観終わったあとに「メタシアター…?」となった『あいまい劇場 其の壱「あくと」』
2021/12/01
EX THEATER ROPPONGI
ようやく感想書けるぐらいまで落ち着いたのでぼちぼち書けてなかったやつ書いていこうかと思います。
もう1カ月経ちそうだけど…。
それにしてもエイゼンシュテインのレポート課題はほんとにどうしよう…。しんど…。
公式とか舞台写真とか
あらすじとかはこの☝サイトにコンパクトにまとまってます。第4話以外。
演出が成河さんで、しかもキムラ緑子さんが出る…!というその2点だけで観に行きました。
年齢別の安いチケットに命助けられた感があります。わーい!
感想になってるか怪しい感想(期間あきすぎで忘れてる…)
演出を観に行った感があるんですが、正直どこまで演出の手が入っているのかがほぼ分かんなかったです。
第2話の照明は、長方形の組み合わせとかで閉塞感のあるスペースを表現していたように見えたんですがこれはどこでも観る演出だし…。
それこそ『スリル・ミー』とかでも観た気がする。
舞台美術はかなり派手だなと思いました。若干2階バルコニーみたいになってて生バンド演奏をそこでしたり、俳優さんが下りたり登ったりするので動きとしても舞台全体使っていてダイナミックな印象というか。
あとミラーボールも使ってたので「ライブか!」となりました。
まあ文字通りライブ(生)なんでこのツッコミは不適切なんですが…。
つまんなかったわけでは全然ないんですけど、戯曲のト書きなのか、俳優さんの演技なのか、演出とか照明とか音響の力なのかが良くも悪くも分からない…という。
戯曲が出版されているやつとかになれば、「ホホーウ…ここをこうしたのね!!(謎の上から目線)」と嫌味なフクロウになれるので気が向いた時にでもなんか古典作品とかの演出してみて欲しいです。ただの願望ですけど。
あとジャンルのごったまぜみたいな印象はあまりなかったです。意外と普通だったというか…。オムニバスだね…つなぎ頑張って…という印象はあったけど…。
たぶん個人的にミュージカルと台詞劇、とか、演劇とパフォーマンス、とかの区別があまりついていないからですかね…。演劇とダンスの区別も怪しいからな…。
舞台芸術でよくない…??(雑)
それにしても全員歌うますぎてびっくりしました…。
特に城田優さんが、原キーかと思うぐらいの高音でアニーの歌を歌ってからすぐにファントムの歌を低音で歌い出したのはマジでビビりました。音域どうなってんですか??あとセリフ喋る時の5倍以上歌の方が声の通りがいいって何事…?!!
全体通してのテーマは案外シンプルで、ちょっとメタシアター?っぽかったです。
80年代に小劇場で流行ったよ、というのは学校で勉強したような気がする!!
あとライオネル・エイベルの(ちょっと雑らしいということで有名な)定義とか!!
演技について、俳優と演出家の関係について、役を演じるということについて、演劇について…みたいなことを大体どの話でも扱って…いたような気が…しました…??
あいまいといえば、第1話はほぼ即興で役名もほぼ本人の名前だったので、普通に考えれば役と俳優さん自身の境界みたいなのがあいまいだったかなあ…という感じでした。
ただ、役を演じることで初めて、「私じゃない何かを演じている私」って否定形で、「私」的なものの輪郭がようやく意識できると考えている系の人間なんでしっくりは来ていない、というか分からない。よく聞く憑依型というのも本当に分からない。どういうこと??
舞台奥に楽屋みたいなセットがあって、そこで俳優さんたちが準備しているような感じで始まっていくので、まあなんかたぶんそういうことなんだと思います!!(??)
第1話「朝ドラオーディション」
なぜか朝ドラのオーディションにきた尾上さんと城田さんが、その朝ドラでデビューするらしい新人女優キムラミ・ドリコさん(表記は間違っていません)に逆にかなり的確な演技指導されるという即興わちゃわちゃ系のやつでした。
キムラ緑子さんだから成立するこの設定。ウケる。
ちなみにプロデューサーはザキヤマというか山崎さんだそうです。
…いそうだなこういうプロデューサー。知らんけど。
※画像は『あいまい劇場 其の壱「あくと」』開幕 | SPICEから
全然知らなかったんですが、Twitterで事前にお題を募集していて、そのワードを知らない1人に、残りの知っている人達が、ガチの即興演技で絡んで行ってそのワードを言わせるというワークショップというかクイズ番組で偶に見るやつをやってました。
2回でギブアップしてたのが笑えました。頑張れ(笑)。
私が観に行った回だと「ゲッツ!」と「お腹空いた~」みたいなやつだった気がします。(うろ覚え)
あと、朝ドラオーディションにおける心構えを話す体で、観客への観劇マナーを圧強めで念押ししていたのが面白かったです。
ただ正直この第1話はちょっと内輪ノリがきつくて、このノリで2時間は死亡フラグでしかない…!!と戦慄してました。でも大丈夫でした。杞憂でした!
第2話「Lateral thinking」
戦慄してたら、清水美依紗さんがかっこよく歌い上げてからの第2話でした。なんでかは謎です。今までのがおまけで、いよいよちゃんと開幕の合図としてド派手に歌いあげたのかな。
なんか第2話は唯一ちょっと暗めな話でした。
漫画とかでよく見る感じの、意識失っている間に閉じ込められてミッションクリアしないと死んじゃうかもよのデスゲーム系みたいな。
これはハナから全員殺す気満々だったのでゲームですらないけど…。
詳しいあらすじとかはめんどいので書かないんですけど、演出家と俳優との関係の寓話にも見えるような話でした。
小さいころに、人気者のクラスメート2人から水平思考(Lateral thinking)ゲームをいつも出題される側だった人が、大人になってから、やっぱクイズ出す側に回ってみたくて回ってみたよ!みたいな。
「答えられなかったらお前死ぬ~!」が子供の冗談から大人のマジにグレードアップしている以外はそれだけの話です。厨二病でもこじらせたのかな…。
「答えがよく分かんないまま『Yes(今のいいね)』とか『No(そうじゃない)』とかだけ言われるのマジ居心地悪いから俺も出題者側(演出家側)に行くね!」
というのがめちゃくちゃ雑にまとめた内容です。
よく聞くジレンマではあるけれど、ここまでぶっちゃけるってこの話を書いた人は疲れているんだろうか…と思いました。
誰が書いたかはパンフ買っていないんで分かんないんですけど、とりあえずブレーキかけてくれるドラマトゥルクとか傍において、やりたいようにやってみればいいんじゃないかな…??ドラマトゥルク大事よ…??
何故か最後に華やかなダンスでシメてました。つなぎが謎過ぎる。
第3話「1996年の鳥山明」
題名から分かるように少年漫画風の話でした。(語弊しかない)
尾上さんが見得を切る?のが、さすが本業!!と感動しました。たまに見かけるなんちゃって歌舞伎とはキレが違う…気がする…!
小さいころに鳥山明に会って「僕みたいな漫画家になりなさい」と言われたことを信じ続けて漫画家として頑張ってた酒井が、ひょんなことから(と書いてごまかす)その日鳥山明は別の場所にいたことを知ってしまい、「じゃああの日僕が会った鳥山明はなんだったんだ…!!」と雨の中猛ダッシュ(ここで何故かちょっと歌舞伎入る)してたらいつの間にか時を遡っていて過去の自分に会う…、つまり過去に自分が会った鳥山明は、未来の自分が演じていた鳥山明だった、というSF風のオチ。
虚構(嘘)だったにしても誰かの憧れだったり生きる目標になったりするってところが演劇っぽいといえば演劇っぽいかな…とはなったんですけど、正直第2、3話に関しては、テンション低めで観てたので、イマイチよく分かんないまんまです。誰か解説してくれ…。
でも、酒井の子供と過去の酒井を演じていた山崎育三郎さんが絶妙に腹立つ演技で最高でした。
ズボンを脱がずに下着を脱ぐという離れ業をした後に、その白いパンツ客席に向かって朗らかな笑顔で高らかに掲げていたのが最高にヤバかったです。
ランドセル背負ってるし。たかしやるな。
※写真は「IMY」第 1 弾本日初日!【動画2本】ゲネプロ&取材会 - Astage-から。
何回見ても素敵すぎる笑顔でノックアウトだよたかし(笑)。
第4話「EXシアターのジャン・バルジャン」
これが1番面白かったです。ただミュージカルの名作についてのパロディのオンパレードなので、観客の方にもある程度の知識を要求してくるタイプのやつでした。
ジャン・バルジャンとかファントムとかアニーとかシンバとかが分からないとたぶんあんまりおもしろくなさそう…この芝居観に来てる段階でミュージカルのその辺の知識は大丈夫だろうけど…。
私はミュージカルは全然詳しくないので、ギリ分かるかな、レベルでした。
もしかして舞台美術もそれぞれのモチーフ組み合わせてる系だったのかな??わかったら楽しかったんだろうけど…。
それにしても
「どうして俺は何回もパンを盗んでしまうんだ…!というか始まった時にはすでに盗み終わっているんだ…!」
「同じ過ちを繰り返す…日によっては2回も…!」
的な感じで登場人物たちがわりと真剣に悩んでいるので、その真剣さがまた爆笑でした。たしかに当人にしてみれば深刻な問題ですよね…。
ただなんか冒頭が、役者と付き人が楽屋に入ってくるっていう感じだったので、思わず「『ドレッサー』かな?」、となってしまったり、あとそもそも登場人物が登場人物として出てくるって段階で『作者を探す六人の登場人物』を思い出してしまったりで、「うわなんかいろんな作品混ざってんな???」としている間にバーッと終わってしまいました。
私の頭の中の情報処理能力が貧弱すぎた!
あと正直よく見るテーマで「ああ…これかあ…」と思考停止してしまった!悪い癖ですすみません!
テアトルム・ムンディ(Theatrum Mundi)だよねたぶん!!了解!!(たぶん微妙に違う)
役者とか作者の創造過程の葛藤を見せられてもなあ…、というのが娯楽として観に行く側面(他の側面もあるけど一番これが大きいよなあとも思う)からの正直な思いとしてなくもない感じもあるし…。どうせならプロセスを見せて欲しいような…。
「現実とは台本のない世界でみんなアドリブをやっている。アドリブは相手との信頼関係がないとできないのに」
って感じのセリフとか、このオムニバスがアドリブの応酬の「朝ドラオーディション」から始まったこととか考えると感動すべきなんだろうけど、「いやでもその時、たとえば行為者が二重の意識を持っていなかったとしたら、演技でもパフォーマンスでもないからアドリブにはならないんじゃないか…」「その意味で動物によるパフォーマンスは可能なのか…??」とか考えだしてしまうあたり大分脳ミソやられてる感があります。
お勉強の弊害ここに現れり!って感じです。詰んだ。
でも、1人何役か兼ねているので、早着替えがかなりあるんですけど、なかなかにマジックみたいで面白かったです。たまに苦しい感じも観てて面白い(笑)。
あとヒュー・ジャックマンが何回も出てくるんですけど、なんなのかよく分からなかったらTwitterで親切な方が教えてくれました。どうも映画『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンがヒュー・ジャックマンだからではないかとのことです。なるほどそれで。すごく納得。
ウルヴァリンについてはもう知らん。マーベル知識がなさ過ぎて全然分からなかった。すまん。ただのテンションおかしい奴かと思ってスルーしてた。すげえなヒュー・ジャックマン。
【追記:2021/12/28】
でもヒュー・ジャックマンのあの「いかにもな変なイントネーションの日本語」はちょっとアウトな気がする。時代的に。
期間あけて感想書くもんじゃないな(当たり前)
観た時は結構テンション上がったし楽しかったような気もするんですけど、おぼろげな記憶を再構築しながら書くと、なんか突き放した感じになっちゃってしんどいですね。なんでだろう…。
…これが批評的距離ってこと…??そうなの…??そうなのねブレヒト…!!!(うざい)
まだまだ書いていない感想があるんで頑張ります。
ところで図書館で『海王星』を借りられなかったのでこれだけは年明けに書こうかと思います。