感想日記

演劇とかの感想を書きなぐってます。ネタバレはしまくってるのでぜひ気をつけてください。

This House

2020/05/30
Youtube
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(画像は公式Twitter@NationalTheatreから)




...っひーーー!むっずかしかった!
いや、最初掴めればいけるんですが、
掴むまでに時間がめっちゃかかりました。
個人的になんですが、
ここさえ分かればそこそこ楽しめる、
と思うところまとめときます。

労働党(Labour)スーツが茶系、ゆるい感じ
・保守党(Tory)スリーピース青系、カッチリ
(この二党のバトル話です。自由党はごめん笑)
労働党は赤色(画像左側)
・保守党は青色(画像右側)
労働党の人の方は訛りがすごい
・保守党の人の方はほとんど容認発音
・下手が内閣(みたいな)(Government)部屋
・上手が野党部屋
・内閣不信任案を出すのが議会(Parliament
政経高校でとってなかったので...笑)
(GovernmentとParliamentって
議会と議場ぐらい同じだと思ってた馬鹿です)
・選出選挙区名で議員は呼ばれる。
(地元ネタ過ぎて難しすぎるのでもはや無視)
・Whipっていう党内の幹事組織がある
(主な仕事は議決時の党の舵取り。チーム制)
・Paringっていうジェントルマン精神(笑)
(なんか片方の党に欠員が出ると、
議決の時に変に不利になっちゃうから、
もう片方もその分減らすっていう決まりらしい)
・錫杖がないと、議会は議決が出来ない
(女王陛下の威信の代わりらしい?)
・カツラ被った議長は、歴史的に殺されやすい
(だから新議長は指名されたら嫌がる、
っていう謎のポーズがある。お祭りかよ)

うん、こんなもんですかね...。
一応劇内でいちいち解説はしてるんですが、
如何せん英語が辛いので...。訛りとスピードが...。

そして話のキーはここです。

"Labour may be the largest party,
but not marjority in the House."
労働党は1番デカい党だけど、
庶民院の中で多数派じゃないし)

要は、政権とってる党(ここでは労働党)が、
議会の中で過半数越えを獲得できてなくて、
議案採決の時にめっちゃ不利でめんどい、
ってことかなって理解してます。
こういう状態を、英語だと
"Hang Parliament"って言うらしいです。
直訳だと、宙吊り議会?かな。

そんな訳で、

労働党は何とか過半数超えるために人集めたい
保守党は内閣不信任案出して政権奪還したい

ということですね。
(ちなみに劇は保守党が政権を
追われるところから始まります。
だからスタートに限って言えば、
下手与党が保守党で、上手野党が労働党
そのためには"odds and sods"っていわれる、
議会の中で日和見主義的にしてる
少数派の人たち...でいいのかな、
そういうのを何とか引き込みたい訳です。
人集めの綱引き合戦の始まりですね!

あとはもう、味方獲得のために
双方東奔西走バタバタする、
ってほんとに"それだけ"の話なんですが、
ここまで理解するのにめっっっっちゃ
時間がかかわりました。しんどかった。(›´ω`‹ )

...なんかもう日本のより英国の方の議会に
詳しくなった気がするよ。ごめん安倍さん。

あと、どうでもいいけど
Redditchって場所が、とにかく
針を生産してるのがわかりました笑。
ジョークで色んなところに出てきます。
これRedditch出身の人見たら腹がよじれそう笑。


ものすごいスピード展開の
味方の取り合いの政治のドタバタなんですが
それに、アップビートのロック音楽が
最高に良かったですね。合ってる。

あとはもう、とにかく
ほんとに馬鹿みたいなんですよ!(失礼)

"Lots of funny rules and traditions here.
You'll start to learn."
(アホみたな規則と伝統が馬鹿みたいにある。
君、それから勉強しなきゃね。)

ってセリフがあるんですが、まさにそれ!
まあ、政治って決まりごとの連続なので
当たり前っちゃ当たり前なんですが、
ほんとに"それ必要なのかよ?!"
って思っちゃう馬鹿みたいなしきたりに
がんじがらめに縛られながら、
それでも命をかけて政治に参加した人達が
確かにいたんだなあって、
全体の感想として感じました。
例えば、病で死んでいったJoeが
(馬鹿馬鹿しいしきたりのひとつとして、
「議会で死んだら違法」みたいなやつもある)
最初はよろよろ歩いていたけど
いざ、退場するぞ!ってときに
観客席側の光が差し込む出口から
堂々と胸を張ってピシッと
歩いて出ていったのが素敵でした。
誇りを持って頑張ってたんだなあって感じます。
実際の人々も沢山でてきてるので、
...というかもしかして全員そうかな、
あんまり詳しくないんですが、
歴史的瞬間に立ち会ったような
不思議な気持ちです。

観客席が可動式で、そのままイギリスの議会...
正しくこんな感じですね。
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スマホのカメラでパソコン画面を撮影)
ちょっと見えにくいですが、これ両脇の
椅子の部分は手動可動式の観客席です。
観客がそのまま議員みたいに
参加してるような形になるのが
そういう気持ちになる原因かもしれないです
(観客巻き込み型にしても初めて見る形。)

あと舞台セットとしての部屋が、
さっき書いたように、主に
保守党と労働党はの2つあるんですが、
実はパーテーションとかで仕切られていなくて、
ドアのノック音とか、議員の選出選挙区名などを
カツラ被った議長がまるで演出家みたいに
声をはりあげて仕切るのが、
舞台全体が議場になってるような感じで
すごく面白かったです。

面白かったといけば、罵り言葉の応酬も、
ちょっと口にできないぐらい酷かったですね笑。
自動翻訳はもともと使わない派なんですが、
試しにやってみたらほとんど仕事しない笑。
どれだけShitを聞いたことか。
(もっと酷いのも盛りだくさんです。)
とくに保守党が労働党を部屋の中で内輪に
めっちゃ罵ってる時に、いきなりスワップして
まるでセリフが繋がるように
今度は労働党が保守党をさらに酷く罵るのが
マジで最高でした!超面白い。
そうくるか!って感じで吹きました。

とにかく何回も言ってるように
本当にやってる事がくだらなくて、
誰かの死因に金をかけたり、
その金をいちいち数えたり、
びっくりするぐらいよく回る口で悪態をとばし、
自殺未遂したり、飛行機飛ばしてまで
なんとか議会に無理矢理来たり、
しきたりでドアを開けとかなきゃいけないし、
死んだらだめ、これはだめ、あれはいい、
("'Centuries old', 'thousands years old',
'can't do this', 'must do that'! "って、なんと
保守党側が苛立つシーンもありました)
って政治知らない側からしても
ほんっとにほんとのめちゃくちゃに
馬鹿みたいで無駄なんだけど
それでもそういうしきたりだらけの
"政治"というものに
命かけて全身全霊で挑んだ人達が、
同じような親しみをもてる人間として
確かにいたんだなって思いました。

労働党は結局、満期は無理だったんですが、

"Four and a half years!
All they gave us was four bloody weeks."
(4年半だよ!
誰もこんなにもつとは思ってなかったよ)
※意訳にも程がある。

"We all need somewhere to go. "
(俺たち全員どこか行く場所が必要なのさ)

っていう最後らへんのセリフからも
悲壮感と言うよりはやりきった感があります。

最後には、その後に首相になる
サッチャーの演説で幕切れなんですが、
これがまたピッタリです。

"...And where there is despair,
may we bring hope."
(そして絶望のある所に、希望をもたらす)

この言葉を信じたくなるような劇でしたね。
(信じられる、ではなく、信じたく、です。
話の流れとしては、政権が落ちていく話だし、
戦争関係の世代格差も浮き彫りになるし、
真面目にやっても報われないし、
こんなくだらないことに税金使ってんのか、とか
世の中そんなに甘くねえぜ、っていう
結構苦めのメッセージもあります)
議員とか政治の裏方の人たちを
物凄く身近に感じました。
血の通った人間味もちゃんとあるし、
頭は回るんだけどやってる事は馬鹿みたいで、
そして多分当人もそれをわかってて、
それでもそこで一生懸命頑張るしか
国を変えるすべがないから、
命懸けで頑張っているというか...。
そういう人たちに好感情を抱かないわけないし、
そういう人たちがいる限り、
ビッグ・ベンが止まらない限り)
なんか確かに国家に希望はあるのかな、
って感じる結構ハートウォーミングな劇でした。
まあ、政治劇にドロドロを求めてた方は
多分肩透かしだろうけど、私は好きです笑。
あんまり政治面の具体的なところは
掘り下げなかったのも、
私みたいに詳しくない人にも
楽しんでもらいたいってことかなと思います。

でもこれ多分日本じゃ絶対客入らねえ...。
映画館とかでやるにはローカル色が強すぎです。
というわけでコロナウイルスのせいで、
思わぬ良作が観れて辛いやら嬉しいやら...
手放しで喜べないのが辛いですが、
楽しかったので良しとします。
(とかなんとか言ってるけど
実は最初難しすぎて発狂しかけました笑)