体にして読んだor観た限りの
シェイクスピアの喜劇とかロマンス劇とかだと
男性が女性の母国の方に行く...
『間違いの喜劇』とか『二人の貴公子』とかの
そういうパターンが多いんですが、
今回は女性の方が訪れていました。

そのせいかなんとなく女性の方が、
パワーバランス的に強めな感じがします。
まあ元々喜劇だと、女性は肝が座ってますが笑。

それにしても、今回は、言葉遊びが辛かった...!
そもそもからしてタイトルがLの連続。

I wish I could speak English better...!

...英語の勉強もぼちぼち頑張ります...。
目指せネイティブ。道は長いぞ。

でも英語なんか全然わかんなくても、
言葉遊びのリズムが聞いてるだけで
笑っちゃうので、それでも充分楽しいです。
誰だったっけ...ホロファニーズかな、
ものっすごいスピードの早口言葉みたいなのを
すらすらすらすらーって言うんですが、
マジですごいですよ。ビックリ。

"This is a gift that I have."
(これが私の才能です)

って締めるのも好き笑。たしかに才能だわ。

才能といえば、この人...
ドン・エードリアーノー・デ・アーマードー
(名前長すぎだろ)
の小姓役の子役の方が、セリフ回しとかが
まだ幼そうなのに大人レベルで上手かったです。
あといい感じに癪に障る小生意気な感じも、
大人びた頭のいい小姓、ってキャラを
立たせるようで最高でした。

あとはコスタードがとにかく魅力的です。
結局こういうのらりくらりと
ヘラヘラ陽気なやつが(でも頭はそれなりに回る)
なんだかんだで1番幸せな気がします笑。

そしてビローン率いる恋する若者の、
恋心&ラブレター公開処刑合戦
腹がよじれるレベルで面白い。
校内放送とかの次元じゃないですよこれもう笑。

まずビローンが、

"あ〜、もうどうしよう!"

みたいな感じで観客にどんどん近づきながら、
恋する気持ちを吐露するんですが、
ほんとにどんどんどんどん近づいてくるので、
こっちとしてもジワジワ笑いが込み上げる。
内容もなんともおもしろくて

"By this light, but for her eye
I would not love her.
"
(誓って、彼女の目をみただけで
彼女を愛したわけじゃないんだ)

って言って、一旦観客に
"一目惚れって訳じゃないのかな?"
と思わせておきながら、

"Yes, for her two eyes."
(うん、彼女の2つの瞳のせいなんだ)

結局一目惚れじゃねえか笑笑笑笑。
"Two"を強調するな笑笑笑笑笑笑笑。
日本語じゃ伝わりにくい可算名詞のギャグですね。

更に観客の女性の方に恋文を渡して、

"Well, she hath one o'my sonnets already."
(これで彼女は僕の詩を受け取ったって訳だ)

お前が渡すのはその女性じゃないだろ笑!

きっと観客全員の心の一致です笑。

もうビローンだけで充分面白いんですが、
この後も続々

ファーディナンド
(恋詩を納得いくまで推敲してる)
ロンガヴィル
(指パッチンで詩のリズムを確認?笑)
デュメーン
(テンション上がってアクロバティック朗唱

と続々恋文大公開処刑執行です笑。
そしてそれを上のバルコニーで
ビローンが茶々入れながら見てるんです笑。

観客はビローンと一緒に残りの3人を
面白がって心の中でツッコミ入れながら見るので
ここまで来ると、さっきビローンが
観客の方に舞台降りてまでグイグイ来てたことの
訳がようやくわかります。上手いな。

個人的にはデュメーンの
アクロバティック朗唱が好きです。
いやほんとダイナミックです。
半宙返りとか前転とかエア跳び箱もするし。
恋で頭がバカになってるのがよく分かるし、
ビローンの茶々の入れ方も
ここまで来ると神がかってきてます笑。

"O most devine Kate!"(デュメーン)
"O most profane coxcomb."(ビローンの茶々)

形だけで対になってるのが分かるかと思うんですが、
(母音とか出だしの音とか)
意味としては...うわこれムズいな...

"ああ、神のごときケイトよ!"
"ああ、神をこき下ろす鶏頭(けいとう)よ!"
※鶏頭...鳥頭なので馬鹿ってことでいいのかな。

日本語で何とか洒落を伝えようとすると
私はこれが限界ですね笑。
図書館開いたら読んで確認したい。
松岡和子さんとかだったら絶対もっと綺麗。

最終的にはビローンが姿を現して、
"勉強する間は恋愛しないって決めたのに、
その誓いを易々と破るなんて

But you are not ashamed!?"
(恥ずかしくないのか!?)

ってからかう為にキレるんですが
お前が言うか笑笑笑笑笑笑笑笑。

英語って日本語みたいに空気を区切って
発音しないので、まるで腹からグワーッて
一直線に大砲みたいにセリフが出てくるので
余計おかしさ倍増というか。
完璧にブーメランだよ笑笑笑笑。

結局ビローンもなんだかんだで、
恋文がバレて、てへぺろ状態になるんですが、
その後男4人身を寄せあって
"この恋文これでいいかな相談会"するのが
マジでウケる。f:id:monsa_sm:20200607115418j:plain

...人種差別の問題が今話題沸騰中なので、
言及するべきか迷うんですが、
差別の意図はないということを明記して、
書きたいと思います。

1人だけ黒人の方がいますよね(デュメーン)

実は、ビローンがさっき観客の方に渡して
この場面では回収して披露してる恋文の中に

"No face is fair that is not full so black."

パラドックスになってて、多分なんか
いいこと言ってるんですが内容がよくわからん。
"真っ黒じゃない顔は美しくない"?
...多分ロザラインの美しさを褒めてるはず。
(ロザライン役の俳優さんも
めっちゃスタイル抜群で美人な黒人の方なので
ここともかけてるのかもしれません。)

ただその後に、

"ラブレターに「」はまずくない?
だってなんか地獄を連想させるし、
地下室みたいだし、無神論者の集まりとか
なんか想像しちゃうよ"

的なことをファーディナンドが言うんですが、
その時のデュメーンの表情がね...
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控えめに言って最高。

"ふーーん、そんなこと言っちゃうんだ...
へえええええええ"

みたいなこの感じ笑笑笑笑笑。

最終的にはblackとfairを結びつけて
解決してました。流石頭でっかち学者集団。

なんだろう、簡単なことでは無いんだろうけど、
肌の色とかも、差別とかではなくて、
デブとか痩せとか、ノッポとかチビとか
禿げてるとか、毛深いとか、
なんかそういうもっと軽い
身体的な単なる特徴としての認識として
広ればいいなあ...なんて思いました。

そうして、例えばこんな風に
うっかり失言してしまっても、
本当に気の合う仲間内だったら、
笑って流せるようなジョークとして通用する...
みたいな。

デモとか見ていると、ほんとなんで肌の色だけ、
ここまで比重が大きくなってるのかな、
って日本に住んでる身としては感じてしまいます。

もちろん歴史を一応勉強したので
どうしてなのかは理解できるんですけど...。

正直、あの白人警察官の方が、
どういう意図を持ってあの行動を起こしたのかは
あんまりニュースを読んでないので
詳しくは分からないんですが、

①警察官がほとんど抵抗のない市民を殺した
②(もしかすると)白人警察官の中に、
"黒人だから悪いことしてるに決まってるから
懲らしめてやる"という認識があった?

ってことは分けて主張すべきだと思います。
①と②は次元が全然違う話なので...。
①は組織の問題だし、②は個人の問題で、
そういう個人を作りしたのは社会だから
たしかに組織的な問題に繋がって
混合しやすいのはわかるんですが...。

まあ、ここでこんなこと日本語で主張しても
あんまり意味は無いのでそろそろやめますが、
でも正直、あそこまでデモが広がったのは、
コロナのストレスのせいな気もします。
有名人の方が参加するのも悪くは無いけど、
ウイグル人の方とか黒人の方以外の
かなり少数のグループとして
差別受けてる方とかどんなご心境なんだろう...。

"自分たちの時は、大して事件にもならず
誰も応援してくれなかったのに..."

なんて思われてたりするのかなあ...とか考えると
なんだかやるせない気持ちになります。

レイシストはヒトゲノムとか勉強しようぜ。
白人と黒人の遺伝子の違いより、
白人同士、黒人同士の遺伝子の方が
全体的に見ると違い大きいって知ってる?
黄色だろうが褐色だろうが一緒だよ?
そういうの知った上で、
対等の個人として"こいつ嫌い!"なら
全然OKだと思います。
だって多分"こいつ"もその人のこと
嫌いだと思うので。

...なんだか暗くなってしまったので
この辺でやめようと思います。

話戻すと、公開処刑大会
ビローンの主張としてはここがハイライトかな。

"But love, first learned in a lady's eyes,
Lives not alone immured in the brain...
"
(愛だけは、女性の瞳から学んだんだ...
脳みその中に引きこもってる感情じゃない)

まあ素敵なセリフですが
要は

"愛を学ぶには本とかじゃなくて実地だよね!"

って言ってるだけです笑。
最終的には、フランス国王の死、という
喪にふくさなきゃいけなくて、
結婚が延期になるので『恋の骨折り損
なんですが。

その最後らへんでビローンが

"That's too long for a play."

って言うんですが、
結婚するまでの喪の期間のことを、劇に例えて

"劇にしちゃ長すぎじゃね?"

って言ってるんですが、
如何せんこの『恋の骨折り損』が
2時間半越えなので妙にメタ的で笑えました。
長いよね笑笑笑笑。わかる笑。

スケール的にはコンパクトな戯曲なんだけど、
(国を超えたりするわけでもないし、
障害といえば自分たちで設定した誓いと、
フランス国王の死で喪中になることぐらい)
劇中劇や女たちの逆襲的なイタズラ
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怪しげな魔術的な雰囲気とか
あとはちょっと東洋的な音楽や
スペインのラテン系のリズム感じる歌とか、
色々楽しみが仕掛けられていて、
かなりダイナミックに仕上がっていました。
衣裳自体は昔風なんですが
役者さんの魅力がカンストしてるし
役者さんが上手いと、
どんな演出で観ても笑えるのが喜劇のいいとこ。

しかも今回は演出も素敵だったので最高です。

問題は私の語学力だけですね。
つらたんすぎる。そろそろ泣きそう笑。