Coriolanus『コリオレイナス』
2020/08/25
シネ・リーブル池袋
実はこの前にもYoutubeで観てました。
英語字幕だけで辛かった...(›´ω`‹ )
monsa-sm.hatenablog.com
シェイクスピアの英語はレベル高すぎです。
日本語字幕万歳!ありがとう!
ところで割とキャパ小さめの小劇場なのは
前に記事書いた時に知ってたんですけど、
元々バナナ倉庫だったのはさすがに知らなかった。
映画館にわざわざ観に行ったのも
"インタビューあったら面白くなるかな"、
って感じだったので、
ラッキーでした。知識が増えたね。
マーク・ゲイティスさんとかも
端的にコリオレイナスを表現されてたし。
"He is too pure to himself."
(彼は自分に対して純粋すぎた)
ほんとそれな、って感じです。
一番政治家になったらダメなタイプですね。
めっちゃ詰んでるじゃんコリオレイナス。
あ、それにしてもなんか
マイクロフト....じゃないや、
マーク・ゲイティスさんが議会での乱闘に関して
色々答えてるところがあって、
それで多分これかな、
こんなのが流れて
(でもロシアって言ってたし
もしかしたら違うかも...?でもなんかこんなん)
"少し前まで全然大丈夫だったのに、
時が止まったみたいになって、
全部終わったあとみんな呆然とするのがすごい"
みたいな(うろ覚えすぎる)
ことを喋ってて、こんなショッキングな映像、
劇前のインタビューで流して大丈夫か、
って思ってたらやっぱ大丈夫じゃなかった。
過去の記事にも書いてますが、
この『コリオレイナス』苦手なんです笑笑。
"最高に大好き!"って方は絶対に、
下で書くことと、過去記事読まないでください。
ちなみに私が好きな『コリオレイナス』は
こっちです。たまたま時期が重なって
シェイクスピアの中でもレアな作品を
2つのバージョンで観られるというラッキーでした。
【注意⚠ここから下は、やばいです】
やっぱあのインタビュー映像は不味いです。
あれに勝る緊迫感を政治劇で出せたら、
めちゃくちゃ最高の舞台なんだろうけど、
生半可では無理です。てか無理でした。残念。
なんというか、演出の軸が
絡まっているように思えて...。
しかも、それが絶妙なバランスで
ズレてるんですよ。
銃とかの弾道がズレてる感じで、
その分ショックも薄れてしまうというか…。
(いつもなら謎の上から目線で
褒めてます!って書くんですが、
今回はマジで言葉通りの意味です。)
まず、『コリオレイナス』自体が、
めちゃくちゃにマッチョで、戦闘シーンとか
肉体的な比喩とか満載な劇であること、
そして、同時に政治劇であること、
まあこんな感じにもともと
複数の要素があるので、演出の筋が
複数本あるのはいいっちゃあいんですが...。
なんか混ざってて観てて正直混乱します。
例えば舞台はコンクリ打ちっぱなしに、
赤く四角で囲んだボクシングリングみたいな、
めっちゃアウトローな感じなんです。
しかも、この劇場は国会議事堂?に近いらしい。
こうなってくると風刺が入るかな?
って期待しますよね。しましたよ。
…あんまりなかったような気がするよ。(キレ気味)
で、しかも、全員が最初に登場して、
出番ない人は後ろの椅子に並んで座る。
しかもセリフに名前出る度に、
出欠確認みたいに立ち上がるので、
"まんま議場やん"ってさらにワクワクします。
でもここで改めて服装を見て違和感。
コリオレイナスなんて、"いつの時代の剣だよ"'
みたいな幅広の剣もって、防具付けてます。
なんかちょっと古代風です。
なのに、女性陣とかは変に現代風だし、
護民官なんてシャツとパンツという、
"お前どこの会社から昼休憩で抜けてきたんだ"、
みたいな感じです。
政治劇風にやるなら現代化することが
普通かなって思ってたのでコリオレイナスの
持っている時代錯誤な剣に違和感です。
だって立ってる舞台はコンクリだよ?
おおおおおう( '-' )って感じです。
ついでにメニーニアスは時代は不明なんですが、
高貴な身分なはずなのに
何故か茶色(みすぼらしい色の代表)の服だし。
どこの吟遊詩人だ。似合ってはいるけれど。
まあ立場で服装分けたりはすること多いので、
そんなもんかな、って見てたんですけど、
コリオレイナス(トム・ヒドルストンさん)が
タイマンで戦ったりする時は
結構マッチョな演技...ちゃんとアクションを
やっていたりするんですが、
それ以外の戦争シーンは、
椅子(議会の椅子連想します)を
象徴的に用いた、整然とした集団行動で表現。
このシーンに、コリオレイナスがいないなら、
まだ百歩譲って分かるんですが、
(現代的な、理路整然とした、象徴的な所から、
めっちゃマッチョな素直すぎる軍人が追放される、
みないな...多分...うーん…)
いるんですよね。しかもメインで。なんでだ。
しかも狭い舞台なのに上手く使えてないのか、
それとも狭い舞台なのに人を乗せすぎなのか、
よくその辺は分かんないんですけど、
コリオレイナス含め、中々に棒立ち気味の演技。
別に棒立ち気味の演技が悪いわけでも、
嫌いな訳でもないんですが、
そうなってくるとコリオレイナスの
古代風で、マッチョな雰囲気だけはある、
なんというか、そういう出で立ちが、
めちゃくちゃ浮くんですよね...。
肉弾戦期待してたのに肩透かしというか…。
そもそもトム・ヒドルストンさん含め、
出てらっしゃる方々どっちかというと、
最前線の軍人というよりは、
インテリ系を連想してしまう、
すらっとした体躯の方が多いので...。
派手なアクションとかが、
大人数舞台にいる時とか難しいなら、
しかもせっかくコンクリ打ちっぱなしの
抽象的で無機質な舞台なら、
もっともっとマッチョ要素切り捨てて、
完全に政治劇的な会話中心で、
スーツor軍服着て、書類と銃で
戦争するぐらいに現代化しても、
何とかなったんじゃないかなと思いました。
だってみんな演技は普通に最高レベルだし。
いけるって絶対。
それか、肉体的な部分を残したいにしても、
現代的すぎるスタイル抜群の俳優さんが、
たくさんいることに配慮した方がいい...と思う。
最前線の軍人ではないよ。少なくとも。
マッチョな要素入れたいなら、
劇場の立地を利用して政治批判的にしつつ
暴力の代わりにブレイクダンス的要素使って
パーカーとか着てやればいいのに。
せっかく路上みたいにコンクリなんだし。
しかも元倉庫という日本的な感覚として
不良のたまり場感もあるような気がします。
使ってた音楽もなんかそんな感じだったし。
パンクというかロックというかそんなんでした。
...というか、ほんとに上手い下手とかじゃなくて
トム・ヒドルストンさんが、
若いコリオレイナス像というのは分かるけども、
どう見ても最前線の人には見えないです...。
強いのは強いんだろうけどなんというか...。
マッチョな演技ができてないって訳ではなくて、
むしろすごく上手だとは思うんですが、
その演技と、モデル並みの身体性が、
なんかめっちゃボタンをかけ違えたみたいに、
ズレて見えるって言うか...。
若い戦士!って感じはすごくして、
そのせいの純粋さから悲劇を招いたっていう
そういう感じは伝わってくるんですが、
『コリオレイナス』のコリオレイナスの
あの肉厚なセリフを喋るようなイメージと
なんか微妙に視覚的にズレるというか...。
なんかあのどう頑張っても消しきれない
キラキラ★(語彙力)って雰囲気と、
文句の付けようのないスタイルと、
血反吐吐くようなマッチョな演技と、
そのマッチョ感出そうとした衣装と
ちょっと時代錯誤な剣とかが、
なんかほんとムズムズする違和感があって...。
あ、でも、第2幕第3場の
"Voice"って連呼しながら、票もぎ取る辺りは、
めっちゃ素敵だったと思います。
英語の弱強のリズムと相まって完璧。
あの投げやりな現代っ子感面白かったです。
あとは胡散臭い笑顔とか笑笑笑笑。
目が、結構ギョロっとしてて、
しかも結構色素薄めで何考えてるか
ちょっとわかんないぞ的な感じも受けたので、
どっかでサイコパスとか詐欺師とか
笑顔でいつかやって欲しいです笑笑。
あ、あとコリオレイナスって、
若かろうが中年だろうが例えば女性だろうが、
血を浴びて傷だらけの身体が
最高に魅力的じゃなきゃいけないのに、
まあもっと言うならセクシー?であるべき、
なのかな、と個人的に思ってるんですが...
"love this painting wherein you see me smear'd"
(俺の身体についた血を愛してくれ)
なんてセリフがあるぐらいだし、
演出家の方もなんかインタビューで
仰ってたような気が...したんですが...
...いやほんと、"世界一セクシーな俳優さん"を
とっ捕まえてこんな表現するのも、
なんか申し訳なくなるんですけど、
あんまり...その...血が似合わないというか...
(汗とかの方が似合いそうな...感じです)
というか血糊の量が多すぎて、
もはやセクシーとかの段階じゃないというか...。
これでも結構血糊落ちてる方で...。
血でセクシー出したいなら、白人の方なら、
肌の白さの対比とかになると思うんですが、
もはや白い肌が見えないレベルで真っ赤で...。
反対に、黒人の方ならあのぐらい被っても、
黒く綺麗に輝く肌に、それとはまた違う角度で
血が綺麗に映えるとは思うんですが、
肌がここまで白いのに、この量は...
正直、肌の色が負けちゃうというか...。
なんかこんな感じで、
コリオレイナスに対するマッチョな演出が、
ことごとくなんかズレてる感じがして、
だったらいっそ、他の部分にあるような、
政治劇的にしちゃえば良かったのに、
って思っちゃったってのが本音です。
しかもこのマッチョコリオレイナスに
雰囲気を合わせるために、
他の現代政治的部分が不自然に引きずられてる、
(メニーニアスの変な衣装とか)
気もしたので...。
まあ完全に個人の好みなんですけれど...。
あ、でも最後のひっくり返って死んだ
コリオレイナスを見ながら、
オーフィディアスが
"Assist."
(手伝ってくれ)
っていうのは、不思議な感じでした。
戯曲だと多分、死体を運ぶのを、ってことかな、
って思ってたんですが、ここだと、
そもそも死体ぶら下がっているので...。
だからこの状態での、"Assist."って言葉が、
なんかまだ、オーフィディアスが
コリオレイナスに心理的に頼ってる、
みたいな不思議な感じで面白かったです。
あとは、印象的だったのは、
葬送曲流れてる最後、左手奥の舞台上に
コリオレイナスのお母さんが出てくるとこ。
(確かコリオレイナスの死体は
まだぶらさがってたはず)
”なんか息子が死ぬかもしれない”、
ってことを最後の方で察知したような、
そんな演技をされてたので、
"母の愛(哀)は深い!"ってことかな、
と勝手に思いました。
まあその"母の(への)愛(哀)"が
コリオレイナスの死を招いたので
なんとも言えない状況ですが...。
それにしてもやっぱ、この『コリオレイナス』
大画面で観てもムズムズした違和感が
どうしても消えなくて...。やっぱ苦手かな…。
俳優さんの身体性と、演出が
上手く噛み合わないことってあるんだな、
と素人ながら思いました、ってことで...。
とにかく明日はツッコミどころしかない『ハムレット』を
存分にツッコミながら楽しんできます笑笑